公的年金は、社会全体で高齢者の生活を支える制度だが、実は年金以外にも申請によって受け取れる給付金や支援制度は数多く存在する。今回取り上げる調査では、今まさに、年金を受け取れる対象の65歳以上の人でも500人のうち半数がその存在を知らないという結果が出た。老後の生活を左右する大切な情報だが、なぜ知られていないのだろうか。

知られていない給付金制度の実情

税理士の菅原 由一氏は2025年9月、65歳以上の年金受給者500名を対象に、「年金以外で受け取れる給付金」についてのアンケート調査を実施した。
「年金以外にも受け取れる給付金があることを知っているか?」の調査では、「知っている」と回答した人は19.8%にとどまった。「聞いたことがある」と答えた30.2%を含めても認知は約半数にとどまり、残りは「知らない」と回答した。多くの年金受給者が給付金の存在自体を認識していないことが判明した。

次に、「年金以外で受け取れる給付金制度で知っているもの」を尋ねると、「公共交通機関の補助(シルバーパスなど)」(45.4%)と「年金生活者支援給付金」(40.8%)が比較的高い認知度を示した。一方で、「どれも知らない」と回答した人は32.8%にのぼり、十分に制度の情報が届いていない現状が伺えた。
自治体からの公的な情報提供を望む声も

「年金以外で受け取れる給付金制度を実際に受け取っているか?」の調査では、「受け取っている」と答えた人は14.8%にとどまり、75.8%が「受け取っていない」と答えた。制度があるにもかかわらず、利用されていない実態についても明らかに。

さらに、「受け取っていない」と回答した379人を対象に「受給していない理由」を調査したところ、最も多かったのは「自分が対象になるか不明」で、54.4%が回答。次に、「制度を知らなかった」(44.6%)が続いた。情報不足と手続きの分かりにくさが主なハードルになっているようだ。

「給付金制度について、どのような情報提供があれば便利だと思うか?」の調査では、「自治体からの郵送案内」が圧倒的に多く、84%が自治体からの個別案内を望んでいることが判明。「テレビやラジオ」(45.0%)、「インターネット(Webメディア)」(32.0%)が続いた。高齢者世代には紙やテレビといった従来型の媒体が有効であることが裏付けられ、また給付金詐欺の懸念から信頼性のある情報提供が求められている。
老後の給付金制度は、その存在自体や受給要件が広く知られておらず、自治体からの情報提供も不十分なのが現状だ。必要な支援を十分に受け取って生活を楽にするためには、自ら情報を集め、制度を知っておくことが求められる。早めに学び、老後に備えておきたいところだ。
出典:【脱・税理士スガワラくん】
※サムネイル画像(Image:「photoAC」より)