カフェや公共交通機関でしばしば提供されている「フリーWi-Fi」。近年はサービス終了が相次いでいますが、それでも無料で使える手軽さから利用している方もいるでしょう。
一方、フリーWi-Fiにはセキュリティの問題がつきまといます。たとえば「フリーWi-Fiを使って仕事をする」という行為は、非常識と見なされることもあります。さらに「フリーWi-Fiの接続中にはクレジットカード番号など個人情報を入力する操作をすべきではない」という風潮もあります。
しかし、そうした危険性があるならばそもそも最初からフリーWi-Fi自体を使うべきではないと感じる方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、フリーWi-Fiの利用には通信盗聴のリスクがあるのでしょうか。今回はフリーWi-Fiの危険性と安全な使い方を解説します。
サービス終了が続く「フリーWi-Fi」
冒頭でも述べた通り、しばしば危険性が指摘されるフリーWi-Fi。フリーWi-Fiはそもそも近年、サービス終了が相次いでいる状態です。
たとえばNTT東日本は9月30日にフリーWi-Fiサービスである「光ステーション」のサービス提供を終了。
また、公共交通機関では、ゆりかもめが2023年3月31日に「YURIKAMOME Free Wi-Fi」の提供を終了。さらに、東京メトロでは2022年6月に車内Wi-Fi「Metro_Free_Wi-Fi」、東武鉄道も同年9月に「TOBU FREE Wi-Fi」と小田急電鉄の小田急ロマンスカーの「odakyu Free Wi-Fi」を2024年4月に提供を終了しました。

そのほか、すかいらーくグループは2025年7月1日をもってバーミヤン、夢庵、ステーキガストなど12ブランドの店舗でフリーWi-Fiサービスを終了しました。さらにドコモは「d Wi-Fi」について、2025年12月からドコモ回線契約を必須とするサービス改定を発表しています。
これらのサービス終了の背景には、5G無制限プランの普及により、フリーWi-Fiの需要が大幅に減少していることが挙げられます。現在は「auバリューリンクプラン ALL STARパック」などでテザリング機能を月100GBまで提供しており、カフェでのノートPC作業程度であれば十分対応可能な状況となっています。
そのためフリーWi-Fiは、かつてのように「飲食店などで無料で使えるWi-Fi」「ギガの節約手段」として注目されているというよりは「なんらかの理由でスマホの通信ができなくなった際の手段」や「大規模イベントでの通信インフラ」として活用されるケースが増えています。

たとえば、「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」は東日本大震災発生時に通信回線の復旧が遅れたことをきっかけに取り組みが始まったフリーWi-Fiで、大規模災害時に解放されるフリーWi-Fiです。2023年5月からは、大規模災害時に加えて通信障害時にも運用可能となり、2025年7月の静岡市土砂災害では実際に無料開放されました。

また、スマホ電波が繋がりにくくなる国内の大型フェスでもフリーWi-Fiの設置例はあります。たとえばROCK IN JAPAN FESTIVALの運営は2023年に開催されたJAPAN JAMから衛星ブロードバンド「Starlink」を導入。2025年のROCK IN JAPAN FESTIVALでも設置され、QRコード決済でのグッズや飲食の決済をサポートしました。
「フリーWi-Fi」の利用は通信盗聴のリスクがある?危険性の例
こうした取り組みがある一方で、フリーWi-Fiそのものには通信盗聴のリスクが伴うのも事実です。危険性の例を具体的に見ていきましょう。

暗号化されていない通信
まずパスワード不要のフリーWi-Fiは暗号化されていない場合があり、通信内容(メール、SNSログイン情報、クレジットカード情報など)が第三者に傍受される可能性があります。そのため暗号化されていないフリーWi-Fiへの接続は避けるべきであり、どうしても接続が必要な場合にはVPNを活用することを強くおすすめします。
偽アクセスポイント
公共の場所に掲示されているQRコードなどを介し、フリーWi-Fiに接続する場合、そのQRコードが「偽物」である可能性にも注意が必要です。
正規のWi-Fiに似た名前の偽ネットワークを悪意のある第三者が設置し、通信の盗聴や個人情報の抜き取りなどを狙っているケースがあるためです。接続してしまうと、端末が乗っ取られたり、遠隔操作されるおそれがあります。「間違いなく信頼できるアクセスポイント」のみを使うことを心がけましょう。
脆弱なネットワークへの意図しない接続
2025年現在はフリーWi-Fiへの接続に注意を払っているとしても、過去の自分が「脆弱なネットワーク」に接続していなかったとは限りません。
過去に接続したフリーWi-Fiに自動再接続すると、意図せず脆弱なネットワークに接続し、情報漏洩の原因となる可能性があります。スマホが自動的にWi-Fiに接続する設定になっている場合、注意が必要です。
巧妙化するフリーWi-Fiの脅威とは?

フリーWi-Fiのセキュリティリスクは年々巧妙化しており、従来の基本的な注意喚起だけでは対応が困難な新たな脅威が出現しています。特に2025年現在、攻撃者はユーザーの「不安」や「油断」に付け込む手法を駆使し、一見正常に見える通信の中に悪意のある仕組みを隠蔽する技術を高度化させています。
たとえばフリーWi-Fi接続中に突然表示される「システムの更新が必要です」「ウイルスが検出されました」といったポップアップ広告は、マルウェア感染の入り口となる危険性があります。
よくあるのは、
・「緊急セキュリティアップデート」を装った偽の警告画面
・「あなたのデバイスが感染しています」という虚偽の診断結果
・正規のアプリストアそっくりの偽サイトへの誘導
・システムの動作改善を謳う怪しいソフトウェアのダウンロード促進
といったポップアップ。フリーWi-Fiを利用しているとき、うっかりこういったポップアップをタップしてしまうと、アカウントの乗っ取り被害に遭うことがあるので気をつけて対応する必要があります。
フリーWi-Fiの安全な接続方法
フリーWi-Fiに安全に接続するためには、次の2点を意識することが重要です。
・暗号化されたネットワークを利用し、個人情報を入力しない
・VPNを活用する
暗号化されたネットワークを利用し、個人情報を入力しない
まずは暗号化方式「WPA2」または「WPA3」を使用するWi-Fiを選び、古い「WEP」方式は脆弱なため避けます。
特に最新の「WPA3」では、従来のWPA2よりも強固な暗号化が実装されており、「Enhanced Open」機能により、パスワード不要の公衆Wi-Fiでも暗号化通信が可能となっています。2025年2月には総務省が最新のセキュリティ動向に対応したガイドラインを公開し、これらの新技術についても詳しく解説されています。
こうした適切な判断が難しい場合は、次の項目でご紹介する『VPN』を必ず使いましょう。
VPNを活用する
仮想プライベートネットワーク(VPN)を利用すると、フリーWi-Fiを利用する際にも通信全体を暗号化し、第三者からの盗聴を防止できます。

VPNとは、インターネット上に仮想的な専用線を構築する技術のこと。VPNを使用すると、公共のネットワーク上でプライベートな通信環境を作り出すことができます。
データの暗号化ができるため、通信内容を第三者から保護することができます。
ちなみにVPNサービスは各社が多数リリースをしていますが、有料のものや運営者情報が不透明な海外サービスも多い点にご注意ください。
VPNサービス選びに不安がある場合は、実証実験として提供されている筑波大学のVPNサービスを使うのがおすすめです。
筑波大学は、完全無料のVPNサービスVPN Gateを実証実験として提供しています。これは、グローバルな分散型公開VPN中継サーバーに関する研究を目的に運用されており、2025年現在多数のサーバー(ボランティア提供による変動あり)で継続運営されています。
ただし、学術研究目的のため、ノーログポリシーは保証されておらず、商用VPNサービスとは異なる点に注意が必要です。フリーWi-Fiの利用に不安がある場合の一時的な選択肢として検討できます。ただし、重要な個人情報を扱う場合は、有料で信頼性の高いVPNサービスを利用することをおすすめします。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)



