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スマホゲームは衰退した「冬の時代」?10年前と比べてヒット作が出ない「業界の今」

スマホゲームは衰退した「冬の時代」?10年前と比べてヒット作が出ない「業界のいま」1
(画像は「パズドラ」公式サイトより引用)
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今から約10年前、日本のスマホゲーム市場は、まさに「黄金時代」でした。2012年にリリースされたガンホーの『パズル&ドラゴンズ』、そして2013年に登場したMIXIの『モンスターストライク』は、瞬く間に国民的な人気を獲得し、通勤電車や休み時間に誰もがスマートフォンを片手に熱中する光景は、もはや日常の一部でした。

この時代に特筆すべきは、市場が未成熟なフロンティアだったことです。10年が経ち、スマホゲーム市場は成熟しました。ユーザーの目が肥え、制作費も上昇する一方で、市場の成長は頭打ちというジレンマに直面しています。

今回は「今のスマホゲーム」の現状を詳しく見ていきましょう。

スマホゲーム市場に漂う閉塞感

スマホゲーム市場の閉塞感1
(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

スマホゲーム黎明期から約10年が経過した現在、スマホゲーム業界を取り巻く空気は一変した。市場には「ヒット作が生まれない」「人気タイトルのサービス終了が相次ぐ」といった閉塞感が漂っています。

角川アスキー総合研究所の推計によれば、2024年の国内ゲームコンテンツ市場全体(家庭用ゲーム等を含む)は2兆3961億円と、依然として巨大な市場を形成しています 。しかし、その牽引役であったスマホゲーム単体の市場に目を向けると、様相は異なります。他方、CESAのデータによると、国内のスマホゲーム市場は2021年に1.3兆円を突破してピークを迎えた後、2年連続で減少に転じているのです。

このほかSensor Towerのレポートでは、2024年上半期の日本のモバイルゲームのアプリ内課金(IAP)収益は、円安の影響も受けて前年同期比17%減の53億ドルに落ち込んだと分析されています。

これらのデータから、日本のスマホゲーム市場はかつてのような急成長期を終え、高水準ながらも頭打ち、あるいは微減傾向にある成熟市場へと移行したことが分かります。市場全体のパイが大きく拡大しなくなったことで、限られたパイを巡る企業間の競争が激化し、これが「儲からなくなった」という感覚の一因となっていると考えられます。

10年で激変した「作る」コストと難易度

10年で激変した「作る」コストと難易度1
(画像は「原神」公式サイトより引用)

市場の成熟化が「外」からの圧力だとすれば、「内」からの圧力、すなわち開発現場の変化も、スマホゲームの収益性を悪化させる一因でしょう。つまり製作コストの大幅な上昇です。

たとえば2014年の調査では、メジャーなスマホゲームタイトルの平均開発費は1億円とも言われていました。この頃は、まだ中小規模のスタジオやスタートアップにも大きなチャンスがあったと言える規模感でしょう。

しかし、現在の常識は全く異なる次元にあります。『ファミ通モバイルゲーム白書2025』のデータによれば、2024年時点でのスマホゲームの平均開発費は4億9,200万円に達し、2014年比で約4.7倍にまで膨れ上がっているのです。これは、一部の家庭用ゲーム開発費に匹敵、あるいは上回る水準となっています。

またこれらの金額は「平均」であり、クロスプラットフォーム対応のAAAタイトルではその予算は桁外れなものとなります。

たとえば『原神』(miHoYo)は初期開発費は約1億ドル(当時のレートで100億円以上)と報じられています 。さらに驚くべきは、リリース後も新たなマップやキャラクターを追加し続けるための運営・開発コストであり、年間約220億円以上が投じられているという報道もあります。一線級のゲームタイトルの開発は、すでに映画業界を上回るような「投資競争」の側面が強まりつつあると言えるかもしれません。

なぜスマホゲームの製作費・開発費はこれほど高騰したのか?

スマホゲームの開発費高騰の背景には、スマートフォンの性能向上があります。

スマートフォンの性能は、この10年で劇的に向上しました。それに伴い、ユーザーがゲームに求めるグラフィック水準も、PlayStationやNintendo Switchといった家庭用ゲーム機並みに高まったと言えます。

そうしたユーザー側・企業側の要望を受け、Unreal EngineやUnityといった高性能な汎用ゲームエンジンが普及し、高品質なゲームを開発する土壌は整いました。しかし、これらのエンジンを最大限に活用し、競合と差別化するためには、高度な専門知識を持つエンジニアやアーティストが必要不可欠であり、この点も人件費の高騰に直結しています。

長寿タイトルを悩ませる「終わらないマラソン」と「10年の壁」

長寿タイトルを襲う「終わらないマラソン」と「10年の壁」1
(画像は「星のドラゴンクエスト」公式サイトより引用)

巨額の初期開発費を投じてゲームをリリースしても、それで終わりではありません。

現在のスマホゲームの主流は「ライブサービス(Live Service)」または「Games as a Service (GaaS)」と呼ばれるビジネスモデルです。これは、これは、ゲームを一度きりの「製品」として売るのではなく、リリース後も継続的なアップデートでユーザーに長く遊んでもらい、収益を上げ続けるビジネスモデルです。その結果、開発チームには絶え間ない負担がかかります。

開発チームが直面するのは「継続的なサービス提供」と「技術的負債の解消」という二律相反の事柄です。技術的負債とは、ソフトウェア開発において、短期的な視点で非効率な設計やコードを採用した結果、将来的に改修や機能追加が困難になり、余計なコスト(負債)が発生する状態を指します。10年近く運営されているスマホゲームは、まさにこの技術的負債の塊となりやすいのです。

リリース当初の古いシステム基盤の上に、長年にわたって無数のイベント、キャラクター、機能が継ぎ足されてきた結果、システムは極めて複雑で肥大化しがちなためです。

この問題が表面化した事例として、スクウェア・エニックスの戦略転換が挙げられます。同社は2025年に、『星のドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』といった、運営期間が約10年に及ぶ複数の長寿タイトルのサービス終了を発表しています。その理由として「開発環境の複雑化」が理由として挙げられており、まさに技術的負債が限界に達したことを表していると言えます。

ゲーム業界の「冬の時代」の正体とは?

「冬の時代」とは、とは、単純な市場縮小ではなく、産業構造の高度化・寡占化によって、かつてのような自由な創造性が発揮しにくくなり、業界全体が息苦しさを感じている状態と定義できます。

今後、スマホゲーム企業が生き残るためには、国内市場だけでなく、初めからグローバル市場を視野に入れた開発・マーケティングが必須となるでしょう。ハイブリッド収益化やサブスクリプションといった多様なビジネスモデルを駆使し、AI活用による開発の効率化とコスト削減を徹底することが、競争の前提条件となると考えられます。

ゲーム業界の「冬の時代」の正体とは?1
(画像は「フォートナイト」公式サイトより引用)

これとは別に注目すべきが「特定タイトルのプラットフォーム化」と「そのプラットフォームを活用した作品発表」という流れです。従来のスマホゲームとは異なる第三の波になる可能性を秘めています。

たとえば人気ゲーム『フォートナイト』はすでにゲームをプレイする場所以上のものへと進化しています。バトルロイヤルだけでなく、ゲーム内で音楽ライブに参加したり、映画やテレビ番組のプレミア上映を視聴したり、新しいクリエイティブモードを体験したりすることが可能。

加えてユーザーが『フォートナイト』上に新たなゲームを製作し、公開し、収益化することも可能です。同作は「ゲーム版YouTube」とも呼ばれ始めており、従来のゲーム体験を超えたコミュニティを形成しています。

このように膨大なユーザーをすでに抱えているタイトルを「プラットフォーム」とみなし、そのプラットフォームを、従来はアプリストア向けに作品をリリースしていた事業者が利用するという流れは一大ムーブメントになる可能性を秘めています。そのゲームのアセットを活用することによる製作費削減や「初めからユーザーがいる」ことによるマーケティング予算の削減効果など、見込まれる効果が大きいからです。

いずれにしても2010年代初頭からの「スマホゲーム」の時代は今、市場が成熟期を迎え、緩やかに縮小し始めており、従来のスマホゲーム市場のような鉱脈は従来のアプリストアとは別の場所にあると言えるでしょう。

※サムネイル画像は(Image:​「パズドラ」公式サイトより引用)

スマホライフPLUS編集部

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