
近年、特殊詐欺の被害が後を絶たないなか、その利用実態が浮き彫りになっているのが「国際電話」です。
警察庁の発表によると、2024年の特殊詐欺の被害額は718億円。さらに、特殊詐欺に利用された電話番号のうち、約73.5%が国際電話番号であったことが判明しています(2025年6月末時点)。
電話を使った詐欺といえば、かつては「高齢者が狙われる」というイメージがありましたが、近年では若者層も被害に遭うケースが増えています。詐欺の手口も多様化しており、還付金やサポート、投資を名目としたケースも確認されています。たとえば還付金詐欺では、区役所職員などを装い『医療費の還付金が受け取れる』などと嘘を言い、ATMに誘導して操作させ、口座から現金をだまし取る手口です。フィリピンやタイなどの東南アジアを拠点とした詐欺グループの摘発事例も報告されています。
こうした国際電話を用いた特殊詐欺への根本的な対策は、「国際電話を一括で着信拒否すること」しかありません。不審な国際電話がかかってこなければ、被害に遭う機会が大幅に減るからです。
警察庁が実施する防犯キャンペーン「#みんとめ」でも、この着信ブロックを推奨しています。

ただし大きな問題が、「国際電話の一括着信拒否」は意外と手間がかかる設定であることです。各キャリアには番号指定の拒否オプションがありますが、国際電話番号を一括で拒否できる機能は提供されていません。
なお、Androidスマホでは以下の手段で着信拒否を設定できます。

とはいえ、いずれにせよ拒否できるのは以前にかかってきた番号のみ。詐欺業者側が新しい電話番号で掛けてきた場合の対策は難しいのが現状となっていました。
しかし、こうした状況を受け、警視庁は公式の防犯アプリ「デジポリス」に、国際電話からの着信をブロックする新機能を追加することを発表しました。そこで本記事では、深刻化する国際電話詐欺の実態と、その強力な対策となりうる「デジポリス」の概要を紹介します。
デジポリスの概要と基本機能

警視庁の防犯アプリ「デジポリス」は、国際電話詐欺という現代的な脅威への対策から、痴漢撃退や地域の見守りといった身近な防犯まで、一台のスマートフォンで実現できる総合的な安全対策ツールです。iOS版とAndroid版が無償で提供されています。

アプリの最大の特徴は、特殊詐欺の電話の約8割が国際電話番号を使用しているという統計を基に、国際電話番号をブロックするシステムを搭載しているのが特徴です。
この機能は2025年12月以降に利用できるようになる予定で、国際電話番号からの着信通知を遮断して詐欺電話をブロックします。つまり、利用者は詐欺電話に気づくことなく、未然に被害を防ぐことが可能です。
日常の不安を解消する多彩な機能
デジポリスの魅力は、国際電話詐欺対策だけではありません。日常生活に潜むさまざまな犯罪リスクから身を守るための機能が多くあります。
痴漢撃退機能&防犯ブザー

満員電車内などで痴漢の被害に遭った際、声を出さずに助けを求めることができる機能です。スマートフォンの画面に「痴漢です 助けてください」といったメッセージを表示し、周囲の人に被害を知らせることができます。また、大音量のブザーを鳴らして犯人を威嚇し、周囲の注意を引く防犯ブザー機能も搭載されています。
見守りパトロール機能

「見守りパトロール機能」は、ユーザーがアプリを使って自ら防犯パトロールすることで、活動時間に応じて「インコの部屋」というアプリ内キャラを成長させるポイントが付与されるコンテンツです。
自身の防犯パトロールや見守り活動も記録することができるため、楽しみながら防犯活動に参加できる仕組みになっています。
その他
デジポリスのトップ画面では、お住まいの地域の犯罪発生状況や、特殊詐欺の予兆電話である「アポ電」の情報がリアルタイムで配信され、常に最新の防犯情報を確認できます。また「エリア通知機能」では子どもへの声かけ事案や侵入窃盗などが多発している危険なエリアに立ち入ると、プッシュ通知でお知らせしてくれます。
特殊詐欺をはじめとする犯罪の手口は日々巧妙化しており、もはや「自分は大丈夫」という過信は通用しません。警視庁の「デジポリス」は、国際電話詐欺という現代的な脅威への対策から、痴漢撃退や地域の見守りといった身近な防犯まで、一台のスマートフォンで実現できる総合的に防犯対策を支援するツールと言えるでしょう。
アプリのインストールは無料です。自分自身、そして大切な家族を守るために、この機会に「デジポリス」をダウンロードし、日々の安全対策に役立ててみてはいかがでしょうか。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)※画像は一部編集部で加工しています




