首都圏で交通系ICカード「Suica」で列車に乗ると、運賃は紙の「きっぷ」より安くなりますよね。でも実は、一部の区間ではきっぷのほうが安くなる場合もあるのです。いったい、どうしてこのようなことが起きるのでしょうか?

きっぷは10円単位、Suicaは1円単位で計算される
皆さんご存じのとおり、東京・山手線の初乗り運賃はきっぷの場合150円ですが、Suica(交通系ICカード)の場合は146円と少し安くなりますよね。
このように、首都圏ではSuicaのほうがきっぷより安くなるんですが、実は、必ずしもそうならない区間があるのをご存じでしょうか?
そもそも、きっぷの運賃は税抜運賃に1.1を掛け、一の位を四捨五入して10円単位になるように調整しています。これに対し、Suicaの場合は税抜運賃に1.1を掛け、小数点以下を切り捨てて1円単位にしているんですね。
実際、JR東日本の運賃表を見ると、営業キロが「11〜15km」「31〜35km」「36〜40km」「71〜80km」「91〜100km」の各区間では、Suicaの運賃がきっぷより高く設定されています。なかでも、91〜100kmの区間では最大で4円も運賃差があります。
たとえば、新潟駅から信越本線でさつき野駅まで乗車するとSuicaでは242円なのに対し、きっぷでは240円なので、Suicaより2円ほどきっぷのほうが安くなっています。
●JR東日本『「IC運賃」が安い場合と「きっぷの運賃」が安い場合がありますが、なぜですか』は→こちら

実は山手線や首都圏ではSuicaがきっぷより高くなることはない
首都圏でJRを利用している人は“きっぷよりSuicaのほうが高い”と感じることはないと思います。実は、それには理由がありました。
JR東日本では、運賃の計算方法に「山手線内」「電車特定区間」「幹線」の3種類があり、それぞれ異なる料金設定になっています。
まず、「山手線内」はそのまま山手線の駅に適用されます。次に「電車特定区間」は東京と大阪付近の利用者多い区間に指定されていて、首都圏はこれに含まれています。
山手線エリアがもっとも割安で、その次が電車特定区間、そして幹線という順で運賃が高くなりますが、このうち、Suicaのほうが割安になるよう調整されているのが、山手線と電車特定区間。そのため、首都圏では運賃の逆転現象は基本的に発生しないのです。
ところが、2026年3月に予定されている価格改定ではこの料金体系が見直され、「山手線」「電車特定区間」が廃止となり、すべて「幹線」に統一されることになりました。
つまり、今後はSuicaときっぷの価格が逆転している区間は運賃が調整されるんです。この改定により、きっぷよりSuicaのほうが安くなるよう調整されますが、残念ながら全体的に約1割の値上げとなる見通しです。
●JR東日本「運賃改定の申請のお知らせ」は→こちら


まとめ
いかがでしょうか? 首都圏に住む人の多くは、“きっぷよりSuicaのほうが安くなる”のが当たり前だと思っているかもしれません。
しかし、今回紹介したように、首都圏以外ではきっぷのほうがSuicaより安くなる場合もあるんです。
ただし、2026年3月の運賃改定以降はこのようなことが起きないように、きっぷよりSuicaの運賃のほうが安くなるよう調整される予定になっています。