【4】交通系ICカードの隅のくぼみは目が不自由な人が分かるようにするため
交通系ICカードの隅には“くぼみ”があるのをご存じでしょうか? 実はこのくぼみには、ひとつのものと2つのものがあります。
まず、くぼみがひとつしかない交通系ICカードは、定期券などで使われるいわゆる「記名式カード」で、本人しか使えません。次に、くぼみが2つある交通系ICカードは「無記名式カード」で、誰でも自由に利用できる代わりに、紛失した際の保証が受けられないタイプとなっています。このくぼみに違いがあることで、目が不自由な人でも、どちらか区別がつくように工夫されているんですね。
現在、JR東日本の首都圏エリアでは、新規の無記名式Suicaの発行を停止しているため、記念Suica以外ではくぼみが2つあるSuicaを入手するのが難しくなりました。
【5】カオスな関西の交通系ICカードは「PiTaPa」がまとめ役!
関西には実に多くの私鉄が存在しているため、現在11社が独自に交通系ICカードを発行しています。ここまで交通系ICカードの種類が増えすぎると他社との連携が取りにくいため、2006年には「スルッとKANSAI協議会」が関西の交通系カードを取りまとめて、「PiTaPa」と連携することになりました。
その後もスルッとKANSAI協議会に参加する交通機関は増え続け、24年7月現在では、静岡まで含む鉄道・バス会社などが61社も加盟しているんです。ちなみに、西日本ジェイアールバスは、JR西日本の完全子会社であるにも関わらず、スルッとKANSAI協議会に参加していますよ。
●スルッとKANSAI協議会(公式)は→こちら
【6】PASMOは首都圏のバスにめちゃくちゃ強かった!
先ほど関西の「スルッとKANSAI協議会」について紹介しましたが、関東では「PASMO」が各バス会社を取りまとめているのをご存じでしょうか? その数はなんと73事業者です。そもそも、PASMOは首都圏の私鉄や地下鉄などを中心に、2007年3月からサービスを開始しましたが、そのなかには京王電鉄や西武鉄道など、バスに強い会社が多かったのです。
2024年現在の参加企業には江ノ電や小田急バスなど有名観光地への路線や、川崎市交通局や千葉中央バスなど各都市の中心的なバス会社まで、さまざまな路線でPASMOが活用されています。さらにPASMOは関東を飛び越え、山梨交通や御殿場バスなども参加しており、かなり広範囲で利用できるんですね。
また、鉄道は東京メトロや東京都交通局をはじめ小田急、京成、西武、東武、ゆりかもめなど28社がPASMOに参加していて、なかには東京ディズニーリゾートの「舞浜リゾートライン」も含まれています。
●PASMO「PASMOバス事業者」は→こちら
【7】今後はクレカタッチ決済やQRコード決済に置き換わる?
日本全国で利用されている交通系ICカードですが、この先どうなるのか、やや不安な要素もあります。
たとえば、2024年5月には熊本の路線バスや鉄道を運行する5つの事業者が、Suicaなどの全国共通の交通系ICカードから撤退することを表明しました。全国共通の交通系ICカードを導入してから撤退する事業者が出るのは初めてのことです。
地域限定型交通系ICカード「くまモンのICカード」は継続して利用できるようですが、すでに熊本市電では、クレジットカードのタッチ決済やQRコード決済などが導入されており、2026年4月から全国共通の交通系ICカードが利用できなくなるとのこと。
現状でも交通系ICカードはJR各社のエリアを跨いで利用することができないなど、不便な部分もあるので、もしかすると、地方ではクレジットカードのタッチ決済やQRコードに移行する事業者がもっと出てくるかもしれませんね。
交通系ICカードが、かつてのオレンジカードのような存在にならないといいんですが……。
まとめ
いかがでしょうか? 今回は交通系ICカードのトリビアを7つ紹介しました。鉄道ファンならほとんど常識だと思いますが、一般人にとって交通系ICカードは謎だらけの存在なのです。
とくに、地方へ旅行に行ったときは、自分の交通系ICカードが使えるかどうか、毎回確認しないといけないのは面倒ですよね。いっそのこと、地方の鉄道・バス事業者はクレジットカードのタッチ決済やQRコードに移行してもらったほうが、むしろ利便性が増すのかもしれません。