株式や投資信託で得た利益が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)は、資産形成や節税対策のひとつとして、徐々に世間へ浸透してきた。さらに2024年1月から、より使い勝手が良くなった新NISAがスタート。金融庁の発表によると、新NISA開始から1年でNISA口座開設数が約436万口座(約17%)増加したという。NISA利用者増加の背景を探るべく、詳しい内容を見てみよう。
新NISA開始から1年、NISA口座数は約17%増加

金融庁が発表した「NISAの利用状況の推移」によると、NISA口座数は2019年から5年間で増加の一途をたどり、2024年12月時点で2,560万口座を突破。特に新NISAが始まった2024年の増加率が顕著で、1年前の約2,125万口座と比較すると、約436万口座(約17%)増加。新NISAの開始が、より多くの人の利用を後押ししたと言えるだろう。

さらに国民のNISAに対する認知・利用意向を探るべく、三井住友信託銀行が行った「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)も見てみよう。アンケートは、2025年1月、関連業種を除く全国の18~69歳の男女11,435人を対象に実施された。
NISAの認知度を2024年と比較すると、全体で14.3%の伸びとなり、利用者も7%上アップした。またどの年代も、利用率・認知率ともに上昇。ここ1年で、NISA制度がより身近な制度になってきていることがわかる。
NISAの利用意向が最も高い年代は“18~29歳以下”、資産額も利用意向に影響

では、現在NISAを利用していない利用意向者を含めると、どのような傾向があるのだろうか。NISAの利用者と未利用者における利用意向を調べたところ、利用意向が最も高かったのは18~29歳以下で、45.6%が利用済み、もしくは利用を検討していることが明らかになった。
一方、利用に消極的な人(おそらく利用しない・利用しない)が最も多かったのは60~69歳以下、次いで50~59歳以下だった。年齢が高い層のNISA利用意向が低かったのは、口座開設期間が恒久化され、長期的な資産形成の意味合いが強くなった新NISAに、あまり魅力を感じなかったのかもしれない。

次に、保有する金融資産額と利用率・利用意向をクロス分析したところ、18~29歳の一部を除き、どの年代も資産額が多いほどNISAの利用者および利用意向者は多い傾向にあった。
年代ごとに見てみると、18~29歳のNISA利用者(左のグラフ)は、資産が500万未満の比較的少ない層でも3割を超え、500万~1000万円の層が最も多く、約半数が利用していた。最も利用者が多い30代は、500万円以上の層になると利用者の割合が一気に増え、いずれも半数もしくは半数以上であった。
利用意向者を含めた右のグラフでも、やはり若年層が高い傾向にあり、18~29歳の利用者および利用意向者は、資産が500万円未満でも約6割と突出していた。
これらのデータから、若年層を中心にNISAの注目度が上がっており、資産運用が一般化してきていることが明らかになった。昨今はNISAをわかりやすく解説したSNSも多くあり、投資初心者でも始めやすい環境にあると言える。今後も、NISA利用者の増加は続くと思われる。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)