Internet Explorerが長年シェアを保ち続けてきた理由は?
それでもInternet Explorerが長年シェアを保ち続けてきた理由としては
・法人利用のニーズが大きかったこと
・ExcelとVBAを利用したスクレイピングでの需要があったこと
が挙げられます。IEは「嫌われ者」ではあったものの、以下の2つの用途では長年に渡って利用メリットが大きいブラウザでもありました。
法人利用のPCにおける根強い需要
IEが長年にわたってシェアを保ち続けた理由の一つは、法人利用のPCにおける根強い需要です。まず法人はしばしば「古いPC」や「古いソフト」を使い続ける必要が生じがちです。たとえば公共事業や製造業、金融業などでは、OSやソフトウェアを刷新してバグが生じた場合の損失が大きく「古いソフトウェアを稼働させ続ける」という意思決定が頻繁に行われます。
そのソフトウェアが古いバージョンのWindowsで稼働する場合、ソフトウェア本体とWindowsを共に「更新しない」必要があります。OSやソフトウェアの更新を止めた状態のPCは、セキュリティリスクが高くなるため「サードパーティー製のアプリ」のインストールはシステム部門によって禁止されることが多いです。するとWindowsの標準ブラウザであるInternet Explorerを使用することが「マスト」となります。
こうした事例は非常に多いため、そもそも社内システム自体をIEに最適化させているケースもあります。すると他のブラウザで見ると表示が崩れやすいため、ますますIEの重要度が増します。つまり法人にとっては、たとえ嫌われ者のブラウザであろうと「利用メリットの方が大きい」ブラウザであり続けていたこともまた事実でしょう。
ExcelとVBAを利用したスクレイピングでの需要
ややニッチな需要ですが、IEはExcelとVBA(Visual Basic for Applications)を利用したスクレイピングでも利用されていました。具体的にはVBAからIEを呼び出して操作し、Webページからデータを取得し、Excelにデータとして取り込んだり加工するもの。
たとえば
・株価情報
・ECサイトなどの売上ランキング
・競合のECサイトの商品価格変動のモニタリング
・口コミ
といった用途に便利で、特にデータ収集や分析を行う業務で重宝されていました。これらの業務は法人で行われることがやはり多く、それらの法人のPCにサードパーティー製のソフトウェアなどを導入できない場合、Windowsの標準的な機能の範疇で使いやすい「Excel」「VBA」「IE」の組み合わせによる情報収集は、簡単な上に極めて実用的でした。
実際、古いWindowsのシェアはどれくらい?
ここまで繰り返し、法人利用のPCでは「古いOS」が利用され続けるケースが少なくないと繰り返し述べています。実際「古いWindowsが利用され続けている」割合はどの程度なのでしょうか。
2022年にIT資産管理システム「Lansweeper」が、約3000万台に及ぶ世界中のWindows PCを分析し、算出した結果によるとWindows OSのシェアは以下の通りです。
・Windows 11:2.61%
・Windows 10:81.87%
・Windows 8.1:1.52%
・Windows 7:3.38%
・Windows Vista:0.03%
・Windows XP:1.27%
・Windows 2000:0.14%
2022年時点のデータでは、Windows 11の普及率は「Windows 7」を下回っていると言えます。最新バージョンのOSが出ても、ほとんどのPCはOSを新しいものに切り替えない傾向があると言えるでしょう。
そしてWindows 7やWIndows 8.1、Windows XPといった古いOSを使い続けるケースも一定数あると言えます。こうした古いOSが現役の環境ではInternet Explorerを長年に渡って使い続けていた可能性が高く、社内システムなどが「IE専用ページ」になっている可能性もあるでしょう。
Edgeで「IEモード」を利用するには?
2022年に、Internet Explorerはすでに廃止済み。2024年現在は、システムに残存するIEの脆弱性を狙ったサイバー攻撃といった特殊な事例を除いては「IE」が話題になることも減りました。
とはいえ「社内システムがIEでの表示に最適化されており、IEが無くなってしまうと表示や操作ができなくなってしまう」「IE専用ページが閲覧できなくなってしまうのは困る」というケースもまだあるでしょう。
実はMicrosoft Edgeには「IEモード」が搭載されており、IEモードに切り替えることでIE専用ページの表示や操作が可能です。IEモードの使い方は以下の通りです。
再起動後、表示したいWebページを開き、右上のメニューから「Internet Explorerモードで再度読み込む」を選択します。これにより、Edge内でIEモードが有効になり、IE専用ページを表示することができます。
※サムネイル画像(Image:Jeppe Gustafsson / Shutterstock.com)