
キーボードに新しく「Copilotキー」が追加されたWindowsパソコンが家電量販店などの店頭に並ぶケースが非常に増えています。このキーは、マイクロソフトが提供するAIアシスタント「Copilot」をすぐに起動してくれるものです。
しかし、すでにChatGPTを使っている人の中には、「なぜChatGPTがあるのにCopilotが強制起動されるのか」と不満を抱く人も少なくないでしょう。
そこでこの記事では
・Windowsに搭載されたCopilotは結局何の役に立つのか
・AIの代名詞とも言えるChatGPTの違いは何か、Copilot独自の利点はあるのか
といった点を、一つひとつご紹介します。
『Copilot』『ChatGPT』は何ができて、何が違うのか?
Windowsに標準搭載されたMicrosoft Copilotと、プラットフォームを問わず利用できるChatGPTは、それぞれ異なる強みを持つAIアシスタントと言えます。
CopilotはOSやMicrosoft 365アプリとシームレスに連携し、画面認識やファイル操作を直感的にサポート。一方、ChatGPTは汎用対話やクリエイティブ作業、外部API連携を通じた高度な自動化まで幅広く対応します。

Copilotの強みは「OS・アプリとの融合」
Copilotの真価は、マイクロソフト製品とのシームレスな連携にあります。これはChatGPTにはない、Copilotの最大の強みです。
たとえばCopilotのキラー機能とも言えるのが「Vision」です。これは、Copilotがユーザーの画面に表示されている内容を「見て」理解する能力です。たとえば、開いているアプリやブラウザのウィンドウをCopilotに共有し、「このグラフを説明して」「この英文ウェブサイトを要約して」といった指示を出すことができます。これにより、コピー&ペーストの手間なく、画面上のあらゆる情報を即座にAIの分析対象にできます。
またWindows上のCopilotは、PC内やOneDriveに保存されているファイルを直接検索し、その内容について質問することができます。「先週作成した “プロジェクトA” のWordファイルを開いて」といった指示で、ファイルを探し出す手間を省けます。
ChatGPTの強みは「柔軟性と先進性」

ChatGPTは、特定のOSやアプリに縛られない「自由さ」と、常に最先端を走る「先進性」が魅力です。その代表的な例がカスタムGPTsとAPI連携です。
ChatGPT Plusユーザーは、特定の目的や知識に特化した自分だけの「カスタムGPT」を作成できます。また、APIを通じて何千もの外部アプリケーションと連携させることが可能です(たとえばZapier経由)。これにより、「Gmailに届いたメールの内容を要約してSlackに通知する」といった高度な自動化が実現します。
CopilotとChatGPTは「似たり寄ったり?」
Copilotはローカル環境やOneDriveのファイルを扱えるという特徴があり、文書作成、データ分析、メールの返信といった日々のタスクを、アプリを切り替えることなくスムーズに実行可能です。一方で「オンライン上にアップロードしてはいけない機密ファイルを、Windows上のCopilotには与えても良い」という状況は極めて限定的かもしれません。オンラインのChatGPTに与えたくないファイルは、Copilotにも与えたくないのではないでしょうか(※1)。
(※1)組織向けの「Copilot for Microsoft 365」を利用している場合は、手厚いデータ保護が提供されているため安全です
つまりローカル環境のファイルをWindows標準機能として扱えるCopilotの魅力は「意外に、まだユーザーに正確には伝わっていない」と言えるのではないでしょうか。
この分かりにくさをさらに助長しているのが、CopilotとChatGPTの機能が似ている点です。
たとえば2025年8月7日にOpenAIが最新モデル「GPT-5」を発表すると、マイクロソフトは同日、CopilotにもGPT-5を搭載したことを発表。これは偶然ではなく、両者が技術的な核心部を共有している証拠です。実際、マイクロソフトはOpenAIの最大の投資家であり、パートナー関係にあります。
しかし、両者の関係は単なる協力にとどまりません。マイクロソフトはCopilotを自社製品に深く統合し、企業向けのセキュリティやコンプライアンスを強化することで独自の価値を追求しています。一方で、「MAI-1」のような自社開発のAIモデルもテストしており、将来的にはOpenAIへの依存度を下げ、独自の道を歩む可能性も示唆しています。対するOpenAIは、マイクロソフトという巨大なプラットフォームに縛られず、常にAIの最先端機能を追求し、ChatGPTにいち早く実装することでイノベーションを牽引し続けています。
この「先に革新するOpenAI」と「それを自社環境に最適化して展開するマイクロソフト」という構図には2025年現在の両者の関係が色濃く表れています。よく言えば両者の関係は密であり、悪く言えば、マイクロソフトはOpenAIの路線を後追いで踏襲しているに過ぎず、変化の激しいAI業界で立ち遅れているように見えるかもしれません。
結局『Copilot』はChatGPTがあれば、いらない?

CopilotとChatGPTは、あくまで似て非なる存在です。どちらか一方があればもう一方は不要、ということにはなりません。
Microsoft Copilotは、ユーザーがWindowsやOfficeの世界で作業するときの「副操縦士」であり文書作成、データ分析、メールの返信といった日々のタスクを、アプリを切り替えることなくスムーズに手伝ってくれます。
一方でChatGPTは、何か新しいことを始めたり、深く考えたりするときの「万能な相談相手」と言えるでしょう。
そしてChatGPTの万能さが明らかである以上、Copilotに副操縦士としての役割を求める機会は限定的かもしれません。Copilotが真価を発揮するには、Office製品やWindowsの標準機能とのより密な連携、そして「プロンプトのみでOSの動作を軽量化できた」といったユーザーの成功体験が、もう少し必要かもしれません。