昔買ったWi-Fiルーターを、「まだ使えるから」という理由で使い続けている人はいませんか? 実はWi-Fiは新しい規格が登場すると、過去の規格は次第にサポートが終了する流れがあります。
たとえばかつて主流だった「Wi-Fi 5」対応製品の多くがすでにサポート期間を終え、現在は「Wi-Fi 6」の初期モデルにもサポート終了の波が押し寄せ始めています。
今回はサポートが切れたルーターを使い続けるリスクについて、詳しく見ていきましょう。
Wi-Fi 5に加えて「初期のWi-Fi 6」のサポート終了が進行中

Wi-Fiルーターのサポート期間に関する考え方は、近年大きく変化しています。かつては明確な期限が定められていないこともありましたが、業界の共通認識として「販売終了からおおむね5年程度」という目安が定着しつつありました。
事実として2018年以前に購入したWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)対応製品の多くは、すでにサポート期間が満了している可能性が高い状況です。
しかし、その流れを大きく変える動きも出てきています。
たとえば、Atermシリーズで知られるNECプラットフォームズは、2025年12月1日から製品サポート期間を従来の「販売終了から約5年間」から「販売終了から約3年間」へと短縮することを発表しています。
エレコムの「WRC-X3000GS」は2025年8月に、バッファローのハイエンドモデル「WXR-5950AX12」も2026年1月にサポート終了予定です。
このように、「Wi-Fi 6だからまだ安心」という考えは通用しなくなりつつあります。自身の使用しているルーターがいつまでサポートされるのか、型番を元にメーカーの公式サイトで確認することがこれまで以上に重要になっています。
Wi-Fi 5・6・7は何が違うのか?
では、世代が違うと具体的に何が変わるのでしょうか。

Wi-Fi 5およびWi-Fi 6と比較して、Wi-Fi 7は飛躍的な進化を遂げています。最大の目玉は「MLO(Multi-Link Operation)」という新技術です。
これにより、2.4GHz・5GHz・6GHzといった複数の周波数帯を束ねて同時に通信することが可能になり、通信速度がWi-Fi 6の約4.8倍に向上するだけでなく、接続の安定性も劇的に改善されます。遅延も大幅に減少し、リアルタイム性が求められるオンラインゲームやVR/ARなど、次世代コンテンツを快適に楽しむための基盤技術です。
こうした最新規格の普及を後押しするように、Wi-Fi 5に加えて初期のWi-Fi 6のサポート終了は今後大きく進むものと考えられます。
なぜ危険?サポート終了済みのWi-Fiルーターを使い続けるリスク

Wi-Fiルーターは一度設置すると、故障するまで使い続けてしまうことが多いかもしれません。しかし2025年現在、Wi-Fi規格は「Wi-Fi 7」への移行期にあり、Wi-Fiルーターは「3年ごとの見直し」が新たな製品サイクルとして定着しつつあります。
つまり従来の感覚でルーターを使い続けると、知らぬ間に「ルーターのサポートが終了していた」ことになりかねません。
サポートが終了したWi-Fiルーターを使い続けることには、どのような危険が潜んでいるのでしょうか。「まだ使えるから」と放置していると、知らぬ間に深刻なトラブルへ巻き込まれる可能性もあります。
セキュリティ脆弱性の放置
最大のリスクは、セキュリティ上の欠陥(脆弱性)が発見されても、それを修正するためのファームウェアアップデートが提供されなくなることです。攻撃者は、サポートが終了し、脆弱性が修正されないまま放置されているルーターを格好の標的とします。
また脆弱性を突かれてルーターが乗っ取られると、外部から遠隔操作が可能な「ボット」という状態にされてしまうことがあります。このボットは、持ち主が気づかないうちに、特定の企業や社会インフラに対するDDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)などのサイバー犯罪に悪用される可能性があります。
ファームウェアの更新停止
ファームウェアの更新が止まるということは、最新デバイスとの互換性や通信パフォーマンスに関する問題が改善されなくなることも意味します。新しいスマートフォンやパソコンを導入した際に、通信速度が思ったように出なかったり、接続が不安定になったりする原因となることもあります。
もはやWi-Fiルーターは、単なるインターネット接続機器ではなく、家庭のネットワークセキュリティを司る重要な砦です。サポートが終了した製品を使い続けることは、自宅の玄関の鍵を開けたまま外出しているような、非常に危険な状態と言えるでしょう。
これからは、「購入から3年」を目安に、使用している製品のサポート状況を確認し、必要であれば最新のWi-Fi 6やWi-Fi 7対応製品への買い替えを計画的に行うことが、快適で安全なインターネット環境を維持するための、新たな常識となりつつあります。
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