Windows Media Playerで楽曲を再生するときに、「WMA」ファイルを使用した記憶がある方は多いのではないでしょうか? 一方で、近年は「気付いたらWMAファイルを再生する機会がめっきり減っていた」という方もいるはずです。AACやFLACといったファイル形式に比べて、WMAファイルを扱う機会は少なくなっていないでしょうか?
では、「WMA」はすでに時代遅れなのでしょうか? AACやFLACなどと比べて影が薄くなった理由を解説します。
「WMA」とは
WMA(Windows Media Audio)は、Microsoftが開発した音声フォーマットであり、Windows Media Playerなどで標準的に採用されているファイル形式です。
MP3と同様に「不可逆圧縮音源」に相当し、人間が聞き取りにくい音域のデータを削除することでファイルサイズを圧縮することが可能です。そのため軽量かつ音質が良いファイルとして、携帯オーディオプレーヤーなどにもファイル形式として採用されているケースもあります。
「WMA」がAACやFLACより影が薄い理由
「WMA」がAACやFLACより影が薄い理由としては、音楽ストリーミングサービスでの採用実績の薄さや、Microsoftが開発した形式であるが故の「ライセンス」があると考えられます。
Spotifyなど音楽ストリーミングサービスでの採用実績
まずSpotifyに代表される「音楽ストリーミングサービスでの採用実績」が薄いことが、WMAの存在感のなさに繋がっていると考えられます。
たとえばSpotifyはファイル形式として、AACを採用しています。Spotify Freeの場合、Web Playerでは128 kbit/秒のAACで楽曲が再生されます。
なおAACを採用しているその他のストリーミングサービスには、たとえばLINE MUSICが挙げられます。LINE MUSICではネットワーク環境が3G/LTEの場合はHE-AACで楽曲が配信され、Wi-Fiの場合はAACで配信されます。
音楽の聴き方がストリーミングに移り変わっているのはまぎれもない事実であり、その主要なプラットフォームで音声フォーマットとして「WMA」が採用されていないため、影が薄いという側面はあるでしょう。
オープンソースか否か
MP3に代表される不可逆圧縮音源においては「AAC」がすでに各種ストリーミングサービスなどにおいてデファクトスタンダードとなっています。
では「AAC」以外の音声ファイルの形式は、盛り上がりに欠けているのが現状なのでしょうか?
実はAAC以外の音声ファイルの形式として、近年注目度が高まっているのがオープンソース形式の「FLAC」です。FLAC形式は可逆圧縮に該当します。
まずMP3は、先にも述べた通り「不可逆圧縮」に分類されます。そのため、たとえばMP3をWAVに変換したとしても、圧縮段階で破棄されたデータが回復することはありません。
一方、FLACは「可逆圧縮」を採用しており、人間の耳で聞き取りづらい音を削除することはありません。
前述の通り、FLACはオープンソースで開発されているファイル形式でもあります。よってハードウェアやソフトウェアの製造会社が特許ライセンス及びその使用料を気にする場合、FLAC形式を採用するメリットも大きく、FLACは存在感が大きくなり始めています。
このようにAACがデファクトスタンダードとして定着し、AAC以外のファイル形式ではオープンソースのものが重用されている現代では「WMA」への対応を重視する必要性そのものが小さい状態だと言えるでしょう。
WMAはストリーミングサービスのスタンダードではなく、オープンソースでもないためです。
非Microsoft製品との相性に難がある
WMAはWindows Media PlayerをはじめとするMicrosoft製品との相性は良好です。一方で非Microsoft製品との相性には難があり、非Microsoft製品でWMAを再生するには追加のプラグインなどを要する場合も多いです。
加えてWMAはオープンソースではないため、オープンソースコミュニティは「活発」とは言えません。つまり一般のエンジニアがWMAに対応したツールやライブラリ、エンコーダーなどを開発するのは困難な場合があります。よって他のフォーマットに比べてカスタマイズ性や拡張性が限定的です。
Windows Media Playerを使用する機会が大きく減少している
WMAはWindows Media Playerでの音声の再生に適したファイル形式ですが、ストリーミングサービスの台頭によりすでにOS標準のメディアプレーヤーを使用する機会は少ないのも事実でしょう。
CDからリッピングした音源を再生する場合においても、たとえばリッピングした音源をYouTube Musicライブラリにアップロードすると、その音源を一般公開することなく個人的に楽しむことができます。加えてFLACファイルでのアップロードに対応しており、良好な音質で楽曲を楽しめます(※FLAC形式であらかじめリッピングすることは必要です)
つまり、総じてWindows Media Playerの利用機会が減っていることが「WMA」をファイル形式として使う機会の減少も招いていると言えるでしょう。
音声を扱う際に、AACやFLACよりも優先してWMAを使う理由は小さいのが現状ではないでしょうか。
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