「日本のワープロソフト」の代表格である「一太郎」が、2025年で40周年を迎えます。1985年の発売以来、日本語文書作成の定番ソフトとして多くのユーザーに愛用されてきた一太郎。2025年2月7日には「一太郎2025」と、「一太郎2025 プラチナ [40周年記念版]」の発売が発表されています。
一方で、一太郎に対して「Microsoft Wordとのシェア争いに敗れたソフト」というイメージを抱いており、「そもそも新しいバージョンが今でも出ていることに驚きを感じる」方もいるでしょう。
今回は一太郎の歴史を簡単に振り返りつつ、最新版「一太郎2025」の特徴について、詳しく見ていきましょう。
40周年を迎え、堅実な人気を保持する「一太郎」
2025年で40周年を迎える「一太郎」は、長きにわたって日本語文書作成における独自の立ち位置を確立してきたワープロソフトです。
大きな特徴には高い変換精度や豊富な辞書を備えた「ATOK」の搭載などが挙げられ、特に法曹界などで長く愛用され続けているソフトです。文書作成のプロフェッショナルたちから高い支持を獲得し続けています。また、ビジネスの場以外でも同人誌を作成したい人の間でも人気を博しています。
90年代~00年代に苦境を迎えた「一太郎」
「一太郎」は1980年代~1990年代初頭にかけ、日本語ワープロソフトの代名詞として君臨しました。しかし1995年以降は「Windows 95」の爆発的な人気を背景に、Microsoftが仕掛けた「Microsoft Word」の販売攻勢の影響を大きく受け、市場シェアの低下が顕著になります。
2024年現在、一太郎は「専門的なワープロソフトを求めていない限り、選ばれないソフト」というイメージが強いのもまた事実でしょう。一方で安定的にバージョンアップが提供され続け、「専門的なワープロソフト」として唯一無二の存在であることも確かです。
今でも一太郎が愛用されている理由は?
2024年現在も、一太郎が多くのユーザーに愛用され続けている理由は、やはり日本語文書作成に特化した機能の充実です。特に、公文書作成や法律文書、学術論文などの専門的な文書作成において、その真価を発揮しています。日本語の文法や表現規則に基づいた校正機能、豊富な文書テンプレート、そして使いやすいインターフェースは、他のワープロソフトにない強みです。
実は2024年現在でも極めて便利な「一太郎」の定番機能(例)
先にも述べた通り「日本語文書作成に特化したワープロソフト」として非常に便利な一太郎。その機能の具体例をご紹介します。
「作業フェーズ」機能
「作業フェーズ」機能は、文書作成のプロセスを効率化する一太郎の代表的な機能です。作業フェーズには「エディタ」「アウトライン」「基本編集」「提出確認」「ビューア」があります。
アイディアを整理したいときに便利なのは「アウトライン」。作業は「基本編集」で行い、テキスト形式で一気に入力したいときは「エディタ」がおすすめです。仕上がりは「提出確認」もしくは「ビューア」で確認できます。
つまり、簡単な操作でアイディア出しから仕上がり確認までできるのが「一太郎」の特徴のひとつです。
「きまるスタイル」機能
文書の体裁を整えるための「きまるスタイル」機能は、一太郎の代表的な機能です。ビジネス文書や論文など、目的に応じた書式設定を簡単に適用できます。フォントサイズや行間、余白などの設定があらかじめ用意されているため、自分で細かく設定しなくて済むのが特徴です。
実際、筆者は自費出版などをした経験がありますが、「B6の大きさで一段落にしたい」という希望から逆算して「きまるスタイル」から仕上がりイメージを選び、そこからテキストを書いてそのままPDFで出力して印刷所に回せるため、「一太郎」を使っているだけで余計な手間が減るという非常に大きなメリットがあります。
「一太郎2025」で加わる新しい機能(例)
先述した通り、2025年2月7日に「一太郎2025」と、「一太郎2025 プラチナ [40周年記念版]」の発売が決まっています。すでに明らかになっている「一太郎2025」の新機能についてご紹介します。
音声・動画や画像から文字起こし
「一太郎2025」では、新機能として、音声・動画や画像からの文字起こし機能が追加されます。この機能により、会議の録音や講演の動画からテキストを起こすことが可能になります。再生しながらリアルタイムで文字起こししてくれるので、これまで手作業で文字起こししていた時間を大幅に削減できるでしょう。
また、OCR機能が搭載されるので、テキストにしたい資料を撮影して読み込めば、こちらも自動で文字起こししてくれます。
大げさ、紛らわしい表現も指摘する校正機能
「一太郎2025」の校正機能では大げさな表現や紛らわしい表現も指摘できるようになります。たとえば「No.1」「最高」といった最上級表現はつい使ってしまいがちですが、明確なソースがないと広告などでは景品表示法違反に該当するほど。つまり、安易な乱用は社会的信用を失う恐れすらあります。
しかし、「一太郎2025」では校正の際に「誇張表現」も設定することができ、こうした安易な表現を指摘してくれます。
岩波国語辞典 for ATOK
一太郎2025では、高品質な日本語入力を支援するATOKに、「岩波国語辞典」第七版から新たに2,200項目が収録されます。これにより、最新用語を辞書引きツールパレットで調べることができるようになります。
40周年記念フォントパックも嬉しい
一太郎2025の発売を記念し、40周年記念フォントパックが提供されます。このフォントパックに収録されるのは、「MJ-Pあおとゴシック StdN R」「MJ-P見出ミンMA1 StdN B」「TJS-漢字タイポス412 Std R」など20書体。スタイリッシュなフォントからデザインに使えるフォントまで種類豊富となっています。
※サムネイル画像は(Image:「ジャストシステム」公式サイトより引用)