
スマホでの動画視聴時やゲームプレイ時に、本体に充電ケーブルをつなぐと端末がどんどん熱くなり、動きがカクカクしてパフォーマンスが落ちてしまう……といった経験はありませんか。
こうした「充電しながらの高負荷な使用」で起こりがちな問題を解決する技術として、AQUOSなどが採用する『バイパス給電(ダイレクト給電)』が注目されています。

バイパス給電(ダイレクト給電)とは?
バイパス給電とは、一言でいえば「バッテリーを介さず、スマホ本体(システム)へ直接電力を供給する技術」です。
通常、スマートフォンを充電ケーブルにつなぐと、電力はまずバッテリーに蓄えられます。そして、そのバッテリーからスマホを動かすための電力が各部品(CPUや画面など)へ供給されます。
一般的には「ACアダプタ → バッテリー → 本体システム」という経路で電力が供給されます。
これに対しバイパス給電は、ACアダプタから送られた電力がバッテリーを「バイパス(迂回)」し、「ACアダプタ → 本体システム」という形で直接スマホを動かします。

バッテリーが充放電しないため、本体の発熱を抑えられます。
加えてスマホは内部の温度が高くなりすぎると、故障を防ぐためにCPUなどの性能を意図的に下げる「サーマルスロットリング」という機能が働きます。バイパス給電で発熱を抑えれば、この性能低下が起きにくくなり、ゲームや動画編集といった重い作業でもパフォーマンスを維持しやすくなります。
特にeSportsのような本格的なゲーム環境では、バイパス給電は非常に有効です。

つまりバイパス給電は「スマートフォンの高性能化に伴い、ゲームや動画撮影、動画編集など重い作業」の需要が拡大するにつれ、給電方式として脚光を浴びるようになったと言えるでしょう。
バイパス給電に対応する代表的なスマートフォン
バイパス給電は非常に便利な機能ですが、残念ながらすべてのスマートフォンに搭載されているわけではありません。現状では、主にゲーミングスマホや一部の機種に限って搭載されています。つまり、この機能はすべてのスマホに搭載されているわけではないので注意が必要です。
国内で入手しやすい、バイパス給電に対応した代表的なシリーズを2つご紹介します。
AQUOSシリーズ(シャープ)

「インテリジェントチャージ」内の「ダイレクト給電」という名称で搭載されています。AQUOSのダイレクト給電は、バッテリー残量が90%に達すると自動で切り替わるなど、ユーザーが細かく設定しなくてもバッテリーを保護してくれるのが特徴です。ゲーム中に限らず利用できるため、幅広いシーンで恩恵を受けられます。
Xperiaシリーズ(ソニー)

ゲームアシスト機能「ゲームエンハンサー」内にある「HSパワーコントロール」がバイパス給電に相当します。元々はゲームプレイ時のパフォーマンス維持を目的とした機能ですが、充電器に接続したままゲームをするユーザーにとっては非常に有用な機能です。
iPhoneはバイパス給電に対応しているか?
残念ながら、2025年現在、iPhoneシリーズにはユーザーが任意にオン/オフできるバイパス給電機能は搭載されていません。
iOSには、バッテリーの劣化を防ぐために充電が80%に達すると、そこからの充電速度を緩やかにする「バッテリー充電の最適化」という機能がありますが、これはあくまで充電をコントロールするもので、システムへ直接給電するバイパス給電とは仕組みが異なります。
スマートフォンの進化は留まるところを知りません。搭載される心臓部「SoC」は年々高性能化し、カメラは本格的な撮影機材に匹敵する性能を持つようになりました。
今後、こうしたプロの映像制作やライブ配信の現場でスマートフォンが活用される機会は、さらに拡大していくでしょう。そうなると、単に「バッテリー容量が大きい」だけではニーズに応えきれなくなります。
数時間にわたる撮影や配信では、高画質を維持したまま、発熱によるパフォーマンス低下や強制終了は絶対に避けなければなりません。まさに、発熱を最小限に抑え、安定した電力を供給し続けられるバイパス給電が生命線とも言える技術になります。スマートフォンを極限状況で駆使するプロの現場では、バイパス給電対応が機種選びの重要な要素になる可能性があります。
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