
2025年10月1日、NHKは新たなインターネットサービス「NHK ONE」を開始しました。
同サービスはこれまで「NHKプラス」や「NHK NEWS WEB」など、複数のサイトやアプリに分かれていたサービスを一つに統合し、放送と通信の融合を本格化させる試みと位置づけられます。
一方で「テレビは持たないがスマートフォンやPCでニュースを見る」という層からは、事実上の有料化に対する戸惑いや批判の声が上がっています。
では、すでにNHK受信契約を結び、日頃からNHKの番組を視聴している世帯にとって、この「NHK ONE」に登録する価値はあるのでしょうか。
NHK ONEとは何か?

NHK ONEは、地上波(総合・Eテレ)のテレビ番組やラジオ番組の常時同時配信、1週間の見逃し・聴き逃し配信、そしてニュース記事や動画、気象・災害情報といった、これまでNHKがインターネットで提供してきたコンテンツを、文字通り「一つ」に集約した新サービスです。
このサービスの背景には、2024年に改正された放送法があります。 この法改正によって、これまでNHKの「任意業務」だったインターネット配信が、放送と並ぶ「必須業務」として位置づけられました。
つまり、テレビ放送だけでなく、インターネットを通じて国民に情報を届けることが、NHKの法律上の責務となったのです。これにより、テレビを持たない世帯も含め、より広い層にコンテンツを届けるための基盤としてNHK ONEが誕生しました。
利用者は、PCのブラウザやスマートフォンの専用アプリを通じて、これらのサービスにアクセスできます。世帯で誰かが受信契約を結んでいれば、追加の料金負担なく利用を開始できるのが大きな特徴です。
「テレビなし世帯」と「受信料」の関係性

改正放送法とNHK ONEの登場により、テレビや地デジ対応カーナビを所有していなくても、インターネット配信の利用で受信契約の対象となることになりました。
具体的には、テレビを設置せずにインターネット配信のみを利用する場合でも、地上契約と同額の月額1,100円の受信料が必要に。これに伴い、多くの人が無料で利用してきた「NHK NEWS WEB」などのニュースサイトも原則として受信契約者向けのサービスへと移行したことが物議を醸しています。
さらに、受信契約情報の登録や連携に応じないユーザーに対し、NHKが強硬な手段を検討していることも批判の対象となっています。
そもそもNHK ONEはユーザーに対し、受信契約情報とNHK ONEアカウントの紐づけを求めるサービス。一方、NHK ONEそのものは受信契約情報を登録しなくても、アカウント開設が可能となっています。
そこで、NHKはまず11月中旬以降、未連携のユーザーに対して「受信契約情報の登録・連携のお願い」というメッセージを繰り返し表示する予定とのこと。 それでも応じないユーザーに対しては、画面の一部に「閉じられないメッセージ」を表示する準備を進めていることを明らかにしました。
この方針に対して、インターネット上では「悪質なサイトの手口と同じだ」「事実上の強制契約ではないか」といった厳しい批判が殺到しています。 こうした手法は、特にテレビを持たずにNHK NEWS WEBなどを利用してきた層にとって、NHK ONEを「ストレスの多い、不信感の募るサービス」と感じさせる一因となっています。
受信契約済み世帯にとってのメリット・デメリット
テレビなし世帯にとって「NHK ONE」は受信契約との関係性のわかりづらさや、受信契約情報の登録を求めるUIやメッセージ表示の強硬性など、総じて不信感が募るサービスであることは2025年10月時点では否めないでしょう。
一方、NHK ONEに寄せられる批判は主に「テレビを持たず、受信契約を結んでいない世帯」からのものが中心である側面があるのも事実です。すでに受信契約を結び、なおかつ日常的にNHKの番組や報道に好んで触れている層にとって、NHK ONEは従来のNHKプラスと比較し、どのようなメリットがあるサービスだと言えるのでしょうか。
利便性の大幅な向上(ワンストップ化)
従来は、見逃し配信は「NHKプラス」、ニュースは「NHK NEWS WEB」、防災情報は「ニュース・防災アプリ」と、目的ごとに複数のサイトやアプリを使い分ける必要がありました。NHK ONEではこれらが統合され、一つの窓口からシームレスにあらゆる情報へアクセスできるようになりました。
ちなみにこれまでNHKプラスを利用していた方はもちろん、利用していなかった方も、契約情報と紐づけるだけで、NHKが提供するインターネットサービスの全てをひとつのサイト内で確認することができます。
デバイス連携
NHK ONEでは、1契約世帯につき最大5つまで「プロファイル」を設定できます。 これにより、家族それぞれが自分の視聴履歴やお気に入りの番組を管理できるようになります。たとえば、通勤中などにスマホで見ていたドラマの続きを、帰宅後にリビングのテレビで再生するといった「デバイス連携」もスムーズに行えます。
テレビを廃棄してもNHKの契約を継続できる
ソーシャルメディアの発展に伴い、2025年現在、テレビを所有している人でも、将来的に廃棄を検討するケースは少なくないのではないでしょうか。またテレビを廃棄せず、買い替える場合でも、その選択肢としてチューナーレステレビは有力でしょう。
一方で「テレビを廃棄した」「チューナーレステレビに買い替えた」としても「NHKを視聴したくないわけではない」場合もあるでしょう。NHKは特殊法人として運営される公共放送であり、その報道や番組制作に独自の価値を見出す方もまた少なくないと考えられるためです。このようにNHKに独自の価値を見出している場合に、テレビを廃棄しつつ、NHKの視聴は続けるという選択肢が生まれたことには一定の意義があります。
総じて、すでにNHKと受信契約を結び、報道や番組を日常的に視聴している世帯にとっては、登録する価値は十分にあると言えるでしょう。NHKを能動的に楽しんでいるものの、NHKプラスからの移行手続きを後回しにしていた方などは、ぜひNHK ONEに登録してみてはいかがでしょうか。
※サムネイル画像は(Image:「NHK ONE」より引用)


