物価上昇による生活の圧迫や働き控えによる労働力不足を背景に、政府は所得税が発生する年収103万の壁を123万に引き上げる税制改正大綱を決定した。では、実際に引き上げられた場合、パートやアルバイトなどで働く主婦や主夫に影響はあるのだろうか。求人サイト「しゅふJOB」を運営するビースタイルメディアが調査した「年収の壁」に関するアンケート結果を見てみよう。
年収の壁を意識し、働き控えをする人は3割強、そのうち約半数が「必要な収入を得られず」
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調査は2025年1月21日~2月3日、現在就業中の「しゅふJOB」登録者671人を対象に実施された。「年収の壁があることで働き控えをしているか」と尋ねたところ、「ある」と回答した人は34.3%と、約3人に1人の割合となった。
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次に、「働き控えをしている」と回答した人に、「それによりどのような影響があるか」(複数回答可)と尋ねたところ、「生活に必要な収入が得られていない」と答えた人が45.2%、「もっと働きたいのに働けない」が37.8%と、年収の壁が主婦・主夫の収入や労働時間に影響を及ぼしていることが判明。また、4割が「就業時間の調整や管理が大変」と回答したことから、年収を超えないように計算して働くことを、煩わしいと感じている人が多いことも明らかになった。
では、年収の壁が引き上げられた場合、働き方はどのように変わるのだろうか。
年収の壁引き上げで労働時間を増やす人は2割強、一方「影響なし」と回答した人も
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働き控えをしていると回答した人に「年収の壁が103万から123万に引き上げられた場合、自身の働き方に変化はあるか」(複数回答可)と尋ねたところ、「働く時間を増やす」と回答した人が30.0%、「Wワークなど仕事を増やす」が16.5%と、仕事量を増やすことに前向きな人が多かったほか、よりよい条件を求めて「時給の高い仕事に変える」と回答した人も約1割いた。
年収の壁引き上げにより、多くの主婦・主夫が働き方を変えることに前向きだったことから、働き控えの解消や収入の増加に一定の効果がありそうだ。2月18日に行われた税制調査会の幹部会合では、「160万」や「178万」などの引き上げ案も提案されており、これが実現されれば、労働市場に与える影響はよりいっそう大きくなるだろう。
一方で、約2割は「影響はない」と回答し、働き方を変えない人が一定数いることも明らかになった。また、実際にどれほど手取りが増えるかわかりにくいからか、「わからない」と回答した人も約2割いた。
今回の年収の壁引き上げは所得税のみの引き上げにとどまり、社会保険料の負担が発生する「130万の壁」は維持される。より多くの人が働き控えを解消するには、社会保険料も含めた、包括的な制度改正を行う必要があるだろう。今後の政府の動向を注視していきたい。
出典:【しゅふJOB】
参照元:【令和7年度税制改正の大綱の概要(PDF)】
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)