所得税の支払い義務が発生するボーダーライン「103万円の壁」。2025年より103万円が160万円に引き上げられることが決まったが、引き上げにより現在年収103万円以下の人の働き方はどう変わるのだろうか? 管理部門向けのビジネスメディア「労務SEARCH」が行ったアンケート調査結果を見てみよう。

103万円の壁が引き上げ「収入アップの期待」と「制度の複雑さへの不安」は半々

エフアンドエムネット株式会社が運営するビジネスメディア「労務SEARCH」では、年収103万円以下の男女300名を対象にアンケートを実施。103万円の壁への意識、160万円引き上げ後の働き方などについて調査した。
最初に「103万円の壁を意識しているか?」と質問すると「はい」が57.7%、「いいえ」が29.7%、「どちらとも言えない」が12.6%だった。年収103万円を超えると所得税の負担が発生や配偶者控除などに影響するため、約6割が「103万円の壁」を意識し、働く日数や時間を調整しているようだ。

2025年以降、103万円の壁は最大160万円まで引き上げられることが決定。制度変更の認知を調査すると、7割以上が「知っている」と回答。引き上げによる影響についての理解度は、「なんとなく理解している」が56.7%で最多、「あまり理解していない」が28.3%、以下「十分に理解している」が8.3%、「全く理解していない」6.7%と続いた。程度に差はあるものの「理解している」は合計65.0%と過半数を占めたが、「十分に理解している」が1割にも満たないことから、制度変更に対する理解度が依然として低いことが読み取れる。

次に、ボーダーラインが160万円に引き上げられることについて「どのように感じるか?」と聞いてみたところ、1位は「制度が複雑になったと思う」25.7%、2位は「収入が増えると思う」24.3%、3位は「特に何も感じない/わからない」17.7%だった。1位と2位が僅差であることから、制度変更により収入アップへの期待感を持つ人が一定数いる一方で、税金や社会保険の仕組みの複雑さを感じている人も同程度存在することが判明した。収入が増えることが、扶養内で働く人にとって必ずしもメリットになるとは限らない。
約4割が引き上げをきっかけに「働き方を変えたい」

現在年収103万円以下で働く人に今後の働き方について尋ねると、1位は「まだわからない/決めていない」19.7%、2位は「年収を少しずつ増やす方向で働き方を調整したい」19.0%、3位は「勤務日数や労働時間を増やしたい」18.0%だった。未定という回答が最も多かったが、2位と3位を合わせると、約4割が引き上げをきっかけに「収入を増やす方向で働き方を変えたい」と考えているようだ。

続いて「どの程度の年収の増加を考えているか?」と質問すると、「具体的な目標はないができる範囲で増やしたい」が24.4%と最も多く、「年収を160万円程度まで増やしたい」20.7%、「まだわからない」20.4%と続いた。「年収を200万円程度まで増やしたい」という回答も7.3%あり、今回の制度変更を大幅な収入アップの機会と捉える人も一定数いることがわかった。
複数の年収の壁が複雑に関わり合う現在の制度において、個人が自分に合った最適な働き方を選ぶためには、正確でわかりやすい情報収集が必須となってくる。企業は、従業員が年収の壁について正しく理解し、安心して働き方を検討できるよう、制度に関する情報を積極的に提供することが重要となってくるだろう。
出典:【労務SEARCH】
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