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『コンプガチャ』はダークパターンの先駆け? ルートボックス(ガチャ)規制の現在

2012年に不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)違反だとして消費者庁が問題視し、規制の対象となった『コンプガチャ』。

国内での「ガチャ」が規制対象となってから10年以上の月日が経過しましたが、このガチャ問題はその後「ルートボックス問題」として海外でも話題に。海外のオンラインゲームやアプリでも「ルートボックス規制」が進み、ルートボックスは『ダークパターンである』として強く批判される対象にもなりました。

いわば国内の『コンプガチャ』は今日のダークパターンの先駆けだったのかもしれません。とはいえ規制から長い年月が経ったこともあり、コンプガチャとは何だったのか記憶が薄れている方もいるのでは?

『コンプガチャ』はいったい何が問題だったのでしょうか。改めて振り返っていきましょう。

コンプガチャとは?

「コンプガチャ」とは、ソーシャルゲームで2010年代初頭に流行した課金システムの一種。正式名称は「コンプリートガチャ」で、特定のアイテムを複数種類揃えることでレアアイテムやキャラクターを獲得できる仕組みでした。

たとえば「アイテムAとBを揃えると限定キャラクターCが手に入る」といった形式で、完全確率型の通常ガチャとは異なり「コレクション要素」がユーザーの課金意欲を刺激しました。

コンプガチャとは?1
(画像はスマホライフPLUS編集部で作成)
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もっともこの説明だけでは、コンプガチャの「何が問題なのか」は把握できない方も多いでしょう。コンプガチャの問題点は、実は「ガチャを回せば回すほどユーザーが損をする可能性が高くなること」にあるのです。

国内におけるコンプガチャ規制について

コンプガチャの問題点は「ガチャを回すほど、どんどん確率が減っていくこと」にあります。この現象は、サイコロの面をすべて揃えるゲームにたとえると分かりやすいでしょう。

ゲーム開始時は「どの面が出ても新しい面」なので、当たる確率は高くなっています。しかしゲームが進むにつれて、すでに出た面が再び出る可能性が高くなり、残りの面を揃えることが徐々に難しくなっていきます。

つまりユーザー目線で見ると序盤は簡単にアイテムがそろっていくために成功を感じやすく、ゲームを続ける動機付けになりますが、後半になるとアイテムが出にくくなります。

それでいてプレイヤーは「あと少し」という思いから、より多くのガチャを回してしまう傾向があります。

こうした仕組みは、2012年のコンプガチャ規制では「絵合わせ」に該当するものだと消費者庁から指摘され、ソーシャルゲーム各社はコンプガチャを全廃するに至りました。

コンプガチャとは?2
(画像はスマホライフPLUS編集部で作成)

なお「絵合わせ」とは、二つ以上の種類の文字、絵、符号などを表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組み合わせを揃えさせる方法を用いた懸賞による景品類の提供を指します。

この方法が禁止されている理由は、その仕組み自体に欺瞞(ぎまん)性が強く、特に子ども向けの商品に用いられることが多いため、子どもの射幸心をあおる度合いが著しく強いためです。

海外でもルートボックス(ガチャ)が規制対象に

日本国内でコンプガチャが規制された際、海外ではソーシャルゲームを用いた「射幸心をあおるガチャ」がそもそも一般的ではなく、ガチャの仕組みを持つゲーム自体も少ない状態でした。

そのため日本でのコンプガチャ規制時、むしろ海外ではオンラインでのギャンブル解禁が積極的に進んでいる傾向すらありました。そのため国内ではソーシャルゲームのガチャが規制されることを嘆く声も一部では存在していました。

一方、コンプガチャ規制から13年が経過し、eSportsやMMORPGなどが国内外を問わずに幅広く普及。ゲーム市場そのものが拡大する中で、海外でもガチャが「ルートボックス問題」として規制対象になるケースが増えました。

たとえばベルギーでは2018年にルートボックスが賭博規制に抵触するとして問題に。ベルギー規制当局が、該当するゲームに改善命令を出しています。

「ガチャ規制」に関しては日本は世界的に見ても先進的で、ガチャの問題点の把握とその規制が極めてスピーディーに実施された国だったとは言えるでしょう。

『原神』におけるルートボックス問題のケース

海外におけるルートボックス(ガチャ)問題の代表的なケースには、オープンワールドRPG『原神』に関する訴えが挙げられます。

『原神』におけるルートボックス問題のケース1
(画像は「原神」公式サイトより引用)

『原神』を巡っては、運営元であるHoyoverseが、アメリカの連邦取引委員会(FTC)からガチャシステムの不当表示に関して訴えを起こされています。

問題視されたのは、ゲーム内の複雑な仮想通貨システムとルートボックスで、子どもがレアアイテムを手に入れるために多額のお金を使う仕組みになっている点が、不当販売だとされました。こうした不当販売はダークパターンだと論じる声も、世界各国で寄せられました。

『原神』の運営元は2025年1月に2,000万ドルの支払いと親がデータ収集に同意していない13歳未満の子どものデータの削除することなどに同意し、和解しています。

ゲームと課金、確率操作の関係性

先述した通り、コンプガチャは「絵合わせ」に該当し、射幸性をあおるものとして消費者庁が注意喚起しました。一方でコンプガチャが本当に「絵合わせ」に相当するものだと言えるのか、というのは実は議論が分かれるポイントでもあります。

先ほどサイコロの例を出した通り、確かにコンプを続けていくと「残り1つ」がそろいにくい状況になりますが、それはあくまで確率の話です。コンプガチャの規制当時、消費者庁はゲームの運営会社のガチャの確率操作の調査は行っておらず、発表ではその可能性にも言及されていません。

また消費者庁が問題視したのは、その「残り1つ」がそろいにくいという状態が生まれるにも関わらず、すべて揃えるとボーナスアイテムがもらえるというコンプガチャが子どもに対しても提供されたことにあると言えるのではないでしょうか。この点はコンプガチャ規制が「絵合わせ」と紐づける形で実施されたことが裏付けています。

消費者庁のウェブサイトにも『「カード合わせ」は、子ども向けの商品に用いられることが多く、子どもの射幸心をあおる度合いが著しく強いため、苦情が多かったという事情もありました』と明言されています。

あえてコンプガチャ規制を否定的に捉えるならば、あくまで確率論に基づき「射幸性が高い」仕組みを、そのユーザーが子どもか大人かであるか否かに関わらず、一律的に規制したのが「コンプガチャ規制だった」とも言えるでしょう。

たとえば成熟した大人が「自己責任の上で、射幸性が高いガチャに興じること」は絵合わせ行為の規制対象に入るのか、と言えば微妙な点もあります。海外のルートボックス問題も子どもの個人情報の収集と課金が問題視されています。

大人もゲームやガチャに興じる時代になり、規制の対象とならないガチャが巨大市場となる可能性も見えています。たとえば『原神』を運営するHoYoverseが、ゲーム業界における有数のグローバルブランドであることはもはや疑いようがないことでしょう。

コンプガチャ規制から長い時代が経ち、海外でもガチャの市場が出てきていることも踏まえ、「大人向けのガチャ」が議論されるタイミングが来ているのかもしれません。

※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)

スマホライフPLUS編集部

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