内蔵チューナーがないテレビである「チューナーレステレビ」は、NHKをはじめとする地上波の受信ができないテレビです。もっとも多くの場合、Android TVなどのOSが端末にインストールされているため、ネット接続の上でYouTubeやTVer、動画サブスクサービスを視聴することは可能です。
すると「どうしても地上波の番組を見たい際はTVerを見ればよいし、それ以外のときはサブスクやYouTubeが視聴できればよい」という考え方が可能です。では、チューナーレステレビさえあれば、チューナー内蔵テレビは不要なのでしょうか?
今回はチューナー内蔵テレビとチューナーレステレビの違いに着目し、本当に「チューナー内蔵テレビが不要な時代」はすでに到来しているのか考えていきましょう。
結論から言えば高齢者向けの環境や、リアルタイム視聴を重視する視聴習慣がある方にとっては「チューナー内蔵テレビ」はまだ必要だと言えるでしょう。
また、「災害時の情報収集手段」を重視する場合も、ラジオとチューナー内蔵テレビの両方を手元に置いておく価値があります。
チューナーレステレビとチューナー内蔵テレビの基本的な違い

チューナーレステレビとチューナー内蔵テレビの最大の違いは、地上波・BS/CS放送用チューナーの有無です。チューナーレステレビはインターネット経由のコンテンツ視聴やモニターとしての利用に特化しており、地上波やBS/CS放送を受信する機能を搭載していません。
一方、チューナー内蔵テレビは従来型のテレビ放送とストリーミングサービスの両方を利用可能です(※ネットに接続できない、いわゆるスマートテレビではないテレビの場合は別途、Fire TV Stickなどストリーミングデバイスが必要な場合があります)
チューナーレステレビを選ぶ利点
チューナーレステレビの利点は、チューナーを内蔵せず製造コストが削減されるため、同サイズのチューナー内蔵テレビよりも非常に安価であることです。
筆者が家電量販店などで店頭価格をチェックした限りでは、特に43型以上の大型モデルのチューナー内蔵テレビは高価なケースが多いため、チューナーレステレビのコストパフォーマンスの高さが際立つ印象があります。

また、冒頭でもご紹介したとおり、NHK受信料の支払い義務が法的に免除されるため、年間約1.3万円(※地上のみ、12カ月前払額の場合)の節約が可能です。
さらにアンテナ配線が不要で、電源とインターネット環境さえあれば設置できるため、設置の柔軟性が高いことも特徴です。たとえば新築の一軒家などにテレビを設置する場合、アンテナのことを気にする必要がないチューナーレステレビの方がお手軽な場面は少なくないでしょう。
一方、チューナー内蔵テレビは、リアルタイムのニュースやスポーツ中継を地上波やBSで視聴する習慣がある人にとってはまだまだ必須ではあると言えます。
自宅に「チューナーレステレビ」があれば十分なケース
チューナーレステレビがあれば十分なケースは、主に以下のようなユーザーです。
地上波放送よりもストリーミング視聴の機会が多い
テレビを見ている時間の大半が、Netflixなどの動画サブスクサービスやYouTubeなどの動画配信サービスである場合、また地上波はリアルタイムで視聴せずTVerで済ませている場合は、チューナーレステレビで十分でしょう。
多くのチューナーレステレビには主要な動画サービスがプリインストールされており、主要なサービスはリモコンに専用アクセスボタンが搭載されているケースも多いため、簡単に視聴可能です。なお、TVerなどの見逃し配信サービスでは、放送後1週間程度の視聴期限や広告挿入の制約があるため、注意が必要です。
NHK受信料を支払いたくない場合
家庭のテレビを処分してチューナーレステレビに置き換えることで、自宅でNHKを受信できる設備がなくなります。そのためNHK受信料を節約できます。
なお、買い替える場合はテレビを処分し、その処分にかかった領収書などを取っておきましょう。NHKに対して「本当にテレビを処分した」と証明するためです。処分後、NHKふれあいセンターに問い合わせると必要書類が送付されるので、解約手続きができます。

なお自宅のテレビとは別に「車」を保有している場合、カーナビの存在に要注意。世帯で所有しているカーナビがチューナー内蔵の場合、NHKの支払い義務があるので注意してください。
省スペース重視かつコスト重視のユーザー

チューナーレステレビはアンテナ配線が不要で、設置自由度が高いため、省スペースを重視するユーザーに向いています。またチューナー内蔵モデルと比べて軽量な製品も多いため、壁掛け設置も簡単です。さらに同等サイズのチューナー内蔵モデルより安く、コストを優先する人にも向いています。
チューナー内蔵テレビが必要なケース
チューナー内蔵テレビが必要なケースは、以下のような場合です。
リアルタイム放送視聴及び録画需要がある場合
ニュースやスポーツ中継を地上波やBSで視聴する習慣がある場合、チューナー内蔵テレビが必要です。また番組の同時録画や裏番組視聴機能を求める場合にも、チューナー内蔵テレビが必要です。
災害時の情報収集を重視する場合
災害の発生時には、平常時のような安定したインターネット接続ができず、スマホやタブレット、チューナーレステレビによる情報収集が思い通りにできない場合があります。
一方でチューナー内蔵テレビであれば、電源の確保が可能で、テレビのアンテナが倒壊するなどの被害が発生していなければ安定した番組視聴ができる場合があります。
またテレビ局側でも地上波視聴が困難な被災地に向けて、BSチャンネルを利用した放送を行うケースもあります。
もちろん、たとえBSチャンネルを利用した放送が行われていても、「電源の確保」ができなければチューナー内蔵テレビは意味がありません。そのため、被害の規模が極めて大きい場合は、手回しラジオなどのほうが情報収集手段として優れているでしょう。
そのため災害時の情報収集手段として「テレビ」を過信するのは決して良くはないですが、「ネット接続がなくても情報を得られる手段」を1つでも多く確保したい場合には、チューナー内蔵テレビの廃棄を思いとどまるのも一案です。
高齢者向け環境
チューナーレステレビを利用する際は、各ストリーミングサービスへの登録などが必要なほか、「リモコンにボタンがないストリーミングサービスにアクセスするにはどうすればいいのか」という点でやや専門知識も求められます。
そのため「ユーザーが高齢でストリーミングサービスのサブスクの課金状況の管理などが難しい」「リモコン操作だけで番組視聴が完結する方が望ましい」といった場合、引き続きチューナー内蔵テレビが適しています。
【余談】チューナーレステレビにチューナーを外付けすることはできるの?
ここまでの内容を踏まえると、「今後はチューナーレステレビをメインで使いたいが、本当にチューナーが必要になったときは外付けで取り付けたい」と考える方もいるかもしれません。
ではチューナーレステレビにチューナーを後から取り付けることはできるのでしょうか?
結論から言えばチューナーレステレビで地上波視聴を追加する場合、外付けチューナー(約1万円~)やネットワークレコーダー(nasne等)が必要となります。

nasneはソニーとバッファローが開発したネットワークレコーダー&メディアストレージで、テレビチューナーとハードディスクを内蔵したデバイスです。ネットワーク接続を通じ、チューナーレステレビであっても、nasneに録画した番組を視聴することができます。
ただし、これらを追加購入すると、チューナー内蔵テレビとの価格差が縮まるほか「NHKを受信可能な環境となる」点にご注意ください。
※サムネイル画像は(Image:「Amazon」公式サイトより引用)