AIに「文章を読み込ませて、回答を得る」「何かの予想をさせる」のはすでに当たり前のことになりつつあり、AIの話題に飽き飽きしている方もいるでしょう。
しかし筆者はAIが「飽きられ出している」2025年に、あえてAIの音楽ライブに関する予想にすべてを賭けて交通費3万円の自腹を切って名古屋まで遠征してみました。つまり「当たるかどうか分からない」のが分かり切っているAIの予想に、あえて踊らされてみたのです。
もしAIの予想が的中すれば、それは間違いなく「プラチナチケット級」の体験となるためです。
というのも、AIが予想した内容は「人気急上昇中のアイドルグループBEYOOOOONDSが、人気メンバー・島倉りかさんの武道館での卒業ライブを控えた大切な時期に、ロックバンドとの完全シークレットでの対バンライブを行うというもの。しかも会場は、メンバーの表情まで見える距離のライブハウス」だったためです。
何を隠そう、筆者はBEYOOOOONDSのオタクであり、島倉りかさんの大ファンです。島倉りかさん在籍中に「もしかしたらライブハウスの至近距離でもう一回公演を見られる」機会があるとは予想もしていませんでした(※AI予想なので当たるとは限らない)。万が一にも当たったならば、こんな機会は二度とないのは間違いありません。
今回は「外れるかもしれない」と分かり切っているAIの予想に完全に踊らされてみた、オタクの筆者の体験記をお届けします。

AIが突然「プラチナチケット級ライブ開催」を予想したワケ

事の発端となったのは、ロックバンド・打首獄門同好会が2025年5月から6月にかけて行う対バンツアー。今回、「ミステリーツアー」として対バン相手が当日まで明かされず、ヒントとなるのは漢字一文字だけでした。
筆者が注目したのは、初日の名古屋公演の「伸」のアーティスト。ネット上では、ヒップホップユニット・Creepy Nutsやシンガーソングライターの久保田利伸さんなどの名前が出ていましたが、5月18日に打首獄門同好会が公式Xで「実は『バンドじゃない』ところが1組、います!」「ついでに言うと『ついに』ってよりは『まさか』側に近い、意外性に振り切った組み合わせです!」とポスト。

BEYOOOOONDSはその名前の通り、「伸びる」が度々キーフレーズとして使われることがありました。そのため、このポストを見て、「もしかしてこの『伸』はBEYOOOOONDSなのではないか……?」と思い始めました。
しかし、筆者が住んでいるのは首都圏で、名古屋に行くにはJR東日本の新幹線からJR東海の新幹線に乗り換える必要があり、お金も時間もかかります。さらにこの公演の前週にBEYOOOOONDSは愛知公演を行っており、「2週連続で名古屋?」「BEYOOOOONDSが出るという確信もないのに?」という葛藤がありました。
・「対バン形式」だが、対バン相手が一組だけ「バンドではない」
・「ついに」というよりは「まさか」に近い
など漢字一文字に加えて、追加ヒントがさまざまに提供されていましたが、ヒントは限られており「誰が出るんだろう」というのを予測するのは困難です。そんな時、ふと頭に浮かんだのが「もしかして、AIならこの限られた情報だけで正確に予想できるのでは?」というものでした。
そこで以下のプロンプトを入力したところ、AIが対バン相手として予想したのが冒頭で述べたBEYOOOOONDSだったのです。
「打首獄門同好会が対バン相手をシークレットにした対バンライブを行います。5月31日公演のゲストアーティストを予想し、その根拠を教えてください。ゲストはこれまで対バンをしたことがないアーティストで、漢字1文字ヒントは『伸』。また、全3公演中1組はバンドではないため、バンドに限らずに予想してください。」

BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)はハロー!プロジェクトのアイドルグループです。「BEYOND」を「OOOOO」で伸ばして、“伸びしろ”を表すグループ名のアイドルであり、なおかつ「びよーん」という語感が「伸」っぽいというのが主な理由でした。
ちなみに次点以降の予想は、バックドロップシンデレラ、UNISON SQUARE GARDENなどのアーティスト。「バンドではない」「まさか」「ついに、という感じはない」という前提条件からすると微妙な予想であり、BEYOOOOONDSがAIにとって最有力の予想のようです。
さらに、BEYOOOOONDSは5月25日に公式Xで何の前触れもなく、「突然ですがここでみなさんに質問です!!BEYOOOOONDSを漢字1文字で表すと!?」と投稿。このポストで打首獄門同好会のシークレットライブとのつながりに気がついたファンが多くいました。
これを踏まえ、打首獄門同好会のシークレットライブの対バン相手にBEYOOOOONDSが出演する確率を計算してもらいました。


AIによると、BEYOOOOONDSがゲストである可能性は75〜80%程度、中央値77%とのことでした。正直、ロックバンドとハロプロアイドルが対バンするというほぼ前例のない試みを高い確率でAIが予想したことに非常に驚きました。
本当にライブが開催されるならプラチナチケット級だったワケ
そもそも、BEYOOOOONDSが所属しているハロー!プロジェクトは、近年ロックフェスに出演することはあっても、「ライブハウスでロックバンドと対バンする」という機会はまずありません。
さらにライブが行われる5月31日は、BEYOOOOONDSが行っていたツアーやイベントがすべて終了したタイミング。次の公演は島倉りかさんが卒業する武道館公演でした。
つまり、もし対バンでBEYOOOOONDSが出演したら、ハロプロのアイドルとして非常に貴重な機会というだけではなく、「これが卒業前の最後……」と思って見納めた島倉りかさんにもう一度会えるというチャンスでもあったのです。
一方、リスク面としては往復約3万円に加え、ほぼ丸一日(移動時間含む)の時間がかかります。またAIに踊らされるだけ踊らされて、期待していたものとは違うライブを見て帰るだけ……というリスクもありました。
それでも筆者は「77%」の確率を信じ、やはり行くことを決意。これからの時代、AIは人間の意思決定をサポートする重要なツールになるでしょう。しかし、最終的な判断と行動は、依然として人間が担う必要があります。AIが提供するのは情報と分析であり、それをどう活用するかは人間次第なのです。チケットと新幹線の切符も確保しました。交通費は往復で3万円強。
もしAIの予想が外れたとしても、
・打首獄門同好会のライブを見られるのはそれはそれで嬉しい!
・名古屋観光もそれはそれで嬉しい!
という心持ちで挑みました。
【結果】AIによるシークレットライブのゲスト予想は当たっていた?
当日、筆者は3時間掛けて名古屋へ。


対バン相手はやはり開演まで分からず、緊張しながら会場へと向かいました。

会場付近は、筆者の体感では9割が打首獄門同好会のファン。しかし、整理番号が後ろの方にはBEYOOOOONDSのグッズTシャツを着用したファンも見かけました。
ちなみに、打首獄門同好会とBEYOOOOONDS以外のグッズを着用した人はいませんでした。BEYOOOOONDSファンの中には心なしか緊張の面持ちの人もいました。きっと筆者も同じ顔をしていたでしょう。
そして開演。結果、登場したのはBEYOOOOONDSでした!
特に印象的だったのは、やはり島倉りかさんのパフォーマンスでした。卒業を控えた彼女の歌声には、特別な感情が込められているように感じられ、「少なくともBEYOOOOONDSの島倉りかさんにとって最後のライブハウス公演だ」と思うと、この瞬間の貴重さが改めて実感されました。
また、BEYOOOOONDSが披露した楽曲『ビタミンME』、『Go Waist』、『きのこたけのこ大戦記』、『ニッポンノD・N・A!』、『アツイ!』に合わせ、打首獄門同好会が「答え合わせ」として『筋肉マイフレンド』、『きのこたけのこ戦争』、『島国DNA』、『BUNBUN SUIBUN』、『なつのうた』を披露してくれるなど、楽曲の親和性が高く、今しか楽しめないセットリストで盛り上がりました。

この経験から得た学び
まず驚かされたのは、AIの予想精度の高さです。77%という確率で予想されたBEYOOOOONDSの出演が実際に的中したことは、AIの分析能力の高さを証明しています。
AIは以下のような要因を総合的に分析していました。
・言語的関連性(「伸」とBEYOOOOONDSの語感の類似性)
・条件適合性(「バンドではない」という制約)
・意外性の度合い(「まさか」という表現との整合性)
・現在の活動状況(人気上昇期、卒業ライブ控え)
・音楽的親和性(ジャンルの違いを超えた可能性)
過去、AIに「情報収集」や「予想」を依頼して、その予想が外れてがっかりした経験をしたことがある方も、この記事をお読みの方の中にもいるかもしれません。しかしそれはAIが情報収集したり、予想するに足る材料を、きちんとプロンプトなどで与えていなかったからなのかもしれません。今回のシークレット対バンはある程度のヒントが事前に示されており、それらをきちんとAIにも提示することで、筆者は正確性が高い予想に基づいて「プラチナチケット級」ライブに行くことができました。
今回のライブでは打首獄門同好会とBEYOOOOONDSに意外なほどに親和性が高いことが分かりましたが、実際、ハロプロのアイドルがロックバンドと対バンするという機会はほとんどなく、今後この組み合わせの対バンは二度と実現しない可能性も十分に高いです。さまざまな要因が偶然重なって実現した、一期一会の体験でした。
もっとも、ある人は「77%なら確実性が高い」と判断して、筆者と同じようにAIの予想を信じて行動するかもしれません。別の人は「23%の失敗リスクは高すぎる」「AIの予想は信頼できない」と判断して行動を控えるかもしれません。
不確実なことに賭けてリターンを得ることそのものはやはり「人間の役割」です。AIが出した魅力的な予測を「怖い」と思うのか「賭けてみよう」と思うかどうかは自分次第ですが、もしかしたらAIの分析に「全力で踊らされる」のは、人間だからこそできる楽しみのひとつなのかもしれません。