かつて「一家に一台」が当たり前だったテレビは、家族団らんの中心であり、情報収集や娯楽の主要な手段として、生活に深く根付いていました。

しかし、インターネットの普及、スマホの進化、そして多種多様なメディアの登場により、テレビの絶対的な地位は変化しました。

総務省「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、2014年度はテレビのリアルタイム視聴時間(平日)の平均が170.6分だった一方、2023年度には135.0分にまで減少しました。
一方、インターネットの利用時間(平日)は2014年度が83.6分だったのに対し、2023年度は194.2分に大幅増加しています。
この記事では、こうした現代における「テレビのない生活」という選択肢に焦点を当て、そのメリットとデメリットを読み解いていきましょう。
データが示す「テレビ離れ」の実態
まず「自宅にテレビはもう不要」という考え方は、SNSや動画配信が定着した現代だからこその価値観だとも言えるでしょう。昨今のテレビ離れの実態をまずは見ていきましょう。
先ほども触れた総務省「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、主なメディアの平均利用時間について、以下の変化が分かります。

つまり、テレビ視聴時間は9年間で約35分減少し、一方でインターネット利用時間は約110分増加していることが分かります。
世代別の動向
総務省「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、10代~30代のメディア利用において、インターネットの利用時間がテレビ系動画の視聴時間を上回っています。
40代〜50代ではインターネットとテレビの利用時間が拮抗していますが、すでにインターネットの利用時間の方が長くなっています。唯一、60代がテレビ視聴時間の方が長いという結果になっています。
つまり、若年層を中心にメディア利用の主役がテレビからインターネットへと移行しているのが現状です。
テレビのない生活を選ぶ若者が増えているのはなぜ?メリットは?
近年、特に一人暮らしや若い世代を中心に「テレビを持たない」生活を選ぶ人が増えています。その背景には、生活スタイルや価値観の変化、そして多様なデジタルデバイスの普及があります。

時間の有効活用と生産性の向上
総務省「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、全年代の平均テレビ視聴時間(平日)は2023年時点で1日約135.0分となっています。
テレビを持たないことで「なんとなくテレビをつけてダラダラ過ごす」時間が減り、その分、自分の趣味や勉強、仕事、家族との時間など、より有意義なことに時間を使えるようになります。テレビを持たないことで、情報の取捨選択を自分で行えるようになり、生活の質や生産性が向上したと感じる人が増えていると言えるでしょう。
経済的・空間的メリット
テレビを持たないことには直接的な経済効果があります。NHK受信料(地上契約で月額1,100円、衛星契約で月額1,950円)の支払い義務がなくなり、テレビ本体の購入費用や電気代も節約できます。年間で考えると、相応の金額となります。
また、物理的にテレビやテレビ台、関連機器が不要になることで、居住空間をより広く、すっきりと使用することができ、掃除の手間も軽減されます。
テレビを持たないことのデメリットは何か?

一方で、テレビを持たないことによるデメリットも存在します。まず、災害時にはテレビがもっとも迅速かつ信頼できる情報源となるため、緊急時の情報収集手段としての役割が失われる点。代わりにスマホに災害速報アプリなどを入れておくことが大切です。
また、テレビが共通の話題となることが多いため、家族や友人との会話で話題に乗り遅れる、流行や最新情報に疎くなるリスクもあります。一方、テレビ番組は民放公式テレビポータル「Tver」で見逃し配信を視聴できる場合もあるので、興味のある番組があった場合にはおすすめです。
現代におけるテレビの継続的な価値とは?
災害時の緊急情報伝達、教育番組、質の高いドキュメンタリー、スポーツ中継など、テレビには依然として重要な役割があります。総務省も、放送の社会的役割として「国民の生命・財産の保護に寄与する災害報道」を重視しています。
とはいえ現代では、テレビ、インターネット、新聞、雑誌、書籍など、多様なメディアが共存しています。それぞれの特性(速報性、詳細性、専門性、信頼性など)を理解し、目的に応じて適切に使い分けることが、バランスの取れた情報収集につながります。
「テレビのある生活」と「テレビのない生活」のどちらを選んだとしても、重要なのは無自覚な習慣に流されるのではなく、意識的に自分にとって価値のあるメディアとの関わり方を構築することです。まずは短期間(1週間程度)の試行を通じて、ご自身の生活にどのような変化が生じるかを体験してみることをお勧めします。
仮に短期間「テレビを一度も視聴しなくても、バランスの取れた情報収集を継続できた」ならば、テレビは破棄対象にしても問題ないかもしれません。この場合、「これまでテレビを見ていた時間を有効活用できる」ことに加えて、NHK受信料を払わなくても良くなるというメリットがお財布にとって嬉しいものとなるでしょう。
※サムネイル画像(Image:「photoAC」より)