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スターリンク衛星は多すぎる?衛星同士の衝突や「衛星放送への干渉」のリスクとは

SpaceX社が推進する衛星インターネット計画「スターリンク」。日本でもすでに個人向けサービスが提供されているほか、auでは「au Starlink Direct」という、スマホとスターリンク衛星との直接通信サービスも提供しています。

今後もスターリンクのサービスは拡大していくと予想される一方で、宇宙空間に不可逆的な変化を生みつつあります。宇宙空間そのものの持続可能な利用を脅かす深刻なリスクをはらんでいるとも言えるでしょう。

今回は急増する民間企業による衛星利用と、そのリスクについて解説します。

スターリンク衛星は多すぎる?

スターリンク衛星は多すぎる?1
(画像はスマホライフPLUS編集部作成)
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まずスターリンク(Starlink)計画とは、SpaceX社が主導する、地球上のあらゆる場所に高速かつ低遅延のインターネット接続を提供することを目的とした巨大プロジェクトです。この計画の核心は「衛星コンステレーション」と呼ばれる概念にあります。これは、単一の高性能な衛星ではなく、低軌道に配置された多数の小型衛星を連携させて一つのシステムとして機能させる考え方です。

スターリンク衛星は多すぎる?2
(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

驚異的なのは、スターリンク衛星の「数の多さ」。Starlinkの公式情報によると、2025年2月時点ですでに6,750基以上の衛星が軌道上で運用されています(Starlink Updates)。これは現在活動中の全人工衛星の半数以上を占める驚異的な数と言えます。

この数は今後も増え続ける見込み。なお、初期計画では約12,000基の配備を目指しており、さらに追加で30,000基、最終的には最大で42,000基もの衛星打ち上げが計画されているとも言われています。

この計画により、これまでインターネットアクセスが困難だった山間部や離島、インフラが未整備な発展途上国でもネット通信が可能となり、教育や経済活動の機会がその分増えるでしょう。また、地震や台風といった自然災害で地上の通信網が寸断された際にもインフラに依存しない強靭な通信手段として、人命救助や復旧活動に役立つことが期待されています。

一方で、これだけ無数の低軌道衛星が地球の周り、それもごく近くに存在する「デメリット」は本当にないのでしょうか?

低軌道(LEO)の過密化と衝突事故のリスク

本記事では便宜上、スターリンク衛星を主に題材としていますが、実際には民間発の低軌道衛星はスターリンク以外にも急増しています。たとえば中国企業の間ではスターリンクに対抗する低軌道衛星の開発が本格化しており、中国の低軌道衛星も今後宇宙空間に急増するでしょう。

スターリンクをはじめとする衛星コンステレーション計画の多くが、なぜ「低軌道(LEO)」を目指すのでしょうか。それは、地上との距離が近いことで通信遅延が少なく、高速通信に適しているためです。しかし、その利便性の裏返しとして、この限られた空間は今や「宇宙の交通渋滞」と呼ぶべき過密状態に陥っています。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局が2023年6月に発表した「宇宙輸送を取り巻く環境認識と将来像」によると、年間打ち上げ衛星数は過去10年間で約11倍に急増。その増加分の多くがスターリンクに代表される商業衛星です。

衛星数が急増すると、単純に衝突の確率が上昇します。衝突相手は、他の活動中の衛星だけでなく、制御不能となったスペースデブリも含まれます。さらに言えば、衛星の衝突事故が発生すると、宇宙空間に無数のスペースデブリが新たに放出されることになります。それらの宇宙ゴミは回収も非常に困難。そのため、衛星の衝突事故の発生は、今後打ち上げられる衛星の軌道環境も悪化させることになります。

こうした状態が続くと、「ケスラーシンドローム」と呼ばれるドミノ倒しのような破滅的な連鎖が発生することを懸念する声もあります。これはある臨界点を超えると宇宙空間で衛星同士の衝突やデブリ同士の衝突が多発するようになり、最終的には特定の軌道が、無数の高速で飛び交うデブリによって覆われ、事実上使用不能になる可能性があります。

低軌道(LEO)の過密化と衝突事故のリスク1
(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

スターリンクは将来的に数万機規模の巨大コンステレーションへと発展するでしょう。また中国の例を述べた通り、スターリンク以外の衛星プロジェクトもさらに進展すると思われます。これらは軌道上に「質量の集中」をもたらすため、この連鎖反応の引き金となり得る存在です。

もし一度でも大規模な衝突事故が起これば、その影響はスターリンク計画だけに留まらず、気象予報、GPS、安全保障など、私たちの生活を支える他の全ての宇宙システムを麻痺させ、人類全体の宇宙開発を長期間にわたって停滞させる未曾有の事態に発展しかねません。

電波干渉について【衛星放送・通信インフラへの影響】

もう一つの深刻なリスクが「干渉」です。スターリンク衛星がサービスに用いる電波の周波数帯は、既存の通信インフラ、特に静止軌道を利用する衛星放送(BS/CS)などが使用する帯域と近接しています。数千、数万の衛星が地上に向けて電波を放射することで、既存のサービスの電波と混信し、通信品質の低下や障害を引き起こす可能性が指摘されています。

もっともスターリンクは他の通信システムへの干渉を最小限に抑えるため、電波ビームの指向性を精密に制御する技術などを採用しています。また各国の規制当局もこうした干渉リスクを認識しており、他のシステムを保護するためのさまざまな技術的条件を付けてスターリンクの運用を認可しています。

とはいえ空の交通には厳格な航空管制システムがありますが、宇宙空間には「空の交通に匹敵するレベル」の法的拘束力を持つ国際的な枠組みがあるかと言えば、まだまだ十分ではありません。衛星数が現在の数倍、数十倍となる数万機の規模に達したとき、本当にこれらのリスクを制御できるのか、実効性を疑問視する声が上がっているのもまた現状です。

限られた公共資源としての宇宙

数万、数十万規模の衛星が低軌道に配置される未来は確実に到来します。地球の周囲の低軌道が衛星に埋め尽くされる未来はすぐ、そこにあるのです。

そのため「限られた公共資源である宇宙を、人類はどのように賢く、公平に、そして持続的に利用していくべきか」という問いと向き合うべきときが来ていると言えるでしょう。

そして全人類に通信の恩恵をもたらす技術革新はある程度のリスクを許容してでも推進すべきという考え方には一理あり、スターリンクがもたらした通信インフラの革新は偉大な成果でもあります。

一方で宇宙は全人類の公共財でもあり、一企業の商業活動が、天文学や既存インフラといった公共の利益を損なってはならないのも事実でしょう。ましてや不完全な衛星技術に基づいて打ち上げられた、民間の衛星が巨大なスペースデブリと化して軌道を永遠に利用不可にすることもあってはいけません。

衛星技術が「通信インフラ」となりつつある現代だからこそ、もしかしたら従来よりも厳しい「民間の宇宙利用」への規制も論じられるタイミングが来つつあるのかもしれません。

※サムネイル画像は(Image:​「Wikipedia」より引用)

スマホライフPLUS編集部

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