
長年多くのユーザーに愛用されてきた日本語入力システム「ATOK」が、大きな転換点を迎えます。株式会社ジャストシステムは2025年11月25日、「ATOK Passport」のプランを「ATOK Passport [プレミアム]」に一本化することを発表しました。
それに伴い、月額330円で提供されていた『ATOK for Windows 月額版』『ATOK for Mac 月額版』の単体サービスは、2026年1月31日で終了することが発表されました。本記事では、この変更の詳細と、今後もATOKを使い続けるための方法、そしてこれを機に他の日本語入力システム(IME)を検討するユーザーのための代替候補について詳しく解説します。
ATOK Passportの刷新について
先述した通り、ジャストシステムは11月25日、月額330円だった「ATOK Passport[ベーシック]」などの廃止を発表。これにより、ベーシックプランを利用していたユーザーは月額660円の「ATOK Passport[プレミアム]」に強制的に移行することになります。

つまり、これまで低価格帯のプランを利用してきたユーザーにとっては、事実上、月額料金が2倍となる値上げです。
一方で、今回の刷新は単なる値上げだけでなく、機能面では大幅な強化も予定されています。

2026年2月には、新しい「ATOK for Windows」が提供開始され、生成AIを活用した文章作成アシスタント「ATOK MiRA(エイトック ミラ)」が搭載予定。ユーザーの入力傾向を学習しながら、推敲や要約、書き換えなどを支援する“AIライティング”機能が利用できるようになるとされています。
また、Arm版Windows 11へのネイティブ対応により、Snapdragon搭載PCなどでも快適に動作するようになり、Unicode 17.0の絵文字対応や口語的文体への最適化なども予定されています。
とはいえ、これまで「そこまでの高機能を求めていない」「月額330円の価格内の機能で十分だった」というユーザーにとっては、値上げのインパクトのほうが大きかったと言えるでしょう。
そもそもなぜ「ATOK」は使われ続けてきたのか?
ATOKは、日本語IMEの世界では「古株」ですが、その歴史の長さ以上に評価されてきたのが、日本語入力の精度と表現力の高さです。Windows標準のMicrosoft IMEやGoogle日本語入力が一般的になる以前から、ATOKは「有料だが変換が賢いIME」として知られてきました。
特にライターや編集者、ビジネスユーザーから高く支持されてきた存在です。単語単位の変換精度だけでなく、文脈を踏まえた自然な候補の提示や、敬語表現・ら抜き言葉などの誤用を指摘してくれる文章校正機能は、業務用途での安心感につながっています。

また、ATOKは豊富な辞書と専門用語への対応でも優位性を築いてきました。一般的な日常語だけでなく、固有名詞や業界用語、スポーツ選手名などに強いという評価が多く、特に日本語での長文執筆や専門的な文書作成を日常的に行うユーザーにとっては、誤変換や語彙不足によるストレスを減らせる点が大きな魅力です。 さらに、キーカスタマイズや変換挙動の細かい調整など、入力スタイルに合わせてチューニングしやすい点も、長年使い続けるヘビーユーザーを生んできました。
最近では、無料で使えるMicrosoft IMEやGoogle日本語入力の精度も向上し、「ATOKは不要では?」という議論も見られますが、それでもATOKを選ぶユーザーは「文法チェックを含む総合的な書きやすさ」「細かいニュアンスまで含めた日本語表現のしやすさ」を重視しているケースが多いようです。 無料IMEが“十分に使えるレベル”に達した今でも、ビジネス文書や校正済み原稿のようにミスが許されない場面では、ATOKならではの安心感が評価され続けていると言えるでしょう。
Google日本語入力はATOKの代替IMEになり得る?
こうした状況を受け、「このままATOKを契約し続けるべきか」「ATOKの代わりに無料IMEへ乗り換えるべきか」と迷う人も増えています。その代表的な選択肢が、Google日本語入力です。

Google日本語入力は、WindowsだけでなくmacOSにも対応し、無料かつマルチプラットフォームで使えるIMEとして広く普及しています。 Google検索の膨大なデータを元に最新の流行語や固有名詞への対応が早いこと、インターネット用語やアニメ・ゲーム関連の単語に強いことなどが特徴です。
変換精度については、ATOKとGoogle日本語入力を比較した検証記事もあり、テスト内容によっては大きな差が出ないケースも報告されています。つまり、一般的な単語変換や日常的なチャット、SNS用途であれば、Google日本語入力は十分に「ATOK代わり」として機能するでしょう。
特に、無料で導入でき、アップデートも自動で行われることから、「有料サブスクを払ってまでATOKを維持するほどではない」というライトユーザーや個人利用のユーザーには魅力的な選択肢です。
一方で、Google日本語入力には、ATOKのような本格的な文章校正機能や、表記ゆれ・敬語の誤用を積極的に指摘してくれる機能はほとんどありません。 また、変換候補が口語寄りになりやすく、堅めのビジネス文書を書きたいユーザーには違和感を覚える場面もあります。 さらに、近年は目立った新機能追加が少なく、開発ペースを懸念するユーザーの声もあります。今後の拡張性という点では、生成AIを統合しようとしている新生ATOKのほうが積極的と言えるかもしれません。
総じて言えば、コストを抑えたい個人ユーザーや、主にカジュアルな文章を中心に入力する人にとっては、Google日本語入力は十分にATOKの代替IMEになり得ます。一方で、誤用を避けたいビジネス文書や、文章そのものの質にこだわるライティング業務では、依然としてATOKならではの強みがあり、完全な置き換えにはならないというのが実情です。
ATOKを利用し続けるには?
今後もATOKの高品質な日本語入力を使い続けたいと考えるユーザーは、新たに「ATOK Passport [プレミアム]」を契約する必要があります。
なお、ベーシックプランを利用している場合はプレミアムプランに自動移行されます。一方、「ATOK for Windows/ATOK for Mac」や「ATOK for Android」をGoogle Playで定期購入している場合はプレミアムプランの契約手続きを行う必要があります。

契約はATOK公式サイト上から行えます。月額プランと年間プランの2プランを選ぶことができます。
※サムネイル画像は(Image: ジャストシステム公式サイトより引用)




