かつていわゆるまとめサイトの中でも、大きな存在感を放っていた「2chまとめサイト」。しかし、近年では「2chまとめ」を見る機会が減った方は多いのでは? それどころか、匿名掲示板としての「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」を見る機会自体も減っている方も多いでしょう。
この背景には、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の大規模な再編などが影響しています。すると2chに代表される「匿名掲示板」はすでに時代遅れの文化なのでしょうか? 今回は2ch再編の現状などについて解説します。
2ch再編の現状
1999年に開設された国内最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」。00年代には2ちゃんねるへの書き込みを基にした「電車男」が記録的なヒットとなり、映画化やドラマ化がされたことでも有名です。そんな2ちゃんねるは2014年に運営をめぐる紛争が発生。現状は大きく分けて「5ch.net」「2ch.sc」へと、サイトが分裂した状態です。
5ch.net(旧2ch.net)は、ジム・ワトキンス氏が運営権を引き継いだ後、2017年に名称を変更したものです。
一方、2ch.scは、2ちゃんねるの創設者である西村博之氏が新たに立ち上げたサイトです。そして2ch.scは5ch.netとはあくまで別物のサイトですが、5ch.netに対する投稿が2ch.scにもコピーされています。
そのため5ch.netに誹謗中傷の投稿が行われた場合、5ch.netと2ch.scに対してそれぞれ異なる方法で削除依頼を行う必要があります。
余談ですが、いわゆる2ちゃんねる(現5ちゃんねる)と縁が深いサイトとしては、これとは別におーぷん2ちゃんねる(2012年開設)と、Talk(2023年開設)も存在しています。総じて国内向けの匿名掲示板は、2ちゃんねるの全盛期と比較して「分裂が進みすぎ、ユーザーも分散した」状態だと言えます。
5chまとめサイトは登録制に
先に述べたように2ちゃんねる(現5ちゃんねる)は大きく分裂したのが現状です。加えて5chまとめサイトが「登録制」になったことも、2chまとめをめぐる現状としては大きな変化です。
5ch.netは無断転載を禁止しており、まとめサイトは許可制となっています。老舗のまとめサイトは継続運営しているケースも非常に多いものの、新しいサイトが作りづらい状態にある可能性があります。
なお、ひろゆき氏が手掛ける「2ch.sc」は、転載が許可されています。目立ったルールは「転載時には2ch.scにリンク貼ってね」「対価を受け取る形でのログの転売行為は禁止です。負荷が掛かるので、事前相談のないクローリングも禁止です」というもの。
良くも悪くも2ch.scのまとめサイトは管理人のモラルに一任されているところがあると言えるでしょう。まとめサイトは2ch時代からある文化ですが、二つに分裂した上、転載の方針がまったく異なるいま、どちらの言い分に則り、サイトを運営すべきか判断が付きづらいのが現状だと言えるでしょう。
5chの強い書き込み規制は常態化
先にも述べた通り、従来の2ちゃんねるは「5ch.net」と「2ch.sc」に分裂しています。このうち、従来の2ch.netのドメインを引き継いだ立場にあるのは「5ch.net」です。2017年の「5ちゃんねる」への名称変更時には、犬のキャラクターが「2」の文字を蹴って「5」に置き換えるアニメーションがトップページに表示されたことも話題になりました。つまり2ちゃんねるの直接的な後継は「5ch」に当たります。
そんな5chでは昨今、書き込み規制が極めて強化されています。専用ブラウザ以外からの書き込みは高確率で弾かれてしまうといってもいいでしょう。ちなみに筆者自身も書き込み規制の対象であり、Chromeから書き込みをしようと試みて、エラーが出てしまい、書き込みができなかった経験が多数あります。
つまり書き込み数自体も減少傾向にあります。たとえばまとめサイトの運営側にとっては、従来と比較して良質なまとめを作りづらい一面もあるでしょう。
主要専用ブラウザの対応掲示板は「Talk」が主流に
実は専用ブラウザ側も5chに非対応というケースが増えており、総じて5chは非常に書き込みがしにくくなっている現状があります。専用ブラウザ側は5chに非対応となる代わりに、新しく誕生した匿名掲示板「Talk」に軸足を移す傾向が強まっています。
2023年7月、5ちゃんねるの専用ブラウザJane Styleが突如Talkの専用ブラウザに変更されるという異例の形で開設されたTalk。「5ちゃんねる史上最大のクーデター事件」とも呼ばれていますが、専ブラがTalk専用になった以上、Talkを主戦場に移したネットユーザーも少なくありません。
2024年12月現在、TalkはJane Style、twinkle、2chGear、ChMate、mae2ch、Sikiなどで閲覧・投稿が可能です。
「匿名掲示板」へのニーズは変わらず大きい
2ch及び5chの再編などをきっかけに「2chまとめ」を見る機会が減り、なおかつ「匿名掲示板」の利用機会自体も減った方は多いのでは?
このように書くと、InstagramやTikTokなどSNSの台頭も踏まえ「匿名掲示板」はすでに時代遅れの存在だと感じる方は少なくないでしょう。しかし、海外では「匿名掲示板」の人気自体は衰えていません。その典型的な例が「Reddit」です。
Redditはアメリカで創設された掲示板で、2024年5月にはOpenAIと戦略的提携を発表し、AIの学習データを提供することが明らかになっています。12月にはRedditが掲示板上の話題を検索・要約などが可能なチャットAIを発表するなど、AIの活用で注目を集めて株価も上昇傾向にあります。
その一方で日本の5chそのものは難しい状態に置かれており、代替となる匿名掲示板も十分には育っていないのが現状。とはいえ、実は意外とまだ「匿名掲示板」には国内でも需要があり、代替のプラットフォームが登場する余地があるかもしれません。
※サムネイル画像は(Image:「2ch.sc」より引用)