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CDよりも音質が良い「DVD-Audio」がいまひとつ流行らなかった3つの理由

1982年にCDが記録媒体として市場に登場してから、40年以上が経過しました。1つの記録媒体が40年に渡って、一線級の媒体として定着し続けているのは驚異的なことです。

ではこの40年の間に、CDに変わる媒体が市場に定着する可能性はなかったのでしょうか?

実は1999年には、CDを超える高音質フォーマットとして「DVD-Audio」が登場しています。理論上はCDをはるかに超える音質を実現できる革新的な規格として期待を集めていましたが、結果的に広く普及することはありませんでした。今回はその背景にあるいくつかの重要な理由をご紹介します。

「普通のDVDプレーヤーで再生できるか」が極めて分かりづらい

「普通のDVDプレーヤーで再生できるか」が極めて分かりづらい1
(画像は筆者作成)
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DVD-Audioが広まらなかった最大の理由のひとつは「通常のDVDプレーヤーで再生可能かどうか」が、いまひとつ不明確だったことです。

まず基本的に、DVD-Audioは「DVD-Audioに対応したプレーヤーで再生する」ことが可能です。一方でDVD-Audio対応と謳う作品にも、厳密にはDVD-Video層にも音を収録しているケースがありました。こうした作品の場合、DVD-Audioに対応していない普通のDVDプレーヤーでも再生可能でした。

もっとも、そのような細かな仕様は一般のリスナーには伝わりづらい側面が強かった面も否めません。

なお、DVD-Audioや後述するSACDの普及が少しずつ始まった00年代前半は、DVDの再生機器の定番は「PlayStation 2」でした。

DVD-AudioやSACDがPlayStation 2で気軽に再生可能な「CDの次世代規格」として登場していたら、CDの歴史は大きく変わっていたかもしれません。

SACDが同時期に登場した

SACDが同時期に登場した1
(画像は筆者作成)

DVD-Audioの普及を妨げたもう1つの重要な要因は、同時期に登場したSACD(Super Audio CD)との競合です。SACDはソニーとフィリップスによって開発された高音質フォーマットで、DVD-Audioと同様に高音質を売りにしていました。

しかし、SACDは安価な再生機器の登場に時間を要し、なおかつ音質にさほどこだわりのない人にとっては音質の違いがいまひとつ感じられない製品でもありました。そのためDVD-Audioと同様にこちらも市場に浸透せず、存在感が薄くなっていきました。

SACDとDVD-Audioがともに市場に浸透しなかったことからうかがい知れるポイントは、実は「高音質」はニッチな市場である感が否めないということです。

そもそもニッチな「高音質」という市場を、ほぼ同時期に登場したSACDとDVD-Audioの2つが市場を分け合う状態が生まれてしまい、どちらの記録媒体も支持を集めることはできなかったと言えるでしょう。

着うたが普及する反面、CDバブルの崩壊が始まる

DVD-Audioが登場した時期から間もなく、携帯電話向けの「着うた」サービスが急速に普及し始め、音楽の消費形態が大きく変化し始めました。

加えてCDの売上は1998年にピークを迎えた後は徐々に減少に転じます。つまりDVD-AudioやSACDはいわゆる「CDバブル」の崩壊が始まったタイミングに、市場に登場したと言えます。

着うたが普及する反面でCDの売上が下降していることからは「音楽を手軽に楽しみたい」という需要がうかがい知れます。音楽の視聴環境やそもそもの需要が移り変わる中、高音質を売りにするDVD-Audioは、消費者のニーズとミスマッチを起こしていました。DVD-Audioは手軽に扱えるどころか、どの再生機器で聴けるのか自体が分かりづらい感が否めなかったためです。

本稿の前半でも述べましたが、DVD-AudioがPlayStation 2で高音質かつ気軽に再生できる媒体であったならば市場からの受け入れられ具合はもう少し違ったかもしれません。

CDよりも高音質な「次世代規格」はニーズが小さい?

DVD-Audioが普及しなかった根本的な理由として、CDよりも高音質な「次世代規格」自体へのニーズが小さかった可能性も挙げられます。

CDの登場から40年が経過してもなおCDに一定の需要があることから分かる通り、多くの一般消費者にとって、CDは「媒体自体が低音質である」とは言えないものです。一般的に音楽を楽しむには、CDは十分に高音質な記憶媒体です。

さらに、音楽の聴き方が変化し、携帯性や利便性が重視されるようになると、高音質よりも手軽さが求められるようになりました。着うたが流行りだした00年代にはすでに、DVD-Audioの提供する高音質という特徴は、多くの消費者にとって魅力的な付加価値とはならなかったと言えます。

こうした00年代以降の流れは、2024年現在でもあまり大きくは変わっていないとも言えるでしょう。CD以上の高音質を求める音楽リスナーの関心は「CDの次世代規格」ではなく、ハイレゾ音源か、アナログレコードへと移り変わっているのではないでしょうか。

CDよりも高音質な「次世代規格」はニーズが小さい?1
(画像は「photoAC」より)

CDの次世代規格が、CDの登場から40年が経過しても登場していないのは「CDの次世代規格は不要であるから」なのかもしれません。

※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)

スマホライフPLUS編集部

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