Windowsの標準ブラウザと言えば「Microsoft Edge」に加え、2022年にサポートが終了した「Internet Explorer」を思い浮かべる方が多いでしょう。
特に圧倒的なブラウザシェアを獲得したのは、Internet Explorer。Internet Explorerの長い歴史でも、たとえば2001年リリースの「IE6」は特に長く愛されたバージョンのひとつ。2004年には8割以上のシェアを誇るなど、多くの人に使用されていました。
しかし今日、IEの後継ブラウザであるMicrosoft Edgeは全世界で5%~6%前後のシェア獲得に留まっていると見られます。かつては8割のシェアを誇ったブラウザの後継が5~6%のシェアに留まっているのは、シェアの数値としては物足りない感も強いです。
では、「Microsoft Edge」が全盛期のInternet Explorerほど人気がない理由は何なのでしょうか?
登場時点(2015年)で競合ブラウザがすでに確立していた
まずMicrosoft Edgeの登場(2015年)の時点で、競合となるウェブブラウザがすでに確立していたことが挙げられます。十分な性能・機能を備えたブラウザが登場済みな一方で、Edgeが「ブラウザを乗り換えるほどの魅力をアピールできなかった」と言えるでしょう。
たとえば2015年の時点では、Google Chromeがウェブブラウザのシェアの45%を占めています。その他のシェアをSafariやFirefoxが分け合っている状態。
Internet Explorerへの悪印象が尾を引く側面も
なお2015年時点で、Internet Explorerのシェアは10%前後でした。Internet Explorerの全盛期(2004年頃)と比べ、2015年時点ではすでに「Windows標準ブラウザ」自体が支持を失っている感も否めません。
OSの標準ブラウザながら、Internet Explorerが支持を失った理由は多岐にわたります。
たとえばセキュリティの脆弱性や動作の遅さなどの問題で、多くのユーザーから不評を買っていました。加えてIEは「CSSの解釈が他のブラウザと著しく異なる」という理由でWeb開発者からも嫌われたブラウザ。他のブラウザでは正しく表示されるコンテンツも、IEだけは表示が乱れてしまうことは珍しくありませんでした。
こうした問題点への対策としてGoogle ChromeやSafariにシフトした個人ユーザーや法人にとっては、Microsoft Edgeが登場しても「Microsoft製品を再度導入する理由」が薄い側面もあったと考えられます。その影響は今日まで尾を引いていると考えられるでしょう。
Microsoft製品がモバイル市場で存在感を発揮できていない
Microsoft製品がモバイル市場で存在感を発揮できていないことも、ブラウザとしてのMicrosoft Edgeの存在感のなさに繋がっている可能性があります。
ブラウザと言えば「PC向けブラウザ」を想像する方も多いでしょう。しかし実際にはインターネットに接続するデバイスの主戦場は、スマホなどモバイル端末に移り変わっているのも事実であるためです。
2024年9月時点で、モバイルのブラウザのシェアはSafariが47.79%で、Chromeが45.55%。つまり、モバイル市場におけるブラウザシェアはMicrosoft以外の製品が占めています。
「Microsoft Edgeでなければできないこと」が少ない
Microsoft Edgeは、Microsoftの検索エンジンである「Bing」に積極的なAI機能が搭載された際に同機能を使用しやすいブラウザとして一時的に脚光を浴びました。右上のBingアイコンをクリックするとAIの検索画面が開きます。
しかし、2024年12月現在、Microsoftが提供するAI機能は「Copilot」の名称の下、WindowsのOS自体への統合が進んでいます。良くも悪くも今後は、EdgeでなくともCopilotをOS標準機能として使えるようにアップデートが進むでしょう。
こうしたAI機能を除くと、Microsoft Edgeには「Windowsの標準ブラウザ」であること以外の特徴が良くも悪くも少ないです。Microsoft EdgeはChromiumベースのブラウザとして開発されたことで、IEのレガシーからは脱却できたものの「強み」もまた目立たないブラウザと言えるかもしれません。
GoogleやMicrosoft以外が手掛けるブラウザの台頭も目立つ
Microsoft Edgeは「IEからの脱却こそ果たしたものの、モバイル市場での存在感が薄い」のが現状です。加えてEdgeの特徴でもあるCopilot機能に関しては、OSそのものへの統合が進んでいるのが現状です。
するとMicrosoft Edgeが獲得できるブラウザ需要は、良くも悪くも「ニッチなもの」かもしれません。しかしそのニッチ市場でも個性的なブラウザが登場済みで、ユーザーの支持を集めているのも事実です。
いくつかそうしたニッチな需要にも対応している、個性的なブラウザの例もご紹介します。
Brave
プライバシー重視のアプローチで注目を集めているのが「Brave」です。広告ブロック機能や暗号資産との連携などで若いユーザーを中心に支持を広げています。
Arc
Arcは、タブ管理や作業空間の整理など、新しいインターフェースで話題を呼んでいます。また、AIを活用した機能も積極的に取り入れており、生産性を重視するユーザーから注目を集めています。
こうした個性的なブラウザも、いわば草の根的に支持を広げています。そのため、Internet Explorerの全盛期と比べると、今日ではブラウザの選択肢が圧倒的に増えているのが現状です。
Microsoft Edgeには「Windowsの標準ブラウザ」という強みは間違いなく存在し、たとえば法人利用の需要は今後も存在し続けるでしょう。一方でかつてのInternet Explorerほどの人気を獲得するのは、モバイル市場での存在感のなさなどを踏まえても一筋縄ではいかないことかもしれません。
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