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今さら聞けないAI半導体「エヌビディア」は何がスゴい? Intelと何が違う?

2024年に一時、時価総額世界1位に躍り出た「エヌビディア」は生成AI向け半導体で90%のシェアを握る企業です。もっとも一般ユーザーにもなじみ深いGoogleやAmazonといった企業に比べ、エヌビディアは「何の企業なのか分かりづらい」側面もやや否めません。最近まで、エヌビディアという企業名を聞いたことすらなかったという方もいるのでは?

またエヌビディア以外にも、国内外に有力な半導体メーカーが多数存在していることも事実です。では、なぜエヌビディアがAI半導体として圧倒的なシェアを獲得しているのでしょうか?今回は今更聞けない「エヌビディアは何が凄いのか」を解説します。

エヌビディアは何が凄い?

端的に言えば、2025年1月現在におけるエヌビディアの凄さは「生成AI向け半導体のデファクトスタンダードとして揺るぐことのない地位を築いている」ことです。

エヌビディアは何が凄い?1
(画像は筆者作成)
この記事の画像(4枚)

多数の半導体メーカーが市場に存在する中でも、生成AI向け半導体としてエヌビディアが圧倒的シェアを獲得している理由には「先行者利益」と「CUDA」の存在が挙げられます。

先行者利益と顧客からの信頼の厚さ

エヌビディアは1993年の設立以来、一貫してGPU(Graphics Processing Unit)の開発に注力してきました。ちなみに設立当初はゲーム用のグラフィックス処理が主な用途でした。

そんなエヌビディアが2006年に発表したのが、GPU向けの開発環境「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」。GPUの性能を最大限に引き出すためのアーキテクチャであり、2010年代初頭にはディープラーニングの研究・開発におけるGPUの実用性に脚光が当たると同時に、その性能を引き出すものとして「CUDA」に注目が一気に集まります。

ちなみにCUDAは2006年以降、今日に至るまでたびたびバージョンアップが行われていますが後方互換性も高い点も1つの特徴です。

CUDAはエヌビディアが長期間提供しており、その間、APIの仕様はほとんど変更されていません。つまり安定した動作を維持しているため開発者は過去に作成したコードを容易に再利用できる環境が整っています。

過去のコード資産を極めて長期にわたって運用しやすく、開発者にとってはエヌビディア以外のGPUおよび開発環境を使うのは「バグのリスク」「過去のコード資産を活用できなくなる」などの理由から億劫なことであるのも間違いありません。

「GPU」と「CUDA」の組み合わせ

前述の通り、エヌビディアの最大の強みは、もともと開発していたGPUと、それを最大限に活用できるCUDA(Compute Unified Device Architecture)という開発環境の組み合わせにあります。CUDAを使用することで、プログラマーはC言語やC++に基づいた拡張プログラミング言語を用いてGPUを直接制御し、複雑な計算やデータ処理を高速に実行することが可能に。AIの学習に必要な大量の演算を効率的に処理できます。

「GPU」と「CUDA」の組み合わせ1
(画像は筆者作成)

CUDAの仕組みは、データを多数のスレッドに分散し、これらのスレッドを一斉に実行することで膨大な計算を高速に処理するというもの。CUDAは主要な深層学習フレームワークとの相性も良く、早くからディープラーニングの研究に積極的に用いられ、AIモデルのトレーニングや推論の高速化に貢献してきました。

CUDAの利用分野は多岐にわたり、科学技術計算、機械学習、ビッグデータ解析、画像・動画処理など、さまざまな領域で活用されています。

半導体そのものに加え、こうした「開発環境」をセットで提供していることはエヌビディアの大きな強みです。エヌビディアの製品から乗り換えることは「半導体」「開発環境」の両面を切り替えることを意味するためです。

総じて半導体そのものでもエヌビディアは注目されていますが、その裏にある「開発環境」の安定性や実績、過去のコード資産を生かしやすい後方互換性等が実は代えがたい「強み」や「凄さ」を生み出していると言えるのではないでしょうか。

Intelとエヌビディアの違いは何?

Intelとエヌビディアの違いは何?1
(ロゴは各公式サイトより引用)

冒頭でも書いた通り、エヌビディアは半導体メーカーです。すると国内外には他にも多数の有力な半導体メーカーが存在し、その代表格にはIntelが挙げられます。ではエヌビディアとIntelは何が違うのでしょうか?

主な製品および製造体制

まず大きな違いは「主な製品」と「製造体制」の違いです。エヌビディアは主にGPUを中心に展開しており、特にゲームやAI、データセンター向けの高性能なグラフィックス処理に特化しています。またエヌビディアにはファブレス企業という特徴があり、製造は外部のファウンドリに委託しています。これにより、設計と開発に集中できる利点があります。

一方、Intelは中央処理装置(CPU)を中心に、サーバー、PC、IoTデバイス向けの幅広い半導体製品を提供。また自社で半導体を製造するファウンドリを持ち、製造から販売までを一貫しておこなっています。

開発環境としての「CUDA」の有無

Intelは不振の事業ではありますが、GPU事業を手掛けてもいます。つまりGPUを市場に提供しているのは、エヌビディア「だけ」ではないということです。なお、同様にAMDもGPUを手掛けています。

しかしIntelやAMDのGPUでは「CUDA」を実行することは、基本的にはできません。そして「CUDA」がGPUを直接制御するためのアーキテクチャとしてデファクトスタンダードであり、長年の歴史があり、動作も安定していることは前述した通りです。

そのためIntelやAMDのGPUで、CUDAを実行するためのソフトウェア「ZLUDA」がGitHubに公開されるなど「他社GPUでもCUDAを利用したい」というニーズが存在しているほどです。しかしZLUDAはたびたびGitHubからリポジトリが削除され、しばらく間をおいて復活するということを繰り返しているソフトウェアです。少なくとも法人利用の場合、リポジトリが安定して公開されていないソフトウェアを使うことはやはり難しく「エヌビディア以外の製品を使う理由が薄い」と言えるでしょう。

市場の変化への対応

エヌビディアとIntelの違いは、市場の変化への対応にも表れています。エヌビディアはAIブームを的確に捉え、GPUをAI処理に最適化することで急成長を遂げました。過去5年間で企業価値を4倍に増加させ、売上高も毎年20%以上のペースで伸ばしています。

一方、Intelは長年CPUに注力してきたため、AI市場の急成長に対応が遅れ、業績が伸び悩んでいます。この違いが、両社の現在の市場価値の差となって表れています。

ソフトバンクG「アーム」とエヌビディアの違いは?

ソフトバンクG「アーム」とエヌビディアの違いは?1
(画像は「ソフトバンク」公式サイトより引用)

半導体に関連する企業としては、国内ではソフトバンクグループの「Arm(アーム)」も有名です。2022年6月にはスマホやタブレットに「究極のゲーム体験を提供する」と謳った新フラグシップGPU「Immortalis GPU」を発表しています。

また従来はIoT事業で有力視とされていたアームですが、近年はAIのイノベーション促進を重視する方針も打ち出しています。

最もアームは「データセンター向けGPU」の分野ではエヌビディアと争わないという方針も掲げています。アームのAI半導体に関する取り組みはまだまだ始まったばかりであり、データセンター向けGPU以外の市場でどのように存在感を示していくのかは「まだ未知数の部分が大きい」と言えるでしょう。

エヌビディア最大の強みはCUDAを中心とする「開発環境」

本稿で繰り返し述べてきた通り、エヌビディアの最大の強みは、GPU+CUDAの組み合わせにあります。この充実した開発環境が、エヌビディアのAI市場における圧倒的な優位性を支えており、競合他社が容易に追随できない要因となっています。

Intelやアームなど有力な半導体企業は他にも多数存在するものの、少なくともデータセンター向けGPUでエヌビディアが築いた競争優位性を崩すのは他社にとって容易なことではありません。

「全く新たなAI向け半導体の登場」など強烈なイノベーションが起きない限りは、エヌビディアの存在感はそう簡単には小さくならないでしょう。GAFAと同等か、それ以上の存在感がある企業として当面、しばらくはエヌビディアにも注目が集まり続けるでしょう。

※サムネイル画像(Image:gguy / Shutterstock.com)

スマホライフPLUS編集部

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