かつて、ガラケーやカーナビに当たり前のように搭載されていた「ワンセグ」機能。電車の中や外出先、移動中の車内でも手軽にテレビが見られる便利な機能でしたが、最近の機種ではほとんど見かけなくなりました。

実は、ワンセグが消えた背景には、単なる技術の進化だけでなく、NHK受信料をめぐる「お金」と「法律」の事情が深く関わっています。この記事では、ワンセグ衰退の理由と、近年、徴収対象として注目されている「カーナビ受信料」のリスク、そして余計な出費を防ぎつつ賢くテレビ番組を楽しむための最新事情を解説します。
携帯電話やカーナビから「ワンセグ」が消えた2つの大きな理由
かつては「ガラケー」の代表的な機能の一つだったワンセグですが、2020年代に入り、iPhoneをはじめとする海外メーカーのハイエンドモデルはもちろん、国内メーカーのスマホからも搭載機種がほぼ消滅しました。

たとえば2019年6月1日に発売された「Galaxy S10」や2020年5月22日に発売された「Xperia 1 II」など、ワンセグ対応しているスマホがまったくないわけではありません。しかし発売が数年前のスマホは、スマホ市場においてすでに世代の古い機種と言える側面があります。
なお、筆者の調査によると、2025年12月時点でワンセグに対応している最新機種は2022年3月24日発売のシニア向けの簡単操作スマホ「かんたんスマホ2+」です。
この現状には、大きく分けて「視聴スタイルの変化」と「端末の変化」という2つの理由があります。
動画配信サービスの普及と通信環境の進化
ワンセグが「消えた」1つの要因には、消費者側の視聴スタイルの変化が挙げられるでしょう。
たとえば2015年にTVerが登場し、チューナーを利用することなくテレビ番組(民放)を視聴することが可能に。テレビ番組をテレビ以外で視聴することのハードルが大きく下がったと言えます。

ワンセグは画質が粗く、電波が入りにくい場所では映像が止まることも少なくありませんでした。一方、YouTubeやNetflix、Amazon Prime Videoなどの動画サブスクリプションサービスの台頭により、「あえて画質の悪いワンセグでリアルタイム視聴する」必要性が薄れてしまったのです。
つまり、TV番組やドラマなどを見るためのインフラとして「ワンセグ」の必要性が薄れていったと考えられます。
スマホの薄型化とデザインの制約
スマホの薄型化や軽量化が進んだことも、ワンセグにとっては逆風と言えるでしょう。使用頻度の低い機能や部品は、スマホ本体から省かれる傾向が強まっています。イヤホンジャックやストラップホールが姿を消したのは、その典型例です。
同様にワンセグのチューナーも、薄型化の要求が強まっており、代替の視聴手段として配信サービスが定着しているならば「省かれやすい対象」になったと考えられます。
【重要】ワンセグ衰退の裏にある「NHK受信料」問題
機能やデザインの面だけでなく、ワンセグが敬遠されるようになった大きな要因として、NHK受信料との法的な関係性もあります。

最高裁が示した「ワンセグ携帯も契約義務あり」の判断
2019年3月に「ワンセグ機能付きの携帯電話を所有している場合、NHKの受信料契約を結ぶ義務があるかどうか」という訴訟の最高裁判決が下され、原告側の「契約義務はない」とする上告をいずれも退ける判断が示されました。
放送法第64条では「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と定めていますが、NHKを受信できるテレビを所有していない場合でも、ワンセグ付き携帯を所有していたら受信料の支払い義務が生じることとなります。
なお、最高裁判決が出た2019年はTVerのサービス開始からすでに4年ほどが経過しており、チューナーを持たない端末でのテレビ番組視聴が「当たり前のこと」になりつつあったタイミングです。
つまりメーカー側にとってチューナーを搭載すると「ユーザー側に受信料支払い義務」が生じるため、チューナーレスにして番組は「TVerなど配信サービスでの視聴を前提とする」方が合理的だった側面もあったと考えられます。
そのため視聴スタイルの変化と最高裁判決の2つを大きな理由として、ワンセグ衰退に拍車をかけた可能性があります。
「未契約で未払い」の場合は受信料が2倍請求される
なお、2022年6月に「電波法及び放送法の一部を改正する法律案」が可決・成立しました。これに伴い、2023年4月以降、NHKと未契約かつ未払いの場合は、割増金として受信料の2倍が請求される制度が導入されています。テレビを設置していなくても、カーナビやワンセグ機能付きの携帯電話を所有している場合は対象となるため、注意が必要です。
そのため、「ワンセグ機能付きの携帯電話を所有しているにもかかわらず、NHKと契約していない」場合は、特に注意が必要です。
「カーナビ」も要注意 徴収対象としての現状
ガラケーの定番機能だったワンセグがスマホ時代に衰退したワケは、そのまま車のカーナビからワンセグやフルセグが消えつつある理由とも繋がります。

ここでの落とし穴は、画質の良い「フルセグ」だけでなく、簡易的な「ワンセグ」しか映らないカーナビであっても支払い義務があるという点です。
「走行中は見られないようにしている」「DVDしか見ていない」といった言い分は通用しません。「受信できる設備」を持っていること自体が契約の条件となるからです。
今、スマホや車でテレビ番組を見る現実的な選択肢は?
2025年現在、スマホやカーナビでテレビ番組を楽しみたい場合、ワンセグ機能は不要です。以下の方法が主流かつ高画質でおすすめです。
【スマホ】アプリを活用する(基本無料)
公式のアプリを使えば、リアルタイム視聴や見逃し配信が可能です。
TVerの場合、民放各局のドラマやバラエティが放送終了後から1週間程度無料で見られます。一部、リアルタイム配信も行っています。

また、NHKの受信契約がある場合、「NHK ONE」の利用が可能。ID登録は必要になりますが、追加料金なしで総合・Eテレの番組をスマホで視聴できます。
【車】「ディスプレイオーディオ」を選ぶ
これから車を購入したり、カーナビを買い替えたりする場合は、「チューナーレス(テレビ機能なし)」のカーナビ、いわゆるディスプレイオーディオを選ぶことをおすすめします。
ディスプレイオーディオは、スマホと接続(Apple CarPlayやAndroid Auto)して、Googleマップをナビ代わりにしたり、音楽を聴いたりするためのモニターです。テレビチューナーが入っていないため、NHK受信契約の対象外となります。
災害時の情報収集はどうする?
「ワンセグは災害時に役立つのでは?」という声もありますが、現在はラジオアプリ(radikoなど)や、各ニュースアプリのライブ配信の方が遅延が少なく、安定して情報を得られるケースが増えています。
どうしても電波が途絶えた環境でのテレビ視聴に備えたい場合は、外付けのモバイルテレビチューナーを購入し、非常用持ち出し袋に入れておくのもおすすめ。これなら、普段使うスマホを受信料対象の端末にする必要はありません。
※サムネイル画像は(Image:「SHARP」公式サイトより引用)




