カメラやAI機能の進化はあるものの、スマートフォン自体の機能進化は落ち着いているのが2025年時点の現状です。新モデルは毎年発表されていますが、「数年前のモデルと比べて、容量以外に何が違うのだろう?」と感じる人も少なくないでしょう。その一方で端末価格は上昇を続け、フラッグシップモデルが20万円を超えることも珍しくありません。
その結果、買い替え頻度は下がり、一台の端末を4年程度使い続ける人も決して珍しくありません。「性能」よりも「長く使えること」が、スマートフォンに求められる条件になりつつあります。
しかし、「長く使える」とは単に物理的に壊れないことや、バッテリーの持ちが良いことだけを意味するのでしょうか。今回は、OSアップデート保証が長い端末を厳選してご紹介します。

OS・セキュリティアップデートの重要性

まずOSアップデートはいわばスマートフォンの「若返り」と言えるでしょう。数年前に購入した端末でも、最新のソフトウェアによって新しい命が吹き込まれ、陳腐化を防ぐことができます。
たとえばスマホアプリひとつとっても、基本的にアプリは最新のOSバージョンを前提として開発されることが多く、OSが古いと最新アプリが利用できない場合があります。するとスマホの機能拡張ができなくなるため、アプリのアップデートもできず、その端末は陳腐化に加えてセキュリティ上の脅威も高まります。長くスマホを使ううえでOSアップデートは「最低限重要なこと」です。
同様にセキュリティアップデートも重要です。ソフトウェアには、開発段階で意図せず生まれてしまったセキュリティ上の欠陥(脆弱性)が存在します。攻撃者はこの穴を狙って侵入を試みます。セキュリティアップデートは、発見された脆弱性を塞ぐための最も重要な手段です。アップデートが停止した端末を使い続けることは、これらのリスクを自ら受け入れることに他ならず、非常に危険な行為と言えるでしょう。
長く使える端末の選定基準
上記の理由から、今回は長く使えるスマホの選定基準を「OSアップデート」「セキュリティアップデート」の保証期間と定めます。
メーカーが公式に発表している「OSアップデート保証期間」および「セキュリティアップデート保証期間」を最優先の評価指標とします。原則として、日本国内で正規に購入可能、または比較的容易に入手できるモデルを対象としますが、特筆すべき特徴を持つ海外モデルの場合は参考として含めます。
【おすすめ】7年以上の長期保証があるスマホ
メーカーが7年以上の長期保証を明かしているスマホをご紹介します。
【1】Google Pixel(8 / 9 / 10 シリーズ)

・OSアップデート保証:7年間
・セキュリティアップデート保証:7年間
・特徴:Google AI機能、ピュアなAndroid体験、優れたカメラ性能
・価格帯:ミドルレンジ(aシリーズ)〜ハイエンド(Proシリーズ)
Googleは、Pixel 8シリーズの発表で、スマートフォン業界の常識を覆す「7年間のOS・セキュリティアップデート保証」を打ち出しました。これは、Android端末のサポート期間が比較的短いという長年の課題に対する、Google自身の明確な回答です。以降、Pixel 9、Pixel 10シリーズでもこの方針は継続されています。
Pixelシリーズ最大の魅力は、ハードウェアとソフトウェアを一体で開発していることによる高い親和性です。最新のAndroid OSがリリースされると同時にアップデートが提供され、Googleが開発する最先端のAI機能(リアルタイム翻訳、高度な写真編集機能「編集マジック」など)をいち早く、そして最適化された形で体験できます。カメラは、派手なスペック競争よりもAIによる画像処理技術で高い評価を得ており、誰でも簡単に美しい写真を撮影できる点が支持されています。
さらに、ハイエンドの「Pro」モデルだけでなく、手頃な価格の「a」シリーズにも同様の長期保証が適用される点は、ユーザーにとって大きなメリットです。
【2】Samsung Galaxy (S24 / S25 シリーズ以降のフラッグシップ)

・OSアップデート保証:7年間
・セキュリティアップデート保証:7年間
・特徴:高性能ハードウェア、多機能なGalaxy AI、洗練されたOne UI
・価格帯:ハイエンド
Androidスマートフォンの世界最大手であるSamsungも、Googleに追随する形で、2024年発売のGalaxy S24シリーズ以降のフラッグシップモデルに対して7年間のOS・セキュリティアップデート保証を発表しました。
Galaxyシリーズの強みは、なんといってもハードウェア全体の完成度の高さにあります。業界最高クラスの明るさと色彩表現を誇る有機ELディスプレイ、多彩な撮影が可能な高性能カメラシステムなど、所有する満足感を満たしてくれます。これに加えて、リアルタイム通訳や要約作成など、実用的な「Galaxy AI」機能が統合され、ビジネスからプライベートまで幅広いシーンで活躍します。独自UIである「One UI」も長年の改良を経て非常に洗練されており、豊富なカスタマイズ項目と便利な独自機能で、多くのユーザーから高い評価を得ています。
【3】Fairphone 5

・OSアップデート保証:最低5回のメジャーアップデート(Android 13から)
・セキュリティアップデート保証:2031年まで(発売から約8年間)
・特徴:ユーザーによる部品交換、フェアな素材調達、長期サポート特化のチップセット
・価格帯:ミドルハイ
Fairphoneは、「サステナビリティ(持続可能性)」を企業理念の中核に据える、ユニークなスマートフォンです。たとえば現行機種のFairphone 5は、アップデート保証期間の長さにおいて、業界最長クラスになっています。セキュリティアップデートは2031年まで提供され、OSもAndroid 13から数えて最低5回のメジャーアップデートが約束されています。これは、Android 18までのサポートが保証されることを意味し、驚異的な長さです。
驚異的なサポート期間の長さを支えているのは、本来は産業機械用に設計されている独自のチップセットであり、長期的な供給と保証が約束されています。
加えてバッテリー、カメラ、ディスプレイといった主要部品を、ユーザー自身が市販のドライバー1本で簡単に交換できる「修理する権利」を徹底的に追求しています。物理的な故障が発生しても、部品を交換しながら使い続けることができるのです。
2025年現在、日本では公式販売されておらず、海外通販サイトや輸入業者を通じての購入となるのが現状です。しかし「一つのスマートフォンを長く使いたい」場合、魅力的な端末であるのも事実です。日本国内での入手性の改善が強く期待される機種の1つです。
【4】Apple iPhone シリーズ(保証期間なしも実績豊富)

・OSアップデート保証:公式な年数発表なし
・セキュリティアップデート保証:実績として発売から6年〜8年程度
・特徴:高いリセールバリュー、強力なエコシステム、直感的な操作性
・価格帯:ミドルハイ〜ハイエンド
Appleは、GoogleやSamsungとは異なり、「iPhoneのOSアップデートを何年間提供します」という具体的な年数を公表していません。しかし、その代わりに「過去の実績」という何より雄弁な証拠で、長期サポートをユーザーに示し続けています。たとえば、2024年にリリースされたiOS 18は、2018年発売のiPhone XS/XRまでサポートしています。これは実に6年間にわたるメジャーOSのアップデート提供を意味します。さらに、メジャーアップデートの対象から外れた後も、重要なセキュリティパッチは提供され続けることが多く、たとえばiPhone 6s(2015年発売)には2023年5月にもセキュリティアップデート(iOS 15.8.1)が配信されました。
もちろん、Mac、iPad、Apple Watchといった他のApple製品とのシームレスな連携(エコシステム)や、質が高く豊富なアプリが揃うApp Store、洗練されたユーザー体験も大きな魅力です。明確な保証年数の宣言がなくとも、これまでの揺るぎない実績から、iPhoneは最も安心して長く使えるスマートフォンの一つであることは間違いありません。安定したパフォーマンスとブランド価値を求めるユーザーにとって、依然として最適な選択肢です。
スマートフォンは、もはや単なる通信機器ではなく、私たちの生活、仕事、思い出、そして資産の一部です。だからこそ、その選択は慎重に行うべきです。また「二年に一度の買い替え」が必要かも十分に検討したうえで、端末を選ぶこともおすすめします。
目先の価格やスペックだけでなく、数年後の自分自身が、その端末を安全に、そして快適に使い続けられるように「いま買う端末」を選んでみてくださいね。