
機種変更で使わなくなったスマートフォンやタブレットが自宅の引き出しの奥で眠っていませんか?「いつか使うかも」と思って保管していても、バッテリーは劣化し、OSのサポートも終了し、現実的には使いものにならなくなることもあるでしょう。
しかし、いざ捨てようとすると「これ、何ごみ?」「個人情報が詰まっているけど、どうすれば…」と、その処分方法に頭を悩ませる方は少なくありません。
結論から言えば、スマートフォンやタブレットを自治体の「燃えないごみ」や「粗大ごみ」として捨てることはできません。内蔵されているリチウムイオン電池がごみ収集車や処理施設で押し潰されると、発火・爆発事故を引き起こす重大なリスクがあるためです。
さらにスマホは個人情報が凝縮されたデバイスです。写真、連絡先、クレジットカード情報、各種サイトへのログイン情報など、万が一流出すれば深刻な被害に繋がりかねません。
とはいえ「粗大ごみ」「燃えないごみ」として処分できないならば、不要になったスマホはどう処分すればよいのでしょうか。具体的な方法を見ていきましょう。
なぜスマホは「粗大ごみ」で捨てられないのか?

スマホやタブレットを「粗大ごみ」や「燃えないごみ」で捨てることができない背景には「小型家電リサイクル法」が存在しています。正式名称を「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」というこの法律は、2013年に施行されました。その最大の目的は資源のリサイクルです。
スマートフォンには、金、銀、銅などの貴金属や、インジウムといったレアメタルが微量ながら含まれています。これらは「都市鉱山」とも呼ばれ、適切に回収・処理することで、貴重な資源として再利用できます。この法律は、そうした資源を国内で循環させる体制を整えるために作られました。
この法律に基づき、国は市区町村や認定事業者(携帯キャリアや家電量販店など)に対して、使用済み小型家電の回収を促しています。私たちが自治体の「小型家電回収ボックス」や携帯ショップでスマホを処分できるのは、この法律があるからなのです。つまり、消費者はこれらの回収ルートを利用して、リサイクルに協力する社会的責務があると言えます。
端末の処分前に行うべき『データ消去』
冒頭でも触れましたが、スマホには個人情報が多く詰まっています。処分する前に必ずサインアウトやデータ消去を行いましょう。
ただし、必要なデータは処分前にiCloudバックアップやGoogle Oneバックアップなどを利用してバックアップを取っておきましょう。
アカウントからのサインアウト
アカウントからのサインアウトを怠ると、次の所有者が端末を正常に利用できない「アクティベーションロック」(iPhone)や「Device Protection(端末保護機能)」(Android)がかかった、通称「文鎮化」状態になる可能性があります。
下取りや買取に出したスマホは最終的に中古市場に流通する可能性があります(※処分対象のスマホが中古市場に流通することを防ぎたい場合は、キャリアショップでの回収の利用をおすすめします。ドリルによる物理破壊が行われるためです)。よって個人情報保護と「文鎮化」防止の両面からサインアウトをしましょう。
iPhoneの場合、まずは「探す」機能をオフにします。設定アプリを立ち上げ、一番上の自分の名前の部分をタップしてAppleIDページに入ります。


Androidスマホの場合は端末によって操作が異なりますが、Google Pixelの場合は以下の通りです。まず設定アプリを開きます。

なお、これらの操作はあくまで端末からの「サインアウト」のため、アカウントが削除されるわけではありません。
端末の暗号化と「工場出荷状態への初期化」
近年のOS(iOS 8以降、Android 6.0以降の多く)では、端末はデフォルトで暗号化されています。この「暗号化された状態」で初期化を行うと、データへアクセスするための「鍵」が破壊されるため、データの復元が極めて困難になります。
iPhoneはデフォルトで暗号化されています。Androidの場合、以下の手順で暗号化の有無をチェックできるため、念のため確認しておきましょう。
まずは設定アプリを開き、「システム」に進みます。

SDカードやSIMカードの抜き取り

データ消去の最後の砦は、物理メディアの取り外しです。意外と見落としがちなので、絶対に忘れないでください。まずSIMカードには契約者情報が含まれています。端末の側面にある小さな穴にSIMピンを差し込み、トレイを引き出して必ず抜き取ります。
SDカードにも写真や動画など、大量の個人データが保存されている可能性があります。こちらも忘れずに取り出してください。
スマホ・タブレットの正しい処分方法3選
最後に、スマホやタブレットの正しい処分方法をご紹介します。
自治体の「小型家電回収ボックス」

小型家電リサイクル法に基づき、多くの自治体が公共施設やスーパー、家電量販店などに専用の回収ボックスを設置しています。買い物のついでなど、自分の都合の良いタイミングで投函でき、国の定めたルートで適正に処理される点も安心できるポイント。
ただし、ボックスの投入口(例:15cm × 30cmなど)に入らない大型のタブレットは利用できません。またあくまで「回収ボックスへの投函」を行う形となるため、投函時にドリルによる物理破壊などが行われるわけではありません。投函前のデータ処分は慎重に行いましょう。
携帯キャリアショップでの無料回収

ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルなどのキャリアショップでは、メーカーやブランド、契約キャリアを問わず、不要になったスマホやタブレットを無料で回収しています。昔使っていたガラケーなども広く回収してもらうことができます。
「目の前での物理破壊によるデータ漏洩防止」が行われる点も極めて大きな利点です。多くのショップでは、回収した端末にドリルで穴を開けるなどの物理的な破壊(パンチ処理)を顧客の目の前で行ってくれます。これによりデータの復元は完全に不可能となり、スマホを手放す当事者にとって、買取やボックス投函にはない圧倒的な安心感があります。
キャリアの下取りや買取を利用する
キャリアの下取りプログラム、Apple Trade In、中古スマホ買取専門店(オンライン/店舗)、フリマアプリなど、さまざまな方法を通じて下取り・買取に出すのも一案です。
状態が良ければ数千円から数万円の臨時収入になるケースもあり、処分の手間が利益に変わります。
ただし手放した端末は最終的に中古市場に流通する可能性が高いです。『文鎮化』の防止や事前のデータ消去は慎重に行いましょう。少しでも不安がある場合は、少なくともフリマアプリなどでの『個人間取引』は避けるべきです。最も高く売れる可能性がありますが、データ消去の責任は100%自分にあり、買い手とのトラブル対応も自身で行う必要があります。
利益よりも安全性を重視するならば、やはり自治体の投函ボックスやキャリアショップでの物理破壊を選ぶべきです。
「無料」を謳う不用品回収業者には要注意!
街を巡回していたり、ポストにチラシを入れたりする「無料回収」業者の利用は、絶対に避けるべきです。これらの業者の多くは、自治体から「一般廃棄物収集運搬業」の許可を得ていない違法業者です。
回収されたスマホがどこで、どのように処理されるか不明であり、不法投棄されたり、個人情報を抜き取られたりするリスクが非常に高くなります。適切な処分は、必ずこれまでにご紹介した3つの方法から選んでください。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)