ダイソーでは、スマホの充電やデータ転送で使えるUSBケーブルがたくさん売られています。でも、価格はたった110円なのに本当に品質に問題はないのでしょうか? そこで筆者は、ダイソーで販売されているUSBケーブルを6本購入して「USB CABLE CHECKER 2」という計測機器で検証するとともに、実際の充電速度やデータ転送速度について調べてみました。果たしてその結果は……?
そもそもUSBケーブルの規格はどうなっている?
100均のダイソーに行くとさまざまなUSBケーブルが110円〜330円といった低価格で販売されています。
通常は800〜3,000円程度はするのに、こんなに安くて本当に大丈夫なのか疑問に思っている人も多いことでしょう。
そこで今回は、筆者がダイソーで販売されている6種類のUSBケーブルを購入して、充電速度やデータ転送速度などの性能を検証してみます。
その前に、複雑で分かりにくいUSB規格について解説しておきましょう。
ざっくり言うといちばん古い「USB 2.0」と「USB 3.0/3.1」、最新規格の「USB4」、そして、USB-Cを利用した「Thunderbolt」の4種類があり、規格ごとでデータ転送速度は異なります。
たとえば、USB 2.0は最大480Mbpsで、USB 3.2 Gen 2(USB 3.1 Gen 2)は最大10Gbps、最新のUSB4やThunderbolt 4は最大40Gbpsとなっています。
ところが、USBケーブルの給電性能はデータ転送速度とは別の仕様があり、必ずしもデータ転送速度と給電性能は一致しません。
そもそも、充電の出力(W・ワット)は電圧(V・ボルト)×電流(A・アンペア)で算出できますが、USB 2.0規格での給電は0.5A(5V/0.5A=2.5W)、USB 3.0規格では0.9A(5V/0.9A=4.5W)、USB BC(Battery Charging)では1.5A(5V/1.5A=7.5W)となっていました。
しかし、時代とともにもっと大きな電力を必要とするデジタル機器が増えてきたため、USB規格でもっと大電源を供給できる規格として「USB PD(Power Delivery)」が策定されたのです。
一口に「USB PD」と言っても最大60W(20V/3A)に対応するもの、最大100W(20V/5A)の給電を管理する「e-Marker」を搭載するもの、あるいは最大240W(48V/5A)対応「USB PD EPR」に対応するものがあります。
「eMarker」とはUSB Type-Cケーブルに内蔵されているICチップのことで、パソコンなど大電源を必要とするUSB PD(Power Delivery)で100Wの電源を供給するときに必要になります。
また、USB規格に関してはUSB-IFという団体によって定められていますが、USBケーブルには何も表記がないので、見た目では性能が分かりませんよね。
そこで、USB-IFではUSBの転送速度や給電性能を示す新たなパフォーマンスロゴを定めており、最近はこのロゴが表記された製品もあります。
ダイソーで売られているUSBケーブルはどのような仕様なのか?
ここまでの説明で、何となくUSBの規格のことが分かっていただけたと思いますが、ここで、今回筆者が購入したダイソーのUSBケーブルの性能を確認しておきましょう。
昔、100均では充電速度の遅い1Aや2Aの製品もありましたが、最近は3A(20V/3A=60W)に対応する製品がほとんどで、「USB-PD・60W」対応と表示されているものが110円から買えます。
なかには100Wまでの給電に対応できる「eMarker」搭載のUSBケーブルもあり、こちらは330円となっています。
また、USBのケーブル長は50cm〜1mのものが多いのですが、必要以上に長いものは本来の性能が発揮されない場合もあるので、できれば1m以下のものを選んでおきましょう。
なお、ダイソーではiPhone 14以前に対応するLightningケーブルも売られており、Appleの「MFi」認証を受けている製品は1,100円で販売されていますので、今回はこちらもテストしてみます。
ちなみに、iPhone 15ではLightningからUSB-C(Type-C)に変更されていますが、ダイソーで販売されている製品を使用してもまったく問題ありません。
充電・転送ケーブル(Type-A-Type-C、1m、3A、アルミプラグ)
充電・転送ケーブル(Type-C-Type-C、1m、3A、アルミプラグ)
A-Cケーブル(3A、1M)
Type-C充電通信ケーブル50cm(Type-C、PD対応)
充電・転送ケーブル(USB POWER DELIVERY、100W対応、Type-C)
ライトニングケーブル(PD対応、Type-C、1.0m)
「USB CABLE CHECKER 2」でUSBケーブルの性能を確認
見た目ではなかなか性能が判別できないUSBケーブルですが、隠れた性能を確認するには、Bit Trade Oneの「USB CABLE CHECKER 2」という計測機器を使えば一発です。
ただし、USB CABLE CHECKER 2でLightningケーブルは計測できませんので、ここではそれ以外の5本のUSBケーブルをチェックしてみましょう。
●Bit Trade One「USB CABLE CHECKER 2」は→こちら
USB CABLE CHECKER 2の表示
■USB CABLE CHECKER 2の見方
【GND】電源線への通電
【VBUS】バスパワーの通電
【D-/D+】USB2.0までのデータ通信が可能。ここが点灯しないとデータ転送はできない充電専用と判断できる
【TX1/RX1】5Gbps(SuperSpeed/SS)モード(3.1 gen1)対応
【TX2/RX2】10Gbps(SuperSpeed+/SS+)モード(3.2 gen2)対応
【SBU1/2】音声や映像の出力に対応
【CC】USB-PD
「USB CABLE CHECKER 2」を使ってUSBケーブルでチェックしたいのは、まず「GND」と「VBUS」です。ここが点灯していれば断線しておらず充電可能ということになります。
次に、「D-/D+」が点灯していればUSB 2.0でのデータ通信が可能だと分かります。
また、「TX1」「RX1」は5Gbps(SuperSpeed/SS)モード(3.1 gen1)に対応、「TX2」「RX2」は10Gbps(SuperSpeed+/SS+)モード(3.2 gen2)に対応していることが確認できます。
そして、「CC」は高出力の電源供給にも対応するUSB-PD規格対応かどうかを判別できますが、基本的にUSB Type-C/Type-Cであれば対応しているはずです。
さらに、100W充電に対応するeMarker対応機種ならディスプレイに「E-MARKED」と表示されます。
なお、USB CABLE CHECKER 2のディスプレイには「GND+VBUS=000mΩ」と表示されますが、これは「mΩ(抵抗)」のこと。ここの数値が少ないほど充電効率がいいと判断できます。
200mΩ前後であれば問題ありませんが、もし、抵抗値が1,100mΩ以上で「HIGH」と表示されるようなら、そのようなUSBケーブルは今すぐ捨てたほうがいいでしょう。
充電・転送ケーブル(Type-A-Type-C、1m、3A、アルミプラグ)
充電・転送ケーブル(Type-C-Type-C、1m、3A、アルミプラグ)
A-Cケーブル(3A、1M)
Type-C充電通信ケーブル50cm(Type-C、PD対応)
充電・転送ケーブル(USB POWER DELIVERY、100W対応、Type-C)
USB CABLE CHECKER 2でのテスト結果を見る限り、ダイソーの製品は110円〜330円という低価格なのに、とてもまっとうな結果が出ました。これなら安心して使えそうです。
とくに「USB Type-C/Type−C(100W)」は、ディスプレイにきちんと「E-MARKED」と表示されており、「eMarker」が内蔵されていることが確認できました。これなら100Wまでのパソコンの電源供給にも使えます。
ちなみに、筆者が所有している高性能で高価な「Thunderbolt 3」のケーブルを、USB CABLE CHECKER 2でテストした結果も紹介しておきましょう。
こちらはすべてのLEDが点灯しておりフルマーク。ディスプレイには「E-MARKED」表示もあり、大電力供給が可能。しかも、データ転送速度はUSB 3.0以上の高速規格にも対応していることが分かります。
さらに、抵抗値も108mΩとケーブルの品質がかなり高いことが確認できました。さすがに110〜330円のダイソーのUSBケーブルとは性能が違いますね。