日本の漫画は海外でも人気が高まっている。漫画を読む際に公式サービスを利用している海外読者がいる一方、非正規版チャネル、いわゆる海賊版を利用している読者も一定数いるようだ。一般社団法人ABJが実施した、アメリカとインドネシア2カ国においての「海外の漫画非正規版利用に関する調査」の結果より、その実態をリアルな声とともに紹介する。
公式サービス以外の非正規版チャネルの利用者は30~40%に及ぶ

2024年11月28日~12月5日、正規版・非正規版の両方を利用するユーザー(インドネシア、アメリカ)及び、非正規版のみを利用しているユーザーに対し、インタビュー調査を実施。続いて2025年2月13日~20日、インドネシアまたはアメリカに居住し、日本の漫画を読む非正規版チャネル認知者(各国504人)を対象にアンケート調査を実施。2つの調査により、海賊版ユーザーの「リアルな実態」が分かった。
日本の漫画を読む非正規版チャネルを認知している人に、日本の漫画を読む手段を尋ねると(複数回答可)、インドネシア・アメリカともに「購入した漫画」「公式の電子書籍アプリや漫画アプリ、ウェブサービスを有料で利用」「公式の電子書籍アプリ、ウェブサービスを無料で利用」と回答した人が50~60%となった。一方、「その他の電子書籍アプリや漫画アプリ、ウェブサービスを利用」と答えたのはインドネシアが37.5%、アメリカが30.4%となり、公式サービス以外の非正規版チャネルを利用している人が一定数いることが分かった。

では、非正規版の認知者は、非正規版チャネルを利用する人に対してどのようなイメージを抱いているのだろうか(複数回答可)。インドネシアでは「法律や倫理を軽視している」「作家や出版社に迷惑をかけている」「長期的にみると文化を損ねる行動をしている」という声が上位に挙がった。アメリカでは「お金を節約している」「たくさんの作品を読んでいる」「作家や出版社に迷惑をかけている」とさまざまだった。
日本のファンが「オンラインに漫画をポストしないで」と発信したことで気づいたケースも

非正規版を利用することの違法性への意識はどうなのだろうか。インドネシアでは、「漫画家に収入がないのは知っているが、サイトを使っている人は多いので、自分もその流れで使っている」「自分だけのエゴになるが、タダで読めるのにどうして支払わなければならないんだと思う」など、違法だと認識しているが、悪いことをしているという意識は低そうだ。
アメリカでは、「発売後すぐに読んで満足感を得たい」という声がある一方で、「日本のファンが『オンラインに漫画をポストしないで』と発信していて、いけないことだと気づいた」「ダメージは作者にあると思うし、モラルに関する問題だと思う」など、日本からの啓蒙が届いているケースもあった。
違法性は認識していながらも利用する理由として「正規版はログインが手間だが、非正規版は無料で読める」「インドネシア語で読める」「正規版の翻訳は時間がかかる。早く次のストーリーを読みたい」「コスパよく試し読みができる」「スマホで無料で読めるから便利」「お金があまりないから本を買えない」など理由はさまざまだが、正規版と同じものを「無料で読める」のが一番の理由になっているようだ。
日本の漫画は、「キャラクターが魅力的」「幅広いジャンルがある」「日本以外でも人気が高い」「絵が特徴的」などポジティブな意見が多いのも事実。これだけ海外で日本の漫画が人気を獲得できたのも作者の賜物だ。作品にリスペクトを持ちつつ、日本の漫画をもっと好きになってもらいたいと願う。
出典:【一般社団法人ABJ】
※サムネイル画像(Image:Rizky Rahmat Hidayat / Shutterstock.com)