2024年に開始された新NISA制度。投資初心者でも始めやすい設計となり、注目を集めてきた。NTTデータ・エービックの調査によれば、特に若年層での利用が急速に広がっているという。一方で、制度に対する理解や金融教育の有無によって利用状況には差があることもわかってきた。今回は、新NISA制度の利用実態や課題について見ていこう。

利用が進む若年層、投資のハードルは下がったのか?

NTTデータ・エービックが2025年3月に実施した「NISA意向調査」によると、2024年1月以降にNISA口座を開設した人は全体の24.0%。なかでも18歳~29歳の若年層では、男性の31.2%、女性の35.8%が1年以内に口座を開設しており、若者の投資参加が着実に進んでいることが明らかになった。背景には、非課税枠が拡大された新制度により「つみたて投資枠」が強化され、少額からでも始めやすくなったことが考えられるだろう。

また、NISAの利用先については、ネット証券やネット銀行が過半数を占めるという結果も出ている。手数料の安さや、オンラインで簡単に申し込める手軽さが支持されており、「投資は難しい」「証券会社はハードルが高い」という従来のイメージを払拭する動きが広がっているのかもしれない。

新NISAの利用が増えるなか、NISA口座利用者の株価急落時の対応を調査すると、約75%は「何もしなかった」と回答した。だが、ネット証券やネット銀行の利用者に限ってみると、「追加で投資した」というアクティブな動きが相対的に多かった。ネット証券が提供するツールや情報の存在が、投資判断の支えとなっている可能性があるのだろうか。下落局面でも買い増しを判断できる行動は、情報リテラシーや経験と深く関係しているのかもしれない。
学びの有無が明暗を分ける?新NISA未利用者のリアル

新NISA制度により投資に対するハードルが下がった一方で、いまだに制度を利用していない層も少なくない。調査によれば、NISA未利用者の約75%が「金融経済について学んだ経験がない」と回答。逆に、利用者の約63%が「学んだ経験がある」と答えており、学びの有無が利用の分かれ目になっている可能性がある。

また、制度を利用していない理由としては、「NISAの仕組みがわからない(14.6%)」「投資にまわせるお金がない(15.8%)」といった回答が上位に挙がった。特に制度への理解不足は、誤解や不安感を生み、投資への第一歩を踏み出せない要因になっているようだ。
制度開始から1年。導入初期とはいえ、「貯蓄から投資へ」という国の方針を実現するには、投資教育やわかりやすい情報提供がますます重要になってくる。若年層を中心に利用が拡大しつつある流れを一過性で終わらせないためにも、誰もが安心して始められる投資環境の整備が一層求められていくだろう。
出典:【NTTデータ・エービック】
※サムネイル画像は(Image:「photoAC」より引用)