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「AOL(America Online)」はなぜ日本ではネット接続の主流になれなかったのか?

1990年代から2000年代初頭にかけて、多くのアメリカ人にとってネットの玄関口となったAOL(America Online)。2000年にはタイム・ワーナーとの企業合併を成立させ、「AOLタイムワーナー」が誕生するほどの勢いを誇ったAOLですが、日本市場では思うような成果を上げることができず、NTTドコモとの提携(2000年)も思うような成果にはつながりませんでした。

米国で圧倒的な成功を収めたビジネスモデルが、なぜ日本では受け入れられなかったのでしょうか。今回は「AOL」がなぜ日本では、ネット接続の主流になれなかったのか、その日本進出について振り返ってみましょう。

『AOL』日本進出の初期の戦略

AOL(America Online)は1997年、日本市場への本格進出を開始しました。先述した通り、当時AOLは米国で最大のインターネット接続サービスとして成功を収めており、その勢いを日本市場にも拡大しようとしました。

『AOL』日本進出の初期の戦略1
(画像は「Wayback Machine(2000年1月のJP.AOL.COM)」より引用)
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日本法人は三井物産と日本経済新聞社との合弁企業として設立(※その後『ドコモAOL』に社名変更され、NTTドコモが筆頭株主に。さらに2003年にはドコモAOLの全株式がAOLに譲渡されています)され、ダイヤルアップ接続サービスや、日本語対応のポータルサイトなどさまざまなサービスを提供しました。

しかし、日本市場での展開は当初から困難を極めました。

まず安価な『テレホーダイ』による深夜帯の定額制インターネット使い放題が定着していた90年代~00年代初頭の日本のユーザーにとって、AOLの料金体系は特筆すべきほど魅力的なサービスとしては映らなかったと言えるでしょう。

『AOL』日本進出の初期の戦略2
使い放題プランは4,800円で提供されていました(画像は「Wayback Machine(2000年1月のJP.AOL.COM)」より引用)

加えて00年代初頭の時点で、すでにNTTのISDN(INSネット64)が普及し始めていました。さらに、2001年を迎えると、同年は「ブロードバンド元年」と言われており『Yahoo! BB』がサービス開始。ADSLの普及も急速に進みました。

AOLの主力サービスであったダイヤルアップ接続は、通信網が世界的に見ても稀なレベルで発展した90年代~00年代以降の日本では「時代遅れ」と見なされAOLに乗り換える理由はほとんどなかったと言えるでしょう。
これらの要因が重なり、AOLの日本進出は早い段階で壁にぶつかることになりました。

「AOL(America Online)」はなぜ日本ではネット接続の主流になれなかったのか?

「AOL(America Online)」はなぜ日本ではネット接続の主流になれなかったのか?1
(画像はスマホライフPLUS編集部で作成)

90年代~00年代の日本市場は、AOLが想定していた米国市場とは大きく異なる特性を持っていたと言えるかもしれません。

まずインフラ面ではAOLの上陸以前から、日本のユーザーは『テレホーダイ』制度を活用してインターネットに接続する習慣があり、結果としてAOLの強みである「定額制使い放題モデル」は競争力を発揮できませんでした。

またAOLが提供したのはいわばインターネットそのもの「のみ」ではなく「独自の囲い込みサービス」でした。

90年代~00年代当時、AOLへの接続には『AOL専用接続ソフト』が必要であり、その接続ソフトにはブラウザ、メールソフト、インスタントメッセージソフトなどが内包されていました。ちなみにAOLの日本市場における人気コンテンツの1つは、こうしたインスタントメッセージの機能などを活用した「AOL会員同士の友人、恋人探し」だったと言われています。

「AOL(America Online)」はなぜ日本ではネット接続の主流になれなかったのか?2
(画像は「Wayback Machine(2001年4月のJP.AOL.COM)」より引用)

一方でこうした囲い込みが、オープンなインターネットを求める日本市場のニーズと若干かい離していた感も否めません。たとえば国内では1999年に匿名掲示板『2ちゃんねる』が開設済み。また00年代には個人サイトの運営も一種のブームと化しており、AOLの「囲い込み」がユーザーにとって魅力的に見えたかどうかはなんとも言えないところです。代替となり得るサービスが十分すぎるほどに他に存在していたと言えます。

『Yahoo!BB』など他社ブロードバンドサービスへの敗北

2000年代に入ると、Yahoo! BBのADSLサービスが急速に普及し、AOLのダイヤルアップ接続は完全に時代遅れとなりました。

このようにAOLが日本市場で苦戦する一方で『Yahoo! BB』に加え、国内のブロードバンドサービスは一気に発展を遂げました。90年代~00年代の代表的なブロードバンドサービスには『BIGLOBE』『@nifty』などが挙げられます。

これらの企業と『AOL』の違いには「日本市場の特性を熟知し、真にユーザーニーズに合わせたサービスを提供したかどうか」が挙げられるでしょう。これらのブロードバンドサービスはいずれも接続品質が高く、ADSL普及期にサービスが拡大し、当時としては高速な通信を実現していました。さらにサポート体制も充実しており、日本ユーザーの信頼を獲得しやすいブランドだったとも言えるでしょう。

AOLがこれらの競合企業に対抗できなかったことは、日本市場での失敗を象徴しています。00年代初頭の日本の通信業界では「ADSL戦争」と呼ばれるユーザー獲得合戦が起きており、サービス品質の向上と価格戦略がキーとなっている状況でしたが、その「戦争」からAOLは振り落とされてしまったと言えるのではないでしょうか。

 iモードでもAOLが本格的に実現していたら歴史はどう変わっていた?

NTTドコモの資本参加(2001年)は、2003年にドコモAOLの全株式がAOLに譲渡されたことで終わりを迎えました。その理由は、日本市場での競争激化とビジネスモデルの陳腐化にありました。その後、AOLのサービスは形を変えながら、国内での提携事業者を変えながら国内でも提供が続けられたものの、2022年に完全にサービスが終了しました。

AOLが日本でネット接続の主流になれなかった理由は『サービスの陳腐化』にありますが、さらに言うならば、NTTドコモとの提携(2001年)がモバイル市場への本格参入につながらず、実質的なシナジーを生み出せなかったことが大きかったと言えるのではないでしょうか。

NTTドコモとの提携の際、AOLに期待されたのは「iモードでもAOL」でした。そのため当時はドコモの販売店でもAOLが積極的にアピールされましたが、期待されたような携帯電話網と固定網をシームレスに行き交うような通信サービスは実現に至らなかったと言えるのではないでしょうか。

「ブロードバンドはブロードバンド、携帯電話網は携帯電話網」という時代は今日まで続いています。

仮にドコモとAOLの協力関係や共同での技術開発、AOLの海外での知名度の高さをより強く活かすような取り組みが国内外で進んでいたら、iモードのその後の歴史も大きく変わっていたのかもしれません。たとえばiモードの海外進出時にAOLのインフラを使えるような展開もあり得たかもしれません。

※サムネイル画像は(Image:​「Wayback Machine(2000年1月のJP.AOL.COM)」より引用)

スマホライフPLUS編集部

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