長らくWindowsの標準ブラウザであったにもかかわらず、多くのネットユーザーの「嫌われ者」というイメージも強かった「Internet Explorer」(※2022年終了済み)。
「他のブラウザをインストールするときにしかIEは使わない」「Internet Explorerを通常使うブラウザに設定するようにおすすめしてくるメッセージが鬱陶しい」という声もよく聞かれました。
2025年現在、MicrosoftはInternet Explorerの開発をすでに終了済み。Windows 11の標準ブラウザは「Microsoft Edge」です。
しかし、Internet Explorerはなぜあれほど嫌われていたのでしょうか?今回はInternet Explorerが嫌われ続けてきた理由と、それでも「IEを利用するメリットは本当になかったのか」といった点を振り返っていきます。
Internet Explorerが嫌われ続けてきた理由は?
Internet Explorerが嫌われ続けてきた理由には 「IEだけ見え方が違う」という開発側の目線とセキュリティ面での脆弱性の問題があります。
「IEだけ見え方が違う」問題

Internet Explorerは長年にわたって、まず「Web開発者」から嫌われ続けてきました。その主な理由の一つが、「IEだけ見え方が違う」問題です。
IEは「CSSの解釈が他のブラウザと酷く異なる」と、長年にわたって特にフロントエンドエンジニアの方々からの指摘が相次いでいたブラウザです。
こうした問題はInternet Explorerの最終バージョンとなった「IE11」でも十分には解消されておらず、モダンなCSSに対応しきれていなかったり、特定のフォントを使うとバグが生じるといった問題は散見されていました。このためWeb制作者は「IE向けの個別対応」に過度に時間を取られがちでした。
長年続いた「IE6」対応
Internet Explorerの中でも、特に2001年にリリースされた「IE6」は最も長く利用され続けたバージョンと言えるでしょう。2004年にはWebブラウザのシェア8割ほどを獲得したとも言われています。
そのシェアの大きさ故か、後継バージョンへのシフトがなかなか進まず、Microsoft社自身が「IE6消滅」を促すWebサイトを公開するほどでした。
Microsoftが2011年頃に公開していたIE6消滅に向けたカウントダウンサイト「The Internet Explorer 6 Countdown」によると、2011年のIE6のシェアは全世界で12%。日本では10.3%でした。

「10年前のバージョンのWebブラウザが利用され続けている」のは、開発者にとっては悩みの種でした。2011年当時、策定が進み、実際の使用機会も増えだしていた「CSS3」などの技術が使えなかったためです。
Internet Explorerを対象とするゼロデイ攻撃
Internet Explorerはセキュリティ面でも多くの問題を抱えていました。この問題は、実は「Internet Explorer廃止後」の2025年現在でも、亡霊のように継続しています。
2024年7月、カスペルスキーやトレンドマイクロなどセキュリティ企業の専門家が、Windowsの「CVE-2024-38112」に関するゼロデイ脆弱性をレポート。
ゼロデイ脆弱性とは、ソフト上の未公表の脆弱性のことで、問題となったのは、廃止されたはずのInternet Explorerに関するものでした。実はInternet Explorerはシステム内には残存し続けており、その「残存しているシステム」を対象としたサイバー攻撃の発生リスクが極めて高い状況を示していました。
Microsoftはすでにこの脆弱性に対する修正パッチをリリース済みですが、廃止されたシステムがなお攻撃対象になるほどInternet Explorerにはさまざまな脆弱性があったことが分かる事例と言えます。
Internet Explorerが長年シェアを保ち続けてきた理由は?
それでもInternet Explorerが長年シェアを保ち続けてきた理由としては
・法人利用のニーズが大きかったこと
が挙げられます。また法人ニーズの大きさに比べると非常にニッチなものではありますが、「ExcelとVBAを利用したスクレイピングでの需要があったこと」も無視できない項目ではあります。
IEは「嫌われ者」ではあったものの、以下の2つの用途では長年に渡って利用メリットが大きいブラウザでもありました。
法人利用のPCにおける根強い需要
IEが長年にわたってシェアを保ち続けた最大の理由は、法人利用のPCにおける根強い需要です。
まず法人はしばしば「古いPC」や「古いソフト」を使い続ける必要が生じがちです。たとえば公共事業や製造業、金融業などでは、OSやソフトウェアを刷新してバグが生じた場合の損失が大きく「古いソフトウェアを稼働させ続ける」という意思決定が頻繁に行われます。
そのソフトウェアが古いバージョンのWindowsで稼働する場合、ソフトウェア本体とWindowsをともに更新しない選択をする必要があります。
OSやソフトウェアの更新を止めた状態のPCは、セキュリティリスクが高くなるため「サードパーティー製のアプリ」のインストールはシステム部門によって禁止されることが多いです。さらに言えば、そもそもインターネット接続自体が禁止されることが一般的です。
するとWindowsの標準ブラウザであるInternet Explorerを使用することが「マスト」となります。
こうした事例は非常に多いため、そもそも社内システム自体をIEに最適化させているケースもあります。すると他のブラウザで見ると表示が崩れやすいため、ますますIEの重要度が増します。
つまり法人にとっては、たとえ嫌われ者のブラウザであろうと「利用メリットの方が大きい」ブラウザであり続けていたこともまた事実でしょう。
ExcelとVBAを利用したスクレイピングでの需要
ニッチな需要ですが、IEはExcelとVBA(Visual Basic for Applications)を利用したスクレイピングでも利用されていました。
具体的にはVBAからIEを呼び出して操作し、Webページからデータを取得し、Excelにデータとして取り込んだり加工するもの。
たとえば、
・株価情報の確認
・ECサイトなどの売上ランキングの確認
・競合のECサイトの商品価格変動のモニタリング
・口コミの確認
といった用途に便利で、特にデータ収集や分析を行う業務で重宝されていました。これらの業務は法人で行われることがやはり多く、それらの法人のPCにサードパーティー製のソフトウェアなどを導入できない場合、Windowsの標準的な機能の範疇で使いやすい「Excel」「VBA」「IE」の組み合わせによる情報収集は、簡単な上に極めて実用的でした。
実際、古いWindowsのシェアはどれくらい?
ここまで本稿では繰り返し、「法人利用のPCでは古いOSが利用され続けるケースが少なくない」と述べています。実際、古いWindowsが利用され続けている割合はどの程度なのでしょうか。
StatCounter Global Statsの測定結果によると、まず2025年2月時点で、シェアのトップはWindows 10で58.7%。ちなみにWindows 11は次点ですが、38.13%のシェアしかありません。

そして「古いOS」の代表格であるWindows 7のシェアは2.3%です。このほか、Windows 8やWindows XPのシェアもあわせて考えると、やはりWindows 11にアップデートするのではなく古いOSを使い続けるケースも一定数あると言えます。
こうした古いOSが現役の環境ではInternet Explorerを長年にわたって使い続けていた可能性が高く、社内システムなどが「IE専用ページ」になっている可能性もあるでしょう。
Edgeで「IEモード」を利用するには?
2022年にInternet Explorerはすでに廃止済み。2025年現在は、システムに残存するIEの脆弱性を狙ったサイバー攻撃といった特殊な事例を除いては「IE」が話題になることも減りました。
とはいえ「社内システムがIEでの表示に最適化されており、IEが無くなってしまうと表示や操作ができなくなってしまう」「IE専用ページが閲覧できなくなってしまうのは困る」というケースもまだあるでしょう。
実はMicrosoft Edgeには「IEモード」が搭載されており、IEモードに切り替えることでIE専用ページの表示や操作が可能です。IEモードの使い方は以下の通りです。


再起動後、表示したいWebページを開き、右上のメニューから「Internet Explorerモードで再度読み込む」を選択します。これにより、Edge内でIEモードが有効になり、IE専用ページを表示することができます。
※サムネイル画像(Image:Jeppe Gustafsson / Shutterstock.com)