長らくWindowsの標準ブラウザであったにも関わらず、多くのネットユーザーの「嫌われ者」というイメージも強かった「Internet Explorer」(※2022年終了済み)。「他のブラウザをインストールするときにしかIEは使わない」「Internet Explorerを通常使うブラウザに設定するようにおすすめしてくるメッセージが鬱陶しい」という声もよく聞かれました。
2024年現在、MicrosoftはInternet Explorerの開発をすでに終了済み。Windows 11の標準ブラウザは「Microsoft Edge」です。しかし、Internet Explorerはなぜあれほど嫌われていたのでしょうか?
Internet Explorerが嫌われ続けてきた理由は?
Internet Explorerが嫌われ続けてきた理由には 「IEだけ見え方が違う」という開発側の目線とセキュリティ面での脆弱性の問題があります。
「IEだけ見え方が違う」問題
Internet Explorerは長年にわたって、まず「Web開発者」から嫌われ続けてきました。その主な理由の一つが、「IEだけ見え方が違う」問題です。IEは「CSSの解釈が他のブラウザと酷く異なる」と、長年に渡って特にフロントエンドエンジニアの方々からの指摘が相次いでいたブラウザです。
こうした問題はInternet Explorerの最終バージョンとなった「IE11」でも十分には解消されておらず、モダンなCSSに対応しきれていなかったり、特定のフォントを使うとバグが生じるといった問題は散見されていました。このためWeb制作者は「IE向けの個別対応」に過度に時間を取られがちでした。
長年続いた「IE6」対応
Internet Explorerの中でも、特に2001年にリリースされた「IE6」は最も長く利用され続けたバージョンと言えるでしょう。2004年にはWebブラウザのシェア8割ほどを獲得したとも言われています。
そのシェアの大きさ故か、後継バージョンへのシフトが中々進まず、Microsoft社自身が「IE6消滅」を促すWebサイトを公開するほどでした。Microsoftが2011年頃に公開していたIE6消滅に向けたカウントダウンサイト「The Internet Explorer 6 Countdown」によると、2011年のIE6のシェアは全世界で12%。日本では10.3%でした。
「10年前のバージョンのWebブラウザが利用され続けている」のは、開発者にとっては悩みの種でした。2011年当時、策定が進み、実際の使用機会も増えだしていた「CSS3」などの技術が使えなかったためです。
Internet Exolorerを対象とするゼロデイ攻撃
Internet Exolorerはセキュリティ面でも多くの問題を抱えていました。この問題は、実は「Internet Explorer廃止後」の2024年現在でも、亡霊のように継続しています。
2024年7月、カスペルスキーやトレンドマイクロなどセキュリティ企業の専門家が、Windowsの「CVE-2024-38112」に関するゼロデイ脆弱性をレポート。この脆弱性は、廃止したはずのInternet Explorerに関するもの。終了したはずのInternet Explorerは、実はシステム内には残存し続けており、その「残存しているシステム」を対象としたサイバー攻撃の発生リスクが極めて高い状況を示しています。Microsoftはすでにこの脆弱性に対する修正パッチをリリース済みですが、廃止したシステムがなお攻撃対象になるほどInternet Explorerには様々な脆弱性があったことが分かる事例と言えます。