2022年11月25日、政令の改正により、ブルーレイレコーダーや録画用ブルーレイディスクが「私的録画補償金」の対象機器に追加されました。その後の制度整備を経て、2025年12月から正式に運用が開始され、いわゆるブルーレイ補償金の徴収が始まる見込みです。

とはいえ、正規に録画可能な番組やコンテンツを私的に録画するのに、なぜ補償金が必要なのか納得できない方も少なくないでしょう。
今回は12月から正式に始まる見込みの制度の詳細を詳しく見ていきましょう。
制度の概要と目的

「ブルーレイ補償金」とは、日本における私的録音録画補償金制度の一環で、ブルーレイディスク(BD)レコーダーや録画用BDメディアの購入価格に含まれる形で徴収される補償金です。
この制度は、家庭内で行われる私的な録画行為によって本来なら支払われるべき対価を補償することを目的としています。具体的には、利用者が録画機器や記録媒体を購入する際に支払う補償金が、著作権者や実演家、レコード製作者などの権利者に分配される仕組みです。
私的録音録画補償金制度は日本では1992年に導入されましたが、2000年代半ばからは録画機器のデジタル化やコピー制御技術の導入により、制度の見直しや廃止が議論され、一時期は「事実上機能していない」という見方が強まった制度でもあります。
しかし近年、録画環境の変化や権利者側の要望もあり、文化庁を中心に制度の見直しが進められ、2025年12月1日からブルーレイレコーダーや録画用BDに対する補償金徴収が再開されることになりました。
制度が復活した背景と経緯

私的録音録画補償金制度は、著作権法上の「私的使用のための複製」の例外規定と関連して導入されました。日本の著作権法では、個人が自分の使用のために著作物を複製することを原則として許容していますが(著作権法第30条)、それによって権利者に不利益が生じることから、権利者への補償措置が講じられることとなりました。こうした考え方は、1965年に西ドイツで導入され、その後1980年代中頃から1990年代にかけてヨーロッパ諸国に拡大した『私的複製補償金制度』に倣ったものです。
先述した通り、日本では1992年に著作権法が改正され、私的録音録画補償金制度が正式に導入されました。当初はCDレコーダーやMDレコーダー、録音テープなどが対象とされ、権利者団体が補償金を徴収・分配する仕組みが整備されました。しかし、2000年代に入りデジタル技術が発達すると、録音録画機器がデジタル化し、複製の質や容易さが飛躍的に向上しました。それに伴い、制度のあり方について見直しが迫られるようになりました。特に2003年に地上デジタル放送が開始されたのち、2008年6月にはコピー制御技術(『ダビング10』方式)が導入され、録画番組の転送や複製が制限されることで、補償金制度の必要性が低下したとの見方も出てきました。
つまり、私的録音録画補償金制度は、1992年代に導入されたものの、2000年代以降「かなり存在感が薄い制度であった」とも言えます。この制度が再び大きく動き出したのが、今回のいわゆる「ブルーレイ補償金」であると言えます。
「ブルーレイ補償金」の徴収対象は?額はどれくらい?

補償金の徴収方法は、メーカーや輸入業者が販売価格に補償金を上乗せし、消費者に代わって徴収する形で行われます。つまり「すでに自宅に存在するブルーレイレコーダーや購入済みのディスク」が徴収対象となることはなく、制度開始後に販売されるものが対象です。
具体的には、2025年12月1日以降に販売されるBDレコーダーや録画用BDの価格に、上記の補償金額が含まれる形で販売されます。消費者は購入時にこの額を支払うことになりますが、価格表記には通常「税込価格」として表示されるため、補償金が含まれていること自体は目立たない仕組みです。
なおブルーレイレコーダーおよび録画用BDに対する補償金額は、文化庁が認可した額に基づいて定められています。
BDレコーダー1台あたりの補償金は税抜182円(税込200円)です。一方、録画用BDディスク1枚あたりの補償金は、当該ディスクの基準価格に1%を乗じた額となります。例えば、基準価格が300円のBD-Rディスクであれば、補償金は3円(税抜)となります。
制度の意義と課題
ブルーレイ補償金制度により、著作権者側は録画行為に起因する損失をある程度補填することができるようになります。
一方で、制度にはいくつかの課題も指摘されています。まず徴収額の問題です。ブルーレイレコーダー自体が現在ではあまり売れておらず、録画用BDの需要も限られているため、実際に徴収される補償金総額はそれほど多くない見込みです。
つまり「ブルーレイを対象とする補償金」という制度設計そのものが、現在の録画・保存の実態に合わなくなっていると言えるでしょう。
現在ではスマートフォンやPC、クラウドサービスを使った録画や保存が一般的になっており、従来の機器中心の制度ではカバーできない録画形態も増えています。例えば、ストリーミング動画をPCで録画したり、クラウド上で番組を録画保存したりする場合、現行の制度では補償金が徴収されません。
そのため、「補償金制度を廃止し、ストリーミングサービスの利用料などから権利者に還元する新たな仕組みを作るべき」という意見もあります。
総じて、ブルーレイ補償金制度は著作権者の利益を保護しつつ、一般消費者が私的に録画する自由を認めるというバランスを図る試みです。2025年12月からの徴収開始によって、長らく空白だったブルーレイ録画分野の権利者補償が実現されることになりました。
しかしながら、制度がもたらす効果や影響については、今後の実績を見ながら適切な見直しが行われる必要があるでしょう。著作権文化を健全に発展させるためには、補償金制度に加えて、時代の変化に応じた柔軟な対応が求められています。
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