
「あれ、動画にフィルターかけるボタンがない……」。昨年末ごろからGoogle Photosユーザーの間でこんな困惑の声が広がっていました。使い慣れた動画エフェクト機能が、ある日突然メニューから姿を消したのです。ところが今、Googleは静かにその機能を戻し始めています。いったい何が起き、なぜこうなったのか。スマホ動画編集の最前線を交えて読み解きます。
消えた「Effects」機能が限定的に復活
Android Authority の報道によると、Android版Google Photosのバージョン7.71.0.895417930で、ビデオエディター内の「Effects」オプションが再び利用できるようになっています。この機能は「Dust mix」「paper tear」「light leak」など、動画にスタイリッシュなフィルターをかけられるもので、ちょっとしたSNS投稿をワンランク上の仕上がりにしてくれると人気でした。
ただし、現時点ではロールアウトは限定的です。Googleは少数のユーザーから順次展開しているとみられ、すべてのユーザーが今すぐ使えるわけではありません。自分のアプリで見当たらなくても、アプリのアップデートを確認しながら気長に待つのが良さそうです。
なぜ機能は消えたのか——リデザインの「副作用」
事の発端は、Googleが2025年5月にPhotosエディターを大幅リニューアルしたことにさかのぼります。UIを刷新し、操作性の向上を図った大型アップデートでした。その後、12月にビデオエディターも更新されましたが、このタイミングでEffects機能がメニューから姿を消しました。公式なアナウンスはなく、ユーザーにとっては「いつの間にか使えなくなっていた」という状況です。
こうした「リデザインに伴う機能の一時的な消失」は、Google Photosに限った話ではありません。大規模なUI変更ではコードの構造自体が書き換わるため、既存の機能を新しいフレームワークに移植し直す作業が必要になります。すべてを一度に移植するのではなく、優先度の高い機能から順番に対応していく——というのが一般的な開発手法です。
実際、Effects以外にも削除されていた「Perspective correction(遠近補正)」機能が最近復活しており、Googleが段階的に欠落した機能を取り戻していることがうかがえます。
スマホ動画編集の競争は「AI」で激変中
Google Photosが機能の復旧に時間をかけている間にも、スマホでの動画編集を取り巻く環境は急速に変化しています。
TikTok・CapCutが編集体験を塗り替える
TikTokは2026年に入り、AI Imagine機能やMask編集機能などの新ツールを追加。CapCutもAI自動字幕や縦動画テンプレートといった機能を強化しており、スマホだけで完結する動画編集の質が飛躍的に上がっています。BlitzCut AIが自社ブログで公表したデータでは、TikTokクリエイターの78%がスマートフォンだけで編集を完結させているとされています。ただし、調査手法やサンプル数は開示されておらず、あくまで参考値として見る必要があります。いずれにしても、もはや「スマホ編集=簡易版」という時代ではないことは確かです。
AppleやMicrosoftも動き出した
Appleは2026年1月にApple Creator Studioをローンチし、Final Cut ProやLogic Pro、Pixelmator Proなどをサブスクリプション(月額12.99ドルまたは年額129ドル)で統合提供するサービスを開始しました。一方、Microsoftの動画編集ツールClipchampは2026年3月からプロジェクトファイルのOneDrive保存が必須となり、ローカル保存ではプロジェクトの編集ができなくなるという、クラウド前提の編集環境へと舵を切っています。
こうした動きを見ると、各社が「写真・動画の編集体験」を囲い込みの武器として重視していることがわかります。Google Photosが削除した機能を黙って放置し続ければ、ユーザーが他のツールに流れるリスクは確実に高まります。
Googleの「消して戻す」パターンは今後も続くのか
ここで気になるのが、Googleの開発方針です。同社は過去にもさまざまなサービスで「ある日突然機能を削除し、ユーザーの反発を受けてから復活させる」という動きを繰り返してきました。今回のEffects機能の経緯も、まさにその典型例と言えます。
もっとも、リデザイン後に段階的に機能を戻すこと自体は、ソフトウェア開発の現場では珍しくありません。問題は、削除時にユーザーへの説明がほぼなかった点です。「一時的に利用できなくなりますが、今後復活予定です」という一言があるだけで、ユーザーの印象はまったく変わります。
Perspective correctionに続いてEffectsが復活したことで、他にもまだ戻っていない機能があるのか、あるいは今後新しいエフェクトが追加されるのかは現時点では不明です。
「無料で使える安心感」がGoogle Photosの最大の武器
CapCutやTikTokがAI機能で先を行く中、Google Photosの動画エフェクトは決して最先端とは言えません。それでもGoogle Photosには、Googleアカウントがあれば誰でも追加課金なしで使えるという圧倒的な手軽さがあります。Google Drive・Gmail・Photosで合計15GBまでの無料ストレージとセットで写真も動画も管理できる点は、ライトユーザーにとって依然として大きな魅力です。
今回の機能復活は小さなニュースに見えますが、「ユーザーの声に応じて削除した機能を戻す」というGoogleの姿勢を示している点で、注目に値します。競合が編集機能を急速に強化する中、Google Photosがこの先どこまで進化するのか。少なくとも、すでに手元にある「無料ツール」のアップデートにはアンテナを張っておいて損はないはずです。
参考:Apple Newsroom、Windows Latest、BlitzCut AI、SocialBee、PCWorld、Windows Central、Macworld、Variety


