iPhone 5からiPhone 14シリーズまで、独自規格として採用されていた『Lightning』規格。この記事をお読みの方のなかにも、手元にLightningケーブルがある方は多いでしょう。一方で、iPhone 15シリーズからはUSB Type-Cが規格として採用済みです。
では『Lightning』規格はもう不要なのでしょうか?実はLightning規格はMacの周辺機器などにも採用されており、iPhoneがUSB Type-Cに移行したからといって「不要な規格」とまでは言えないのも事実です。
今回は『Lightning』規格の廃止理由や、同規格のケーブルの必要性について解説します。
『Lightning』規格はどうして廃止されたの?
Lightning規格が廃止に至ったもっとも直接的な要因は、2022年12月に発効されたEUの統一充電規格義務化です。2024年末までにスマートフォンやタブレットなど13種類のデバイスでUSB-Cの採用が義務付けられ、Appleもこれに従わざるを得ませんでした。
この法案をめぐっては、2021年9月にAppleが「1種類のコネクタのみを義務付ける厳格な規制はイノベーションを抑制し、欧州や世界中の消費者に害を及ぼすことを懸念している」という声明文を出していましたが、最終的にはApple側が折れた形となります。
USB Type-Cの性能向上の影響も大きい

USB Type-Cは従来、100Wまでの給電が可能でした。しかし近年の性能向上は目覚ましく、特に2021年5月のアップグレードによって最大240Wの給電に対応可能となりました。
給電性能の向上によって、USB Type-CがゲーミングPCや4Kディスプレイなど、従来は給電が難しかった高消費電力デバイスへの対応が実現しました。総じてUSB Type-Cは「もっとも汎用性が高い規格」であるといえ、Apple製品にもUSB Type-C対応を求める声はかねて根強く存在していました。
「Lightning規格を廃止するとなると、発売済みかつ世界中で流通しているデバイスへの悪影響が否めない」というのはApple側の事情としても大きく、こうした潮流のなかでもAppleはLightning規格にこだわり続けました。
しかし、前述したEUの義務化の前についに譲歩せざるを得ない状況になったと言えます。
Lightningケーブルはもう不要?
2025年現在、Lightningポート搭載の最終世代のiPhoneはiPhone 14シリーズ(2022年9月発売)です。少なくとも「新機種」の購入者にとってLightningケーブルは不要になったと言えるでしょう。Appleのこの移行は、EUの規制やユーザーの利便性向上を目的としたもので、新しい機種を買う際のポートは「USB-Cケーブル」が標準となります。

しかし、iPhone 14以前のモデルを使用している場合、充電やデータ転送には引き続きLightningケーブルが必要です。また、周辺機器(例:Lightning端子のイヤホンや車載充電器)を使用している場合、USB-Cを使うには変換アダプタが必要になることもあります。

そしてLightning規格を採用したiPhoneには、2025年現在でも極めて人気が高いiPhone 8やiPhone SEシリーズなどが含まれています。また近年のiPhoneは高価格化が顕著に進んでいるため、2025年現在でも、iPhone 12やiPhone 13の中古端末への買い替えを検討している方は少なくないのでは?
そのため、「少し古いiPhone」を使う場合、Lightning規格は依然として重要であり、Lightningケーブルが不要とは言えません。
Lightning規格採用iPhoneの全リスト
なお、Lightningポートを搭載したiPhoneは以下の通りです(発売日順)
・iPhone 5(2012年9月)
・iPhone 5c/5s(2013年9月)
・iPhone 6/6 Plus(2014年9月)
・iPhone 6s/6s Plus(2015年9月)
・iPhone SE(第1世代)(2016年3月)
・iPhone 7/7 Plus(2016年9月)
・iPhone 8/8 Plus(2017年9月)
・iPhone X(2017年11月)
・iPhone XS/XS Max(2018年9月)
・iPhone XR(2018年10月)
・iPhone 11シリーズ(2019年9月)
・iPhone SE(第2世代)(2020年4月)
・iPhone 12シリーズ(2020年10月)
・iPhone 13シリーズ(2021年9月)
・iPhone SE(第3世代)(2022年3月)
・iPhone 14シリーズ(2022年9月)
このリストを見ると、Lightningポートは2012年から2022年までの10年間にわたって採用されていたことがわかります。

なお前述の通り、iPhone 14シリーズが最後のLightningポート搭載モデルとなり、これ以降のモデル(iPhone15シリーズ~)はすべてUSB-Cを採用しています。
Lightningケーブルはもう不要?「脱Lightning」の注意点
Lightningケーブルが不要になるかどうかは、デバイスの買い替えをどのように行うかや周辺機器の互換性によって異なります。新しいデバイスを購入する際には、現在ではUSB-C採用モデルが主流のため、USB-C対応のケーブルやアダプタを用意する必要があります。
一方で中古iPhoneへの買い替えを検討している場合には、Lightningケーブルはまだまだ必要です。
最後に「脱Lightning」の注意点をご紹介します。
中古iPhoneへの買い替えを行うか?
最大のポイントは、「中古iPhoneへの買い替えを行うか」でしょう。Lightningポート搭載のiPhoneは2022年まで登場していたため、iPhone 14などへの買い替えを検討している場合は「Lightningケーブルは不要」とは言えません。面倒かもしれませんが、やはり手元にLightningケーブルとUSB Type-Cケーブルがそれぞれ必要となるでしょう。
こうした手間を嫌うのであれば、USB Type-C対応のiPhone 15以降の端末への買い替えをお勧めします。
周辺機器の互換性確認
仮にiPhone 15以降へと買い替えて「脱Lightning」を行うのであれば、周辺機器もUSB-C対応機器への移行が必要となります。特に以下は要確認です。
・イヤホン(Lightning端子モデルは変換アダプタ必須)
・車載充電器
・モバイルバッテリー
たとえば、iPhone 14ユーザーがiPhone 16に買い替える場合、従来のLightning対応イヤホンはUSB-C変換アダプタが必要になります。
Macの周辺機器も要確認
「脱Lightning」は、iPhone及びiPhoneの周辺機器さえ見直せば完了するとは限りません。たとえばMacの周辺機器は比較的最近までLightning規格が採用されていたので、手元の周辺機器の規格を再チェックしましょう。

Lightning規格はApple製品にて、長期にわたって採用された規格です。そのためiPhone、iPad以外にも、Magic MouseやMagic Trackpad、Magic KeyboardなどMacの周辺機器でLightning規格は使用されていました。
2024年秋以降、Magic MouseやMagic Keyboardの接続規格がUSB-Cへ統一されました。しかしLightning端子は近年まで主要規格として利用されていたため、2025年現在でも小売店の在庫状況によってはLightning対応商品が店頭に残っている場合があります。
さらに、従来のLightning規格製品を家庭で継続使用しているユーザーの方も、この記事をお読みの方のなかにも多いのでは?
iPhoneそのものを買い替え、なおかつMacの周辺機器も一気に買い替えるとなるとまとまった出費になることが予測されます。「脱Lightning」は現実的には段階的に、無理のない範囲で行うのが個人ユースにおいては良いでしょう。場合によってはLightningケーブルやLightning対応製品が市場から消える前に、手元に残しておきたい製品は買い集めておくのも一案かもしれません。
【余談】その他の注意点
こちらは余談ですが、2025年現在もLightning規格の端末を使い続けている方のなかには、5G非対応機種(iPhone 11以前)をお使いの方もいるでしょう。
この場合USB-C対応のiPhoneに買い替えるならば、「脱Lightning」に加えて、5G通信を前提とした通信プランの見直しや設定が必要になる場合がある点にもご注意ください。

たとえば、お使いのMVNOが『mineo』の場合、iPhone 15などの最新機種に買い替えるだけでは5G通信は有効化されません。別途、mineoのマイページから「5G通信オプション」(無料)へと申し込み、有効化しない限りは4G通信のままとなります。
古いiPhoneを利用し続けてきた方が「脱Lightning」を目的に、5G対応かつUSB Type-CのiPhoneに乗り換えた場合、5G有効化は意外な落とし穴になる場合があるためご注意ください。
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