2025年4月から日本語対応が始まったAppleの人工知能プラットフォームである「Apple Intelligence」。
長くAIの開発を進めてきたAppleの独自のアシスタント機能群ということもあって注目が集まった一方、「何ができるかわからない」「そもそも、本当にスマホにAI機能は必要なのか?」という疑問の声も聞かれます。
たしかに昨今のiPhoneは非常に高額であることも事実。その高額な理由が「AI」であるならば、AIがなくてもいいからiPhoneを安くしてほしいという考え方にも一理あります。
そこでApple Intelligenceの基本機能とほかの生成AIとの違い、将来性などについて解説します。
Apple Intelligenceとは【主な機能】
Apple Intelligenceは、Appleが開発したパーソナルAIシステムであり、iPhone、iPad、Mac、Apple Vision Proに統合され、ユーザーの文章の作成や画像の生成などに加え、タスク処理の支援を目的としています。

たとえば作文や画像生成などは「定番機能」の1つ。SNSに投稿するテキストや画像などは簡単に生成できます。このほか「スマホの通知の重要度を判断して、不要な通知を抑える」「Siriの機能強化」など汎用性が高い用途にも、AppleのAIは役立てられています。
SiriやGoogleアシスタントとの違いとは?
AppleのSiri(2011年登場)やGoogleアシスタントは、音声コマンドによる操作や情報検索を可能にしました。ただし、たとえばSiriは時刻など簡単な質問には答えられる一方で、複雑な質問に関しては直接的に回答を示すのではなく、関連するサイトをユーザーに提示するといった性能にとどまっていました。
一方、Apple Intelligenceの登場は「iPhoneへの独自AIの搭載およびオンデバイスでのAI処理」を実現したと言えます。つまりユーザーの質問に対する直接的な回答の提示が可能となりました。
さらにApple IntelligenceはChatGPTとの連携も可能。つまり、ChatGPT連携によるより高度な回答を得ることも可能となりました。

Apple Intelligenceは従来の音声アシスタントを「さらに高性能化する」のに役立っていると言えるでしょう。
そもそもスマホにAI機能は本当に必要?
とはいえ「本当にスマホにAI機能は必要か」は、見解が分かれがちな点でもあります。
スマホに搭載されているAI機能は、まだ実用性が限定的。文章の書き直しや写真の不要部分の消去など便利な機能が増えましたが、操作が複雑で、使いこなせていない人も少なくないでしょう。たとえばSellCellが2024年12月に発表したスマホのAI調査によると、Apple Intelligenceユーザーの73%、Galaxy AIユーザーの87% が新機能に対して「あまり価値がない」か「ほとんど付加価値がない」と回答しています。
一方、2025年にはAIがスマホの中心機能となり、アプリを横断して動作するエージェント型AIの登場が期待されており、操作性が大きく向上すると見られています。さらに、半導体技術や大規模言語モデルの効率化により、中価格帯の端末でも生成AIが使える環境が整いつつあり、普及率は急速に拡大しています。このように、現時点ではまだ「必要かどうかは人による」段階ですが、今後の技術進化と普及により、スマホのAI機能は日常生活に欠かせない存在へと変わっていく可能性が高いと言えるでしょう。
AI機能の「小手先どまり」感について
前述の通り多くのユーザーがAI機能の価値を実感できていないという調査結果があります。メッセージの要約や通知管理の機能なども有用ではあるものの、従来のスマホの設定で通知管理などを丁寧に行っていた人にとっては「便利ではあるが、なくても困らない機能」でもあるでしょう。
同様に画像生成なども「真新しいが、さらに本格的な生成を行うならばPCでやるべき作業」の域を出ないとも言えるのでは。現行のAI機能は「モバイル体験を大きく変えるもの」というよりは、「あってもいいが、なくてもいい」という小規模な変化しか生み出していないのではないでしょうか。
すると「AI機能がない代わりに、より安価な端末」を求める方の方が、実際には多いでしょう。AI機能はハイエンドスマホに限定的に搭載されるといった形でしか、現実的にはあまり重宝される場がないのかもしれません。
ハードウェアの制約とコスト
高度なAI処理には高性能なチップが必要となり、これがスマートフォンの価格上昇や、一部の高性能モデルへの機能限定につながる可能性があります。近年はiPhoneはもちろん、Androidでも「10万円越え」のスマホが増えており、スマホの入手性は価格面から見ると「悪化している」と言えるのではないでしょうか。
限定的な用途しか提供しないAIが「さらなるスマホの高価格化」を招くのであれば、AIはいらないと考える方が存在しても不思議ではありません。
スマホのAI機能の発展が期待される分野について
もっとも「スマホのAI機能」は大きな発展が始まったばかりの分野です。今後、さらなる飛躍や利便性の向上が見込まれる分野でもあります。
たとえばAI機能の発展が期待される、スマホの用途の1つには「ナビ」があります。

たとえばカーナビ代わりとして良く使われるアプリは「Googleマップ」です。しかし、Googleマップは車専用の適切なルート検索にはかなり難があります(※たとえばナビに特化したトヨタのmoviLinkであれば適切なナビがされる傾向があります)。
しかし、将来的にはAIにより「私はミニバンに乗っているため車幅が狭い道は案内しないでください」など自然言語かつ音声で指示可能になり、なおかつ指示を踏まえたルートの再検索が可能になるかもしれません。
全般的にAI機能が充実すると、スマホのナビアプリの利便性は今日よりも大幅に向上するでしょう。
将来的には「アプリレス」スマホの登場も期待される
将来的には、AIがユーザーの意図を理解し、個別のアプリを起動することなくタスクを実行する「アプリレス」なスマートフォン体験が実現するかもしれません。
たとえばスマホに対して「ディナーに行きたい」と話しかけたら、AIがバックグラウンドで飲食店検索をしたうえでマップアプリも起動。おすすめ店舗までのルートを検索したうえで、予約も完了してくれるようになるかもしれません。
こうした「AI活用を前提としたモバイル体験の変化」はまだ極めてかすかにしか起きていないのも事実です。現時点のスマホにおけるAIは「なくても困らない」範疇にとどまっており、AIがモバイル体験を完全に変革するのはしばらく先になるかもしれません。
※サムネイル画像(Image:Primakov / Shutterstock.com)