近年、スマートフォンの高機能化に伴い、一部端末の価格は値段がどんどん上昇しています。特に最新のハイエンドモデルともなると20万円を超えることも珍しくなく、家計への負担は決して小さくありません。
一方、大手通信キャリアが提供する「端末購入プログラム」は、月々の支払い負担を抑えつつ新しいスマートフォンを手に入れるための一つの選択肢として注目されています。しかし、これらのプログラムは仕組みが複雑で、「結局どこがお得なの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
実はキャリアの購入プログラムは「ドコモ・au」と「ソフトバンク」で全くの別物です。今回はキャリアの購入プログラムのわかりにくい「設計の違い」について詳しく見ていきましょう。

キャリアの購入プログラムは実は「ドコモ・au」と「ソフトバンク」で全くの別物
端末購入プログラムとは、大手通信キャリア(ソフトバンク・ドコモ・au)が提供するスマートフォン購入方法の一つです。多くの場合、端末を分割払いで購入し、一定期間利用後に端末をキャリアに返却することで、残りの分割支払金の支払いが免除されたり、あらかじめ設定された残価の支払いが不要になったりする仕組みです。
この端末購入プログラムは大きく分けて「半額型」(ソフトバンク「新トクするサポート」)と「残価設定型」(ドコモ「いつでもカエドキプログラム」・au「スマホトクするプログラム」)があり、仕組みが少々異なります。
両者の違いは、以下の支払いイメージにまとめると把握しやすいでしょう(※注:筆者が端末価格10万円の場合で試算したイメージであり、実際のプログラム利用時の負担額とは異なる場合があります。あくまで設計思想の違いを把握するための試算例だと捉えてください)。

つまり、両者には、
・支払いパターン
・返却後の選択肢
・設計思想(割引額か、月々の支払額か)
の大きな違いがあります。

支払いパターンの違い
「半額型」は均等な分割払い(毎月の支払額が一定)が前提です。また、一般的に半額型は残価設定型よりも分割回数そのものが多いのが一般的でもあります。
一方で「残価設定型」は最終回に大きな金額が来るのが大きな特徴です。
なお、ソフトバンクの場合、「新トクするサポート」と対象プランを契約することで、端末の支払いが月額1円~になったりすることもありますが、今回はあくまで端末単体のみの支払いの場合です。
返却後の選択肢の違い
「半額型」は基本的に返却が前提です。一方、残価設定型は返却だけでなく、買取も選べる柔軟な仕組みとなっています。
設計思想の違い
半額型は「割引額」にフォーカスしており、たとえば「最大半額割引」といったキャッチコピーに惹かれる方にとって魅力的でしょう。一方で残価設定型は「月々の支払額」にフォーカスしており、月々の負担感は小さいことが一般的です。
あくまでシンプルに考えるならば「2年後に端末を買い取らない前提で問題なく、半額の大きな割引を確実に受けたい」ならば半額型が良いでしょう。一方で月々の負担額を小さくしながら、残価メリットを活かし、なおかつ将来的に買い取る選択肢も視野に入れるならば残価設定型も良いでしょう。
「半額型」の購入プログラムとは
このようにキャリアの購入プログラムには「半額型」「残価設定型」の2通りがあります。このうち半額型の主なプログラムには、ソフトバンクの「新トクするサポート」が挙げられます。
ソフトバンクの購入プログラム:「新トクするサポート(スタンダード/プレミアム/バリュー)」

前述の通り「半額型」プログラムは、ソフトバンクの「新トクするサポート」が代表例として挙げられます (ソフトバンク公式サイト)。基本的には、端末を48回などの長期分割払いで購入し、プログラムで定められた期間(たとえば25カ月目以降)に端末をキャリアに返却し、特典利用を申し込むことで、残りの分割支払金(多くの場合、最大で総額の半額に相当する額)の支払いが免除されるというものです。
仕組みが比較的シンプルで、「実質半額」といったように割引額がわかりやすい点が挙げられます。端末の人気や中古市場の価格変動に左右されにくく、常に一定の割引額が期待できる場合があります。特に、中古価格がiPhoneと比較して下落しやすい傾向にあるAndroid端末などでも、安定した恩恵を受けやすいです。
なお、「新トクするサポート」は機種ごとに「スタンダード」「プレミアム」「バリュー」の3種類があり、特典申込時期と支払い不要回数が異なります。
「プレミアム」の場合、48回払いで購入し、13カ月目に特典利用を申し込みすることができるため、36回分の機種代金の支払いが不要に。たとえばiPhone 16 Pro(128GB)の場合、販売価格18万8,640円に対し、総額2万9,700円で使用可能。半額どころか6分の1の価格で1年強端末を使えることになります。
「残価設定型」プログラムとは

「残価設定型」プログラムの代表例としては、ドコモの「いつでもカエドキプログラム」(ドコモ公式サイト) や、auの「スマホトクするプログラム」(au公式サイト) があります。これらのプログラムでは、スマートフォン購入時に、キャリアがあらかじめ数年後(たとえば24カ月後)の端末の買取予想価格(これを「残価」と呼びます)を設定します。
ユーザーは、端末の価格総額からその残価を差し引いた金額を分割で支払い、指定された期間(たとえばドコモなら23カ月目まで)に端末をキャリアに返却すれば、最終回(24回目など)に支払う予定だった残価の支払いが不要になる、という仕組みです。
市場の実績などに基づいて残価が設定されるため、キャリア側にとっての将来の買い取り価格変動リスクが「半額型」に比べて比較的低いとされ、その結果としてユーザーへの過度な負担増を避けやすい構造と言われています。
一方で、設定される残価は、機種や購入時期によって異なります。一般的に、iPhoneのような人気機種やリセールバリューが高いとされる機種は残価も比較的高く設定される傾向にありますが、そうでない機種は低めに設定されることがあります。
キャリアの購入プログラムを賢く選ぶためのポイント
キャリアの購入プログラムは魅力的ですが、自分の利用スタイルや価値観に合わないものを選ぶと、かえって損をしてしまう可能性もあります。ここでは、初心者や節約志向の方がプログラムを選ぶ際に特に注意すべきポイントを解説します。
まずシンプルに「ソフトバンク半額型」「ドコモ・au残価設定型」に向くのは、それぞれどのような方なのか、判断基準を見ていきましょう。

「半額型」に向いている人は、毎月同じ金額を支払うことが決められていることや、割引率のわかりやすさを重視している人です。
また、13カ月目もしくは25カ月目以降にプログラムを利用しないと損になってしまう場合があるので、端末を使い続けるのではなく、決められたタイミングで確実に機種変更したい人に向いています。

一方、「残価設定型」に向いている人は、月々の支払い額を最小限に抑えたい人。また、期限が来ても残価を一括で支払うかさらに分割すれば使い続けることもできるので、ひとつの機種を長く使い続けたい人にもおすすめです。
さらに詳しく、いくつかポイントとなる基準を見ていきましょう。
端末を最終的に手元に残したいか?
プログラム利用後は端末をキャリアに返却することが前提なのか、それとも、将来的には自分のものとして所有し続けたいかは重要なポイント。「半額型」は基本的には返却が必須ですが、「残価設定型」では残価を支払うことで端末を買い取れるオプションが用意されていることが一般的です。
月々の支払い VS 総支払額:どちらを優先するか冷静に判断
購入プログラムを利用すると、月々の分割支払額が大幅に軽減されることが多く、これが大きなメリットです。しかし、この月々の支払額の安さだけに目を奪われず、プログラム期間中の総支払額や、万が一途中解約した場合、あるいはプログラム満了後に端末を買い取る場合の総支払額がどうなるのかをシミュレーションすることが非常に重要です。
プログラムを利用しないで購入した場合(一括購入や通常の分割払い)と比較して、トータルでどちらが自分の支払い計画に合っているかを冷静に判断しましょう。
「最初からプログラムを利用しない」という手もある
最終的には端末を自分のものにしたい所有希望派であれば、ドコモやauのような残価設定型のプログラムで、プログラム期間満了後に設定された残価を支払って端末を買い取る選択肢を視野に入れると良いでしょう。
一方で残価設定型のプログラムで高く評価されるスマホは、iPhoneのように市場価格が安定している一部の端末に限られているのも事実です。つまりAndroidのマイナーな端末などでは、残価設定型プログラムの恩恵が小さくなる場合があります。
こうした場合は「最初からプログラムを利用しない」という手もあります。プログラムは多くの場合でお得ですが、機種や価格帯によっては「必ず使うべきもの」とまでは言えないこともあるので注意しましょう。
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