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5Gなのに通信が遅い?4Gで十分な理由と「なんちゃって5G」の実態とは

5Gは「超高速・大容量」「超低遅延」などの特徴を持ち、4Kや8Kといった高精細動画の瞬時ダウンロード、リアルタイムでの遠隔医療や自動運転、そして身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながるIoT社会の実現を支える通信技術として脚光を浴びています。

一方で手元のスマホで5G通信を実際に行ってみると、「4Gと変わらないくらい通信が遅い」と感じることも多いのでは。実は昨今、人口カバー率が急激に伸びている5Gの実態はほとんどが「なんちゃって5G」に近いものです。

「スマートフォンのアンテナ表示は『5G』なのに通信が遅い」「建物に入るとすぐに4Gに切り替わる、あるいは圏外になることがある」「正直、4Gと体感が変わらない」、このような不満の声は、決して珍しいものではありません。総務省の「令和2年版 情報通信白書」でも、5Gに対する期待として「通信速度が速くなる」ことがもっとも多く挙げられていました。

今回は5Gが思ったよりも遅い理由や「なんちゃって5G」の実態について解説します。

5Gなのに通信が遅い?4Gで十分な理由と「なんちゃって5G」の実態とはの画像1
(Image:Shutterstock.com)
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5Gなのに通信が遅い?「なんちゃって5G」の実態

5Gなのに通信が遅い?「なんちゃって5G」の実態1
(画像は「au」公式サイトより引用)

総務省は2023年度末時点で5Gの人口カバー率が98.1%になったことを公表(2024年8月の発表)。この数字だけを見れば、日本中ほとんどどこでも5Gが使えるように思えるでしょう。しかし、この数字の内実こそ、ユーザーの体感との大きな乖離を生む「からくり」となっています。

この高いカバー率の大部分は、既存の4G用周波数帯を5Gでも利用できるようにする「NR化(New Radio-ization)」や「ダイナミック・スペクトラム・シェアリング(DSS)」という技術によって達成されています。これは、基地局のソフトウェアを更新するだけで対応できるため、キャリアにとっては効率的に「5Gエリア」の地図を塗りつぶせるというメリットがあります。

一方で、この「転用5G」で使われる電波はあくまで4Gのものであり、通信特性(速度や遅延)も4Gとほとんど変わりません。スマートフォンの表示は「5G」に変わっても、その実態は4Gと大差ないため、「なんちゃって5G」と揶揄されることも。これが「5Gと表示されているのに4Gと速度が変わらない」理由です。

一方、各キャリアは、まずこの転用5Gで全国的な「面」のカバレッジを確保しつつ、都市部や繁華街などのトラフィックが集中する場所から順次、Sub6やミリ波といった5Gの本当の高速さを発揮するための環境づくりを進めています。

5Gなのに通信が遅い?「なんちゃって5G」の実態2
(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

そのためキャリアの公式サイトでエリアマップを見る際は、単に色が塗られているかだけでなく、その色の凡例を確認することが非常に重要です。

・色の濃いエリア(例:赤、濃いピンク): ミリ波やSub6による「真の5G」エリア。高速通信が期待できる。
・色の薄いエリア(例:薄いオレンジ、黄色): 4G周波数転用による「なんちゃって5G」エリア。速度は4G並み。

自分が本当に高速な5Gを使いたい場所が、どの色のエリアに属しているかを確認しましょう。

Sub6/ミリ波という新しい電波の扱いにくさについて

5Gの性能を最大限に引き出すためには、4Gとは異なる新しい周波数帯が割り当てられています。しかし、これらの周波数帯が持つ物理的な特性もエリア展開の障壁になっています。

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(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

ミリ波

「ミリ波」は、5Gの「超高速・大容量」を支える周波数帯です。ただし理論値では20Gbpsに達する速度を叩き出すポテンシャルを秘めていますが、その電波は非常に高い直進性を持ち、極めて減衰しやすい(弱まりやすい)という弱点を抱えています。ビルや壁はもちろん、人体、ガラス、さらには大気中の雨粒さえも電波を遮断・減衰させる原因となります。

実際、総務省も「令和2年 情報通信白書」の中で、高い周波数帯の電波は低い周波数帯の電波に比べて「電波の届く距離が短くなるほか、電波の直進性が高く、障害物があっても回り込むことができない」と解説しています。

そのため、ミリ波がカバーできる範囲は半径数十メートルから百メートル程度と非常に狭く、屋外のスタジアムや主要駅、特定の交差点といったピンポイントなエリア展開に限定されているのが現状です。

Sub6

「Sub6」は、ミリ波よりは周波数が低く、障害物にも比較的強いため、現在の5Gエリア展開の主力となっています。しかし、Sub6ですら、4Gで広く使われてきた「プラチナバンド」(700MHz~900MHz帯)と比較すると、電波が遠くまで届きにくく、建物の奥まで回り込みにくいという性質があります。結果として、ビルの内部や地下街などでは電波が著しく弱まり、通信が不安定になりがちです。

5Gの新しい周波数帯(ミリ波、Sub6)は、4Gよりもはるかに多くの基地局を高密度に設置しない限り、同等のエリアカバレッジを達成できません。これには莫大な時間とコストが必要となり、エリア整備が道半ばにあることが、つながりにくさの根本原因です。

5Gで多発する「パケどまり」について

5Gで多発する「パケどまり」について1
(画像は「ソフトバンク」公式サイトより引用)

「なんちゃって5G」が国内の5Gの主軸になってしまっている現状はこれまで述べてきたことが理由になっています。そのため、「5G」と表示されていてもユーザーにとっては思うような速度が出ていないのが現状です。

なおかつ、アンテナピクトは5本立っているのに、動画が再生されないというような「パケ止まり」と呼ばれる現象も5Gでは起きがち。この現象の原因も、やはり現在の5Gの主流である「NSA(ノン・スタンドアローン)方式」の構造的な弱点にあります。

NSA方式は、データ通信の経路上では5Gの電波を使いますが、通信の制御(接続の確立や維持など)は4Gの電波に依存しています。そのため、スマートフォンは常に4Gと5Gの両方の電波を探し、連携させようとします。

問題は、5Gの電波が非常に弱いエリアの境界線上で発生します。スマートフォンが「かろうじて掴める微弱な5G」に接続を試み続けるものの、電波が弱すぎてデータがスムーズに流れません。かといって、安定した4G通信に速やかに切り替わることもできず、一種の「通信の迷子」状態に陥ってしまうのです。

現状は「5Gオート」で4Gも併用するのが賢い選択かも

「この電波状況なら無理に5Gにつなぐより、安定した4Gに切り替えた方がユーザー体験が良い」と考える方も多いでしょう。また5G、特にSub6やミリ波での通信は、4Gに比べてバッテリー消費が激しくなる傾向があります。

そのため現状では「4Gも併用する」方が、やはりユーザー体験としては良いでしょう。

たとえばiPhoneであれば、以下の手順で「5Gオート」を有効にできます。デフォルトでONになっている場合もありますが、もしもOFFになっている場合は有効化しておきましょう。これは、5Gに接続しても速度が大きく向上しない場面では、バッテリー消費を抑えるために自動的に4Gに切り替えるのがおすすめ。

設定方法は、設定アプリ→「モバイル通信」→「通信のオプション」→「音声通話とデータ」→「5Gオート」を選べばOKです。

5Gと衛星の連携技術の発展にも期待が集まる

余談ではありますが、今後の5G通信の進化として注目されているのが、衛星通信との連携です。従来の地上基地局だけではカバーしきれない山間部や離島、さらには災害時における通信インフラの確保など、多様なニーズに応えるために、衛星と5Gネットワークを組み合わせる技術開発が進んでいます。

たとえば、スカパーJSATは2025年5月に衛星と地上間で高速通信規格「5G」を使った通信の実証実験に成功したことを発表。今後は都市部だけでなく、全国どこでも均一な通信環境が整うことは間違いなく、5Gの本当のポテンシャルが発揮される時代が近づいています。

※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)

スマホライフPLUS編集部

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