2025年7月30日にカムチャツカ半島付近を震源とするM8.8の地震が発生し、日本の太平洋沿岸の広い範囲に津波警報や津波注意報が発令されました。このような大きな災害が起きたときに、真っ先に心配になるのが家族や友人の安否です。大規模災害時は発信規制で電話が繋がりにくくなるため、なおさら不安を掻き立てられるでしょう。

そのようなときに便利なのが、携帯電話会社などが提供している災害用伝言サービスです。自分の安否情報を登録しておくことで、家族や友人からスムーズに確認してもらえるのがメリットです。
今回の津波警報でも各社の災害伝言板サービスの提供が開始され、執筆時点(7月31日)現在も運用中です。
これらのサービスはきわめて画期的なシステムなのですが、その便利さを本当に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。今だからこそ知っておきたい災害用伝言サービスの仕組みや使い方について解説します。
そもそも「災害用伝言サービス」とは?
「災害用伝言サービス」とは、震度6弱以上などの大規模災害時のみ限定で提供される「災害用伝言板」や「災害用伝言ダイヤル」などの総称です。発信規制などで電話がつながりにくくなるような状況でも、安否情報の登録・確認ができるのが特徴です。
「災害用伝言板」はインターネット上に開設され、文字の伝言で安否情報を登録・確認できます。携帯電話の4大キャリア(ドコモ/au/ソフトバンク/楽天)が、それぞれに提供しているほか、NTTも「web171」という災害用伝言板を提供しています。いずれも定型の安否情報に加え、任意で全角100文字以内の伝言も追加できます。
一方、「災害用伝言ダイヤル」は、「171」に電話をかけて音声でメッセージを登録・確認できるサービスです。
なお、各サービスによって伝言の登録件数やアクセス方法などに違いがあります。次から各サービスの概要を解説しますので、しっかりチェックしておきましょう。
4大キャリアが提供する「災害用伝言板」の概要
4大キャリアの災害用伝言板では、安否情報の登録ができるのは、各キャリアの契約者のみに限定されます。しかし、キャリアによっては格安プラン(例:au「povo」)のユーザーは登録できないなど、扱いにはばらつきがある点に要注意です。MVNO(格安SIM)のユーザーも4大キャリアと契約しているわけではありませんので安否の登録はできません。一方、安否の確認に関しては誰でも制限なく利用が可能です。登録した伝言は、災害用伝言板の運用が終了すると自動的に削除されます。
スマホから災害用伝言板にアクセスする方法は、ブラウザから利用するweb版のほか、キャリアによっては専用アプリが用意されています。
また、楽天モバイル以外では、指定した相手から安否登録があった場合に自動的にメールで通知してくれるサービスも提供しています。
●ドコモ「災害用伝言板」は→こちら
●au「災害用伝言板サービス」は→こちら
●ソフトバンク「災害用伝言板」は→こちら
●楽天モバイル「災害用伝言板」は→こちら


NTTが提供する「web171」の概要
「web171」は、NTTが提供している災害用伝言板です。インターネット環境があれば誰でも利用できるので、MVNOユーザーでも安否の登録が可能です。伝言の最大登録件数は20件、最大保存期間は運用終了時もしくは最大6ヶ月間となっています。また、キャリアの災害用伝言板と同様に、指定した相手から安否登録があった場合にメールなどで通知してくれるサービスも利用できます。
●NTT「web171」は→こちら

NTTが提供する「災害用伝言ダイヤル(171)」の概要
「災害用伝言ダイヤル(171)」は、NTTが提供する音声伝言サービスです。伝言センターが被災地域の外にあるため、大規模災害時もつながりやすくなっています。1回の録音は30秒以内、伝言数は最大20件までの範囲で災害ごとに設定されます。webの操作が苦手な人はもちろん、ネットが使えない状況でも電話だけで安否情報を確認できます。
●NTT「災害用伝言ダイヤル」は→こちら

本当にすごいのはここ! 各サービスの伝言データは連携している!
これらの災害用伝言サービスは個別でも十分に便利なのですが、本当にすごいのはここからです。各社から登録された伝言データは相互連携しており、どのサービスからアクセスしても全社の伝言を確認できるんです。
例えば、楽天モバイルの災害用伝言板に安否が登録されている場合、ドコモの災害用伝言板から伝言の有無を確認したとします。この場合、画面上に楽天モバイルの該当データへのリンクを表示してくれるので、それをタップするだけで伝言を確認できるようになっています。
さらに、災害用伝言ダイヤルから電話をかけた場合は、災害用伝言板にあるテキストメッセージを音声変換したうえで再生することができます。
一方、災害用伝言ダイヤルに録音された音声メッセージは「web171」と連携しているので、キャリアの災害用伝言板から確認した場合はweb171の該当データのリンクへ移動し、音声ファイルをダウンロードすることで音声メッセージを再生できます。
伝言データの連携によりどこからでも確認できる

災害用伝言サービスの実際の使用手順
それでは、各サービスの使用手順を一通りご紹介します。いずれのサービスでも、電話番号で安否登録・確認する形になっています。安否の確認時には、調べたい相手の電話番号を入力して安否情報があれば表示されるしくみです。
4大キャリアの災害用伝言板の手順
ここではドコモの専用アプリ「災害用キット」を例に使用の流れをご紹介します。


続いて、登録された伝言を家族や友人などが確認する場合の手順です。


web171の手順
NTTの災害用伝言板の「web171」を使う場合は、ブラウザで公式サイトにアクセスして登録・確認を行います。すでに解説したように、4大キャリアの災害用伝言板、NTTの災害用伝言ダイヤル171にある伝言も確認できます。

登録された伝言を確認する場合は、以下のように「確認」から行えばOKです。


災害用伝言ダイヤル171の手順
以下の図のように、ガイダンスに従って番号を押して録音・再生を行います。他の人に聞かれたくない場合は、暗証番号付きで録音・再生が可能です。あらかじめ平時のときに、家族や友人と暗証番号を決めておくといいでしょう。
すでに解説したように、他社の災害用伝言板にメッセージがある場合は、それを音声に変換したうえで再生できるのが画期的なポイントです。

体験利用日に試して操作に慣れておこう
災害用伝言サービスは震度6弱以上などの大規模災害時にのみ運用が行われますが、平時の際も操作に慣れておけるように体験利用日が設けられています。大きな災害時に初めて使おうとしても、なかなかスムーズにはいかないものです。体験利用日に実際に試してみて、いざというときに困らないようにしておきましょう。
●災害用伝言サービスの体験利用日(※開始・終了時刻はサービスにより異なる)
・毎月1日・15日
・正月三が日(1月1日~1月3日)
・防災週間(8月30日~9月5日)
・防災とボランティア週間(1月15日~1月21日)
LINEユーザー同士なら「LINE安否確認」が使いやすい
今回の津波警報で気づいた人も多いと思いますが、LINEでは震度6以上などの大規模災害時に「LINE安否確認」の案内が表示され、「安否を報告」から安否を簡単に登録できるようになっています。また、安否報告をしている友だちの状況を確認したいときは、友だちリストに表示される「安否確認」から一覧で確認できます。


まとめ
いかがでしょうか? 災害用伝言サービスは、震度6弱以上の地震など大きな災害の際にのみ稼働する安否情報の登録・確認システムです。各社の安否データが連携しており、誰でも利用しやすいのが特徴です。これほど画期的な安否情報システムがあるのは、自然災害が多い日本ならではの事情といえるでしょう。
4大キャリアのユーザーであれば、契約先のキャリアが提供している災害用伝言板を、MVNOを利用している人はNTTの「web171」を利用しましょう。また、ネット環境が利用できず、通話しかできない場合はNTTの「災害用伝言ダイヤル171」に電話をかけて安否登録してください。
記事内で案内したように、各サービスには体験利用日が設けてあります。大切な家族や友人と一緒に実際に試して、いざというときにスムーズに利用できるように練習しておくことをおすすめします。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)※画像は一部編集部で加工しています