スマホが生活の必需品となり、LINEなどのアプリで連絡を取り合うことが当たり前になった現代。それでも、実家の連絡先や各種契約の登録などで「固定電話」を維持しているご家庭もまだあるでしょう。

一方でNTT東西は、メタル回線(従来の銅線)を利用した加入電話などの基本料金を、2026年4月から引き上げる方針を表明済み。具体的な値上げ幅は、月額220円となる見込みです。
220円は小さく見えますが、年間に直すと2,640円の負担増になります。
年間2,640円の値上げとなる固定電話を、2026年以降も家庭で維持する意味はあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
月額220円、年間で2,640円の固定費増

先述した通り、NTT東日本と西日本は2026年4月1日利用分から、住宅用電話サービスを一律220円値上げします(事務用は330円)。たとえば東京では、通常プランを契約している場合は1,870円から2,090円となります。

重要な点は、今回の値上げが全ての固定電話に対するものではないということです。対象となるのは、昔ながらの銅線を使った「メタル回線」を利用しているユーザーです。
近年普及している、光回線を利用した「ひかり電話」などは、今回の基本料金値上げの直接的な対象ではありません。
通信業界全体のコスト構造の変化により、将来的に料金が変わる可能性はゼロではありませんが、今回はあくまで、旧来のインフラ設備を使っている層への負担増であるという点を理解しておく必要があります。
IP網への移行と「2024年問題」のその後
実は、固定電話を支えるネットワークは2024年1月に大きな転換点を迎えました。局内の交換機が老朽化で限界を迎えたため、中継ネットワークが従来の「PSTN(公衆交換電話網)」から「IP網(インターネットプロトコル)」へと切り替わったのです。
しかし、メタル回線で加入電話を利用している家庭では、各家庭から局舎までの『ラストワンマイル』部分に古い銅線が残っており、その維持費がかかり続けます。
ネットワークの中枢部分が更新されても、家庭と局舎をつなぐ物理的な銅線が残っている限り、その維持費は生じ続けます。今回の2026年の値上げは、この「物理的なメタル回線の維持」にかかるコストを、利用者に応分に負担してもらうための措置であると解釈できます。
老朽化する設備と維持コストの高騰

高度経済成長期を中心に全国で敷設されたメタル回線(銅線)は、すでに数十年が経過し、設備の老朽化が進んでいます。
これらを維持・管理し、台風や地震などの災害時には復旧作業を行うためには、莫大なコストがかかります。これまでは多くの加入者からの収入でこのコストを賄ってきましたが、加入者が激減した現在、従来の料金設定のままでは赤字が膨らむ一方なのです。
いわば「少なくなった人数で、巨大で古くなったインフラを支えなければならない」という状況に陥っており、これが一人当たりの負担増(値上げ)につながっています。
固定電話はもう解約すべきか?

端的に言えば、現在固定電話を「電話のみ」で利用しており、電話番号の登録先を携帯電話番号に変更できる場合、固定電話を解約しても問題ないでしょう。
一方、たとえば自営業をしていて固定電話が必要、FAXを利用するといった、固定電話が欠かせない場合は、そのまま継続するか、メタル回線以外のサービスへの乗り換えを検討するとよいでしょう。
もし、なんとなく「昔からあるから」という理由だけでメタル回線の固定電話契約を続けているのであれば、このニュースは絶好の見直しの機会です。
まずは、自宅の電話回線が「メタル回線」なのか「ひかり電話」なのかを確認することから始めましょう。そして、過去1年間に固定電話で「本当に必要な通話」を何回したかを思い出してみてください。その回数がゼロ、あるいは数回であるならば、年間で数万円規模の維持費を払い続ける価値が本当にあるのか、一度冷静に見直すべきタイミングです。
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