携帯番号を変えずに、携帯会社やブランドを変更できる「モバイルナンバーポータビリティー(以下MNP、番号持ち運び制度)」がスタートしてから17年。この制度により、他社への乗り換えがしやすくなった。総務省はさらに2024年12月26日から、新たな割引制度「お試し割」を解禁し、乗り換えを後押しする動きを見せるが、人々の利用意向に変化はあるのだろうか。ICT市場を調査するMM総研の実施した「MNP利用実態とお試し割の利用意向」を見てみよう。
累計1億件を突破したMNPだが、ひとりあたりの利用頻度は“0~2回”
MNPがスタートしたのは2006年10月24日で、同年10月1日にボーダフォンがソフトバンクに社名を変更したタイミングと重なり、注目を集めた。2010年7月に累計1,000万件を超え、翌年以降は順調に増加。2023年10月には累計1億件に到達し、さらに増加の一途をたどっている。
MNPの利用件数が拡大した要因として、自社の通信回線を持たないMVNO(仮想移動体通信事業者)の台頭や楽天モバイルの躍進、手数料無料化やワンストップ化といったMNPが利用しやすい環境の整備、物価高騰による携帯料金の見直し意識の向上などが考えられる。
しかし、2024年12月20日~23日の期間、全国の15歳から69歳までの男女1,259人を対象に実施したインターネット調査では、ひとりあたりのMNP利用回数が、意外にも少ないことが明らかになった。MNPを1回以上経験したことがあると回答した人(回数は不明を含む)は50.7%と、約半数という結果に。そのうち利用回数の最多は、「1回」が25.9%、「2回」が10.5%と続き、「6~10回」「11回以上」は合わせても0.6%にとどまったことから、回線を次々と乗り換える「ホッピング」を行う人は、ほんの一握りであることが判明した。
利用意向がわずか1割未満の“お試し割”、乗り換えの影響は限定的か
他社の通信回線への乗り換えを後押しする新制度として注目されている「お試し割」。SIMカード単体での新規契約をすると、最長6カ月間、上限2万2,000円(税込み)の割引が受けられるお得な制度だ。ただし、適用範囲は1社あたり1回までで、かつ継続利用が条件。そのため、同社のメインブランドからサブブランドへの乗り換えは適用外となる。
お試し割の説明を行ったうえで、同制度の利用意向を尋ねたところ、「利用して新しい番号を追加で契約したい」が2.1%、「利用して別会社のサービスに変更(MNP)したい」が7.2%と、現時点でお試し割の利用意向を示した人は、わずか9.3%にとどまった。一方、「利用したくない」と回答した人は56.9%と、過半数を超えるという結果に。
お試し割を利用したくない理由として最も多かったのは「現在のサービスに満足している」で、次いで「契約手続きをするのが面倒」だった。各社さまざまな料金プランを打ち出しており、多くの人が現状のサービスで満足しているようだ。また、お得な制度であっても乗り換えによる手続きの煩雑さを敬遠し、利用に消極的であることが判明した。
さらに、説明を受けても「お試し割の仕組みがわからない」と回答する人や割引が終わった後の月額料金を考慮し、利用をしないと回答する人も。
これらの結果を踏まえると、お試し割は他社の乗り換えを後押しする制度として、不十分だと言わざるを得ない。国は、消費者のニーズを的確に捉えた施策の実行が求められていると言えるだろう。
出典元:【MM総研】
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