
いつもの朝が、突然バグった
2026年2月18日の朝、スマホでYouTubeを開いたら画面が真っ白だった──そんな経験をした方は、おそらく数千万人規模でいるはずです。
「Wi-Fiの調子が悪いのかな」とルーターを再起動した人。アプリを再インストールした人。とりあえずXで「YouTube 不具合」と検索して「自分だけじゃなかった」と安堵した人。筆者も、まさにその一人でした。
しかし今回の障害、ただの”サーバー落ち”とは根本的に性質が違います。壊れたのはYouTubeそのものではなく、「おすすめ(レコメンデーション)」というたった一つの機能でした。そしてそれだけで、月間25億人が使う世界最大の動画プラットフォームが”事実上の停止”に追い込まれたのです。
この出来事は、私たちのスマホ生活の「見えない土台」がいかに脆いかを、2時間だけ可視化してくれました。
何が起きたのか?──障害の全容を整理する
タイムライン:発生から復旧までの約2時間
日本時間の午前10時ごろ、YouTube全体で異変が始まりました。ホーム画面、ショートタブ、アプリの動画一覧──あらゆる場所からサムネイルが消失。Downdetectorには米国だけで32万件超、英国でも3万件以上の障害報告が殺到しました。日本でもXのトレンドに「YouTube不具合」が入り、ウェザーニュースLiVEはYouTube配信を断念してTikTokへの誘導を開始するなど、現場は混乱状態に。
窓の杜の報道によれば、日本ではトップページが午前11時26分ごろに復旧。しかし動画プレーヤー横のおすすめ欄はしばらく空白のままで、TeamYouTubeが完全復旧を告知したのは正午すぎでした。
「壊れたのは”おすすめ”だけ」という衝撃
ここが今回の障害の最も重要なポイントです。YouTubeは完全に死んだわけではありませんでした。
・登録チャンネルの一覧は正常に表示されていた
・検索機能も動いていた
・動画のURLを直接入力すれば再生もできた
つまり「自分で見たいものを探しに行く」手段は残されていたのです。にもかかわらず、多くのユーザーが「何を見ればいいかわからない」状態に陥りました。
なぜ”おすすめ”が止まるとYouTubeは使えなくなるのか

私たちは「選んでいる」のではなく「選ばされている」
YouTubeの1日あたりの総視聴時間は10億時間以上。このうち、ユーザーが検索やチャンネルページから自発的にたどり着いた視聴は、実は全体の一部に過ぎません。Googleが過去に公開したデータによれば、YouTube上の視聴の約70%以上がレコメンデーション経由で発生しています。
ホーム画面を開く → おすすめに並んだサムネイルを眺める → 何となく気になったものをタップする。この「何となく」の裏側で、ユーザーの視聴履歴・検索履歴・滞在時間・スキップ率などを解析する巨大なAIが動いています。私たちが「自分で選んだ」と思っている動画の大半は、実はアルゴリズムが「あなたはこれを見たいはずだ」と判断して差し出したものなのです。
YouTubeだけの問題ではない
この構造はYouTubeに限った話ではありません。TikTokの「おすすめ」フィード、Instagramの「発見」タブ、Spotifyの「Daily Mix」、Netflixのトップ画面──現代の主要プラットフォームは軒並み、レコメンデーションエンジンを”玄関口”に据えています。
今回のYouTube障害は、もしTikTokやNetflixで同じことが起きたらどうなるか、という問いをも突きつけています。おすすめが消えたSpotifyで、あなたは自分が聴きたい曲のタイトルをいくつ思い出せるでしょうか。
クリエイターにとっては”収入が止まる停電”
見過ごされがちな「作り手」へのダメージ
一般ユーザーにとっては「2時間YouTubeが見られなかっただけ」かもしれません。しかし、YouTubeを仕事場にしているクリエイターにとって、この障害は予告なしの停電に等しいものでした。
ホーム画面に動画が表示されないということは、新規視聴者との接点が完全に断たれるということです。特に、この時間帯に予約投稿を設定していたクリエイターへの影響は深刻です。YouTubeのアルゴリズムは、動画公開直後の初動データ(クリック率・視聴維持率)を重視して、その後のおすすめ表示頻度を決定します。障害中に公開された動画は、この初動評価のチャンスを丸ごと失った可能性があります。
プラットフォーム依存のリスクが再び浮上
そして見逃せないのは、Googleからは事前の警告も、事後の補償もなかったという事実です。ウェザーニュースLiVEがTikTokへ即座に切り替えたように、「YouTube一本足打法」の危うさを痛感したクリエイターやメディアは少なくないでしょう。
これは”笑い話”ではなく”警告”だ
今回の障害時間はわずか2時間。大きな実害が出る前に復旧したのは不幸中の幸いです。しかし、この出来事を「あー、びっくりした」で終わらせるのはもったいない。
おすすめが消えただけで世界中がYouTubeの使い方を忘れた──この事実が示しているのは、私たちの日常がいかにアルゴリズムという”見えないインフラ”に支えられているか、ということです。
電気や水道と同じように、レコメンデーションは「あって当たり前」のインフラになりつつあります。しかし電気や水道と違い、その供給元は一つの民間企業であり、冗長性の確保やSLA(サービスレベル保証)は私たちユーザーの手の届かない場所にあります。
まとめ
障害が起きてから慌てるのではなく、普段から「おすすめに頼りすぎない」習慣を持っておくことが、デジタル時代のちょっとしたリスクヘッジになります。
① お気に入りのチャンネルは「登録」だけでなく「通知ON」にする。 おすすめに表示されなくても、通知が来れば見逃しません。
② 気になった動画は「後で見る」リストに保存する癖をつける。 自分だけのプレイリストは、アルゴリズムが止まっても消えません。
③ YouTube以外の情報接点を持っておく。 Podcast、RSSリーダー、ニュースレターなど、アルゴリズムに依存しないコンテンツ取得手段を一つは確保しておきましょう。
出典:【Youtube】
※サムネイル画像はスマホライフPLUS編集部が作成しています。



