マイナンバーカードの健康保険証利用、通称「マイナ保険証」は、2024年12月2日以降、従来の健康保険証に代わる新しい医療受診の仕組みとして本格的に導入されました。しかし、実はマイナ保険証には複数の「有効期限」があることを知っていましたか?
特に重要なのが、マイナ保険証として利用するために必要な「電子証明書」の有効期限です。この電子証明書の有効期限が切れると、マイナ保険証として利用できなくなり、医療機関での受診時にトラブルが発生する可能性があります。

マイナ保険証の「2つの有効期限」とは?
そもそもマイナンバーカードには、実は2つの異なる有効期限が設定されています。ひとつはカード自体の有効期限、もうひとつは電子証明書の有効期限です。
マイナンバーカード本体の有効期限

まず1つ目は、マイナンバーカード本体の有効期限です。これは、マイナンバーカード自体が有効な身分証明書として機能する期間です。
・成人の場合:発行日から10回目の誕生日まで
・未成年者の場合:発行日から5回目の誕生日まで

たとえば、30歳でマイナンバーカードを取得した場合、40歳の誕生日までがマイナンバーカード本体の有効期限となります。未成年者の場合は、顔写真の変化が大きいため、より短い期間で更新が必要となっています。マイナンバーカード本体の有効期限が切れると、身分証明書としての機能が失われ、マイナ保険証としても利用できなくなります。
ただし、マイナンバーカード本体の有効期限は比較的長期間であるため、日常的に注意すべきは次に説明する電子証明書の有効期限です。
電子証明書の有効期限

より重要なのが、マイナンバーカードのICチップに搭載された「電子証明書」の有効期限です。
・電子証明書の有効期限:発行日から5回目の誕生日まで
電子証明書は、マイナンバーカード本体よりも短い期間で有効期限が設定されています。これは、デジタル認証のセキュリティを高く保つためです。電子証明書は、マイナ保険証としての利用だけでなく、マイナポータルへのログインやコンビニでの各種証明書取得など、さまざまなオンラインサービスで本人確認に使用されます。
重要なポイントは、マイナ保険証として利用するためには、この電子証明書が有効である必要があるということです。マイナンバーカード本体の有効期限が残っていても、電子証明書の有効期限が切れていれば、マイナ保険証として利用することはできません。

たとえば、25歳でマイナンバーカードを取得した場合は以下の通りです。
・マイナンバーカード本体の有効期限:35歳の誕生日まで
・電子証明書の有効期限:30歳の誕生日まで
この場合、30歳の誕生日を迎える前に電子証明書の更新手続きを行わなければ、マイナ保険証として利用できなくなってしまいます。
有効期限の確認方法は?
最も確実で分かりやすい確認方法は、市区町村から送付される「有効期限通知書」です。有効期限の2~3カ月前をめどに、住民登録をしている市区町村から自宅に郵送されます。たとえば、電子証明書の有効期限が6月末の場合、3月~4月頃に通知書が届きます。
またマイナポータルで確認することも可能です。
【1】マイナポータルにアクセス
【2】マイナンバーカードでログイン
【3】「あなたの情報」から「電子証明書の有効期限」を確認
ただし、電子証明書の有効期限がすでに切れている場合は、マイナポータルにログインできないため、この方法は使用できません。
医療機関のカードリーダーで「有効期限」を確認する手もある
医療機関や薬局に設置されている顔認証付きカードリーダーでも、有効期限の確認が可能です。有効期限が3カ月以内に迫っている場合、カードリーダーの画面にアラートが表示されることがあります。
定期的に医療機関を受診している方は、受診時にカードリーダーの表示を確認することで、有効期限の接近に気づくことができます。
ただし医療機関の窓口は混雑していることも多いです。できるだけ有効期限通知書やマイナポータルで把握し、「医療機関に行ってみたら期限が切れていた」という事態は避けるようにしましょう。
マイナ保険証の電子証明書期限が切れた際の医療機関の受診について

電子証明書の有効期限が切れてから3カ月間の猶予期間中は、基本的にマイナ保険証として利用することができます。医療機関の顔認証付きカードリーダーでマイナンバーカードを読み取り、保険資格の確認を行うことで、通常の自己負担割合での診療など基本的な医療サービスが受けられます。
なお、医療機関では、電子証明書の有効期限切れを検知した場合、顔認証付きカードリーダーの画面に更新を促すアラートが表示される場合があります。
また、医療機関によっては「マイナ保険証の有効期限が切れている患者」に対しては詳細な問診の実施や過去の診療情報の口頭確認などを重視する方針を採っている場合もあります。そのため、やはりマイナ保険証の電子証明書の有効期限はきちんと自分自身で管理することもおすすめします。
猶予期限が過ぎるとどうなる?
猶予期間(3カ月)が過ぎると以下のようになります。
・マイナ保険証としての利用登録が解除される
・医療機関でマイナンバーカードが保険証として認識されなくなる
・マイナポータルへのログインができなくなる
・コンビニでの証明書取得ができなくなる
この場合、従来の健康保険証(有効期限が切れていないもの)や資格確認書での医療機関受診が必要になります。なお、資格確認書はマイナ保険証の有効期限が切れているにもかかわらず、再発行手続きもされない場合に交付されます。
電子証明書の更新手続きに関する基本情報
更新手続きの手順をご紹介します。
更新可能時期

電子証明書の更新手続きは、有効期限の3カ月前から可能です。たとえば有効期限が6月15日の場合、3月15日から更新手続きができます。なお、早めの手続きが推奨される理由は以下の通りです。
・窓口の混雑を避けられる
・有効期限切れのリスクを回避できる
・余裕を持って手続きができる
手続き場所の制限

電子証明書の更新手続きは、住民登録をしている市区町村の窓口でのみ可能です。マイナンバーカード本体の更新申請はオンラインで可能ですが、電子証明書の更新は必ず窓口での手続きが必要です。住民登録をしている市区町村以外では手続きできません。出張先や旅行先での手続きはできないため、計画的な手続きが必要です。
受付から手続き開始まで

まず市区町村の窓口で「電子証明書の更新手続き」を希望する旨を伝えます。続けて持参した書類やマイナンバーカードを職員に確認してもらいます。不備がある場合は、この段階で指摘されます。その後、電子証明書更新申請書に必要事項を記入します。
この段階までは多くの場合、手続きはスムーズでしょう。暗証番号の失念など「詰まる箇所」が増えるのは次のステップからです。
電子証明書の書き込み作業

専用の機器にマイナンバーカードを挿入し、現在の電子証明書の状態を確認します。その際には、電子証明書に関連する暗証番号の入力が必要です。通常は以下の暗証番号が必要になります。
・署名用電子証明書の暗証番号(6文字以上16文字以下の英数字)
・利用者証明用電子証明書の暗証番号(4桁の数字)
なお、暗証番号を忘れた場合も、窓口で本人確認を行ったうえで、新しい暗証番号を設定できます。ただし、以下のような手続きが必要です。
・本人確認書類の提示
・暗証番号再設定申請書の記入
・新しい暗証番号の設定
つまり、暗証番号を忘れてしまった場合、手続きに長い時間がかかる可能性があります。
ちなみにそもそもなぜ電子証明書だけ有効期限が短いの?
電子証明書は、セキュリティ対策のため、公開鍵暗号方式を利用しています。そしてこの公開鍵暗号方式は同一のものを10年間使い続けると暗号が解析される可能性があるため、5年ごとに更新される仕組みがマイナンバーでは採用されています。
一方で今後、多発すると考えられる「マイナ保険証の電子証明書の有効期限切れ」の問題や窓口での混乱を踏まえると「さらなるセキュリティ対策の強化をしたうえでの電子証明書の10年間への延長」は極めて需要が高いのも事実です。マイナ保険証の仕組みのさらなる発展や技術的な改善に期待が集まります。
※サムネイル画像は(Image:「photoAC」より)