
生活する上で欠かせない家電製品。かつては「購入して所有する」のが当たり前でした。
一方、高価な家電を「所有しない」という新しい選択肢として注目を集めているのが「家電サブスクリプション(以下、家電サブスク)」です。月額定額料金を支払うことで、必要な期間だけ家電を利用できるこのサービスは、特に若い世代やライフスタイルの変化が多い層を中心に広がりを見せています。
しかし、「家電サブスクって本当に便利でお得なの?」「購入するのと比べて、実際のところどう違うの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。初期費用を抑えられる一方で、長期間利用すると割高になるのではないか、故障した時の対応はどうなるかなど、気になる点は多くあります。
今回は本当に「家電のサブスクはお得だと言えるのか」を、試算例を交えながら解説します。
家電サブスクリプションと家電レンタルは何が違う?
家電サブスクとは、商品やサービスを直接購入するのではなく、一定期間、月額または年額などの定額料金を支払うことで、その商品やサービスを利用できるビジネスモデルです。
もっとも、「家電を購入以外の形で手元に置いて利用する」こと自体は珍しいものではありません。サブスクリプションが脚光を浴びる以前から、リースやレンタルは一般的なものです。
ではサブスクリプションとレンタルは何が違うのでしょうか?

家電サブスクはレンタルよりも長期的かつ柔軟な利用を想定しており、最新機種を試したい、ライフスタイルの変化に合わせて家電を見直したいといったニーズに応えやすい特徴があります。
一方で「中長期で利用する家電であれば購入で十分」「短期で利用するならばレンタルのほうが良い場合が多い」など、サブスクリプションにはまだ若干の中途半端さがあるとも言えます。
たとえば、矢野経済研究所はサブスクリプションサービスにおける家電セグメントは、コロナ禍を機に急拡大したとしています。コロナ禍でEC利用が進む中、実物を見てから購入したいという消費者のニーズに応える形で、一定期間試用できる家電サブスクが注目を集めたためです。
しかしこの短期需要は「そもそもレンタルで良い」という側面もある上、2025年現在はすでにアフターコロナ。家電のサブスクに本当に意味はあるのか、改めて問い直すタイミングが来ていると言えるかもしれません。
【サブスクは大損?】冷蔵庫と洗濯機の2年間利用コストを比較
家電のサブスクリプションサービスで人気の製品には、洗濯機や冷蔵庫など、新品を購入すると出費がかさみやすいものが挙げられます。
そこで2年間の利用コストで、冷蔵庫と洗濯機の購入・サブスクのコスパを比較してみましょう。
なお、この比較は特定のサブスクサービスの月額に言及するものではなく、市場の平均的な料金や価格を基に筆者が独自に試算したものです。実際の費用は、選ぶサービス、購入する店舗、オプションの有無などによって変動する点にご注意ください。
冷蔵庫(一人暮らし用、約150Lクラス)の場合
冷蔵庫の場合、2年間という短期での総費用ではサブスクリプションを利用した方が安価になる場合があります。

その理由の1つには「修理対応」と「処分費用」が挙げられます。まず、通常使用の範囲内での故障であれば、一般的な家電サブスクでは無料で修理または交換対応となることが多いです(※注:購入でも、購入した家電量販店のサポート内容によっては修理・交換対応が可能なケースがあります)。
また、2年後に処分する場合、サブスクであれば返却対応となりますが、購入であれば処分費用が別途かかることが多いです。
よって冷蔵庫のような大型の家電を短期間だけ使うなら、サブスクリプションには一定の優位性があります。ただしこの価格優位性は、購入した家電を長く使えば使うほど逆転します。
冷蔵庫は一般的に10年~13年ほどは安定的に使用できる家電です。購入した冷蔵庫を20年以上使っている方も、この記事をお読みの方の中にいるのでは。長期的に家電を利用するならば、サブスクリプションを利用する意味はないと言えます。
洗濯機(5kgクラス、縦型)の場合
洗濯機(5kgクラス、縦型)の場合、今回行った筆者のシミュレーションではサブスクと購入にほとんどコスパの差がないという結果になりました。

しかし、この結果はあくまで2年間という短期の利用を想定したものであり、長期的に家電を利用するならばやはりサブスクリプションを利用する意味は薄いです。サブスクが2年目の時点で一時的にコスパの優位性を発揮しても、3年目~4年目にはその優位性は大きく損なわれます。
【家電サブスク vs 家電購入】メリット・デメリット

サブスクの最大のメリットは、初期費用を抑えられることと、不要になった際の処分や引っ越し時の負担が少ないことです。さらに、故障時の修理やメンテナンス費用が無料のサービスも多く、急なトラブルにも安心して対応できます。
一方、デメリットは長期間利用すると総コストが購入より高くなる点。2年以上同じ家電を使う場合、サブスクの総額が購入費を上回る可能性があります。また、途中解約時に違約金や手数料が発生する場合があり、利用期間によっては割高に感じることもあります。
購入の場合、長く使うほどコストパフォーマンスが高まります。不要になった際にフリマアプリなどで売却できる点もメリットです。ただし、初期費用が高く、処分や引っ越し時の手間・費用がかかる点はデメリットです。
結局「家電のサブスク」を使うのは損する?
結論として、「家電のサブスク」は短期間の利用や初期費用を抑えたい場合、または引っ越しやライフスタイルの変化が多い人には非常に便利で合理的なサービスです。一方で、同じ家電を2年以上使い続ける予定がある場合は、購入したほうが長期的にはコストパフォーマンスが高くなります。
特に一人暮らしや学生、新社会人、単身赴任など、生活環境が変わりやすい方にはサブスクの柔軟性が大きな魅力です。しかし、長期間同じ家電を使い続ける家庭や、少しでもコストを抑えたい方は購入を選ぶのが賢明でしょう。自分のライフスタイルや利用期間をしっかり見極めて、最適な選択をしてください。
※サムネイル画像は(Image:「photoAC」より引用)