街角やオフィス、駅のホームなど、日常に溶け込んでいる自動販売機。しかし支払い方法は「現金」または「交通系IC」という制約に長く縛られてきました。PayPayやクレジットカード、Apple Payに対応していない自販機は2025年現在でも珍しい存在ではありません。
「喉が渇いているのに、小銭がない」「交通系ICの残高は自販機で使いたくない」など小さなストレスを経験したことがある方も多いのではないでしょうか?
そこで脚光を浴びているのが、自販機キャッシュレス。この市場の先駆者は、日本コカ・コーラが提供する「Coke ON(コークオン)」です。スタンプラリーのような楽しさと、歩くだけで特典がもらえるユニークな機能で、すでに圧倒的なシェアを確立。自販機アプリの代名詞とも言える存在です。しかし2025年、サントリーが満を持して「ジハンピ」の全国展開を本格化させました。

ではジハンピはCoke ONとは何が違うのでしょうか。また、そもそもジハンピやCoke ONを利用するなら「交通系IC」があれば十分なのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

「ジハンピ」 vs 「Coke ON」まずは徹底比較!
台数が多く、使いやすいのはCoke ONでしょう。もっとも大きな特徴は15スタンプで1本無料になるという点です。

しかし、Coke ONがCoke ON Payにさまざまな支払い方法を紐付けて決済できる一方でジハンピはクレジットカードやPayPayなどで直接決済できるため、ポイントを連携して二重取りすることが可能です。
ジハンピとCoke ONの設計思想の違い
ジハンピとCoke ONの違いがもっとも顕著に表れているのは「独自機能」でしょう。

Coke ONの最大の特徴のひとつが「Coke ON ウォーク」機能です。アプリ内で一週間の歩数目標を設定し、それを達成するだけでスタンプがもらえるという、画期的なサービスです。通勤や散歩といった日常の移動がドリンクチケットにつながるため、お得かつ健康にもいいといえます。
一方、ジハンピには2025年7月現在、ウォーキング機能やゲームのようなエンタメ要素はありません。とはいえ、これは欠点ではなく、「速く、簡単、確実にお得に買える」という、決済行為そのものの快適さを重視していることの表れだと言えるかもしれません。
ジハンピとCoke ONのポイントプログラムの違い
ジハンピの最大の特徴は、ポイントシステムを自社で囲い込まず、外部の巨大な経済圏と連携する「オープンさ」にあります。
楽天ポイント、dポイント、Pontaポイントなど、すでに数千万〜1億人規模の会員を持つ共通ポイントに対応することで、ユーザーは「ジハンピのために新たなポイントを貯める」必要がありません。

ジハンピの支払い方法のオープンさの対極に位置するのが、Coke ONだと言えるでしょう。
Coke ONは「独自スタンプ」という、アプリ内で完結する「クローズド」なエコシステムを構築しています。このスタンプはCoke ONの世界でしか価値を持ちませんが、それがゆえに強力なユーザーの囲い込み効果を生み出しています。
「あと3つでドリンクチケットがもらえるから、今日もCoke ONで買おう」という動機にもなっており、これはオープンなポイントシステムでは生まれにくい、エンゲージメントとなっています。
ジハンピの「初回3本無料」について
なお、ジハンピの知名度を爆発的に高めたのが、「初回3本無料」という破格のキャンペーンです。1本300円の商品まで対象となるため、最大900円相当の価値があります。また、dポイント連携で最大300ポイント還元など、外部のポイントサービスと連動した期間限定キャンペーンも積極的に展開しており、ポイ活ユーザーの注目を集めています。
【購入体験の違い】NFCのジハンピ vs BluetoothのCoke ON
自販機アプリを比較する際にはポイントプログラムやお得さに着目しがちですが、実はこの両者は「技術」にも違いがあります。
ジハンピの最大の強みは、NFC(近距離無線通信)技術を採用したことによる圧倒的な購入スピードです。その手順は驚くほどシンプル。①自販機で商品のボタンを押す、②スマホでアプリを起動し、決済端末に「ピッ」とタッチする。これだけです。

Bluetooth接続の待機時間が存在しないため、交通系ICカードで改札を通るような、シームレスな体験が可能です。
一方、Coke ONは、スマホと自販機をBluetoothで接続する必要があります。アプリを起動して自販機に近づくと、自販機のLEDが黄色く点滅し始め、接続が完了すると青色に点灯します。このプロセスには通常、数秒から十数秒かかります。ほとんどの場合は問題になりませんが、電波状況が悪い場所や、急いでいる時には、この「わずかな待ち時間」がストレスに感じられる可能性があるでしょう。
購入体験「だけ」で比較するならば、ジハンピにはNFCベースで開発された後発としての強みがあると言えるかもしれません。
自販機アプリや自販機キャッシュレスは「本当に必要か」
一部報道によると、「ジハンピ」開発の原点は、キャッシュレス決済ができずに購入を諦める顧客を目の当たりにした現場担当者の「これはもう自販機ではない」という危機感だったという。
一方でPayPayやApple Payが使えない自販機でも、交通系ICカードならば使用できる自販機は珍しくありません。自販機アプリや自販機キャッシュレスは、本当に必要だと言えるのでしょうか。
結論として、単に「キャッシュレスで買えれば良い」ならモバイルSuicaで十分かもしれません。しかし、「よりお得に、より楽しく買いたい」と考えるなら自販機キャッシュレスには一定の存在価値があります。
その典型例が、Coke ONです。「Coke ON IC」機能を使えば、モバイルSuicaで通常通り支払うだけで、Coke ONのスタンプが自動的に貯まります。アプリを起動する必要すらありません。これは、モバイルSuicaの利便性を一切損なうことなく、「15本で1本無料」という高い還元率の恩恵を受けられることを意味します。
また「お得さ」という観点では、自販機キャッシュレスではPayPayなどが利用できる点も魅力でしょう。自販機での何気ない缶コーヒー購入が、PayPayステップの条件達成に役立ってくれるのは地味かもしれませんが嬉しい点です。
もし普段、自販機アプリを使用していない方はまずはジハンピとCoke ONを両方インストールしてみてはいかがでしょうか。実際に両方のアプリを使い、その操作感やお得感を肌で感じることで、あなたの自販機ライフを最高に豊かにしてくれる“お気に入りの一本”が、きっと見つかるはずです。
※サムネイル画像(「サントリービバレッジソリューション」プレスリリースより引用)