スマホとイヤホンの接続や、カーナビとスマホの接続など、日常生活で欠かせない「Bluetooth」。ワイヤレス通信と言えば、Bluetoothと考えている人も多いでしょう。
一方、最近注目を集めているのは、「XPAN」という新技術です。XPANはQualcommが開発した新しいワイヤレス通信規格で、Bluetoothに加えてWi-Fiも利用することで、より広範囲で高品質な音声伝送を実現するものです。
本記事では、Bluetooth技術のメリット・デメリットを振り返りつつ、新たなワイヤレス通信規格として台頭しつつあるXPANの技術的特徴やその可能性について詳しく紹介します。
Bluetooth技術のメリット・デメリット
まずBluetoothは短距離無線通信の標準として、ヘッドホン、スピーカー、IoTデバイスなど幅広い用途で使用されています。技術革新も目覚ましく、年々消費電力の低減や接続安定性の向上が図られていると言えるでしょう。

一方でワイヤレスオーディオの需要などが拡大するにつれ、そのデメリットも浮き彫りになっているのも事実です。たとえば、通信可能な範囲が一般的に10メートル程度に制限され、壁や障害物による干渉を受けやすいという課題があります。またオーディオ伝送では音質が圧縮されることが多く、特に高音質を求めるユーザーにとっては不十分な場合があります。
こうした弱点を補完するような存在として登場したのが、クアルコムの新たなワイヤレス通信規格「XPAN」です。
BluetoothではなくWi-Fiを使うワイヤレス通信規格「XPAN」とは?技術的特徴
クアルコムのワイヤレス通信規格「XPAN」は、Bluetoothへの依存度が高かった主にワイヤレスオーディオなどの世界に「低電力Wi-Fi」を持ち込み、なおかつそれをBluetoothと組み合わせたことで注目を集めている技術です。

XPANとBluetoothの関係:補完か置き換えか
XPANは端的に言うと「低電力Wi-Fiでデータ伝送を行い、Bluetoothは補完的な存在として組み合わせる通信技術」と言えます。
XPANはBluetoothを完全に置き換えるものではなく、従来のBluetoothの欠点を補完する技術と位置づけられるかもしれません。

たとえばXPAN対応のワイヤレスイヤホンは、自宅などWi-Fi環境での利用がまずは想定されます(※P2Pによってホームネットワーク外でもXPAN対応スマホ、XPAN対応イヤホンの通信が可能です)。
そしてBluetoothは自宅の中で利用する場合でも、遮蔽物や他の電子機器による干渉などによって音声が断続的に途切れてしまうことが珍しくありません。その点、XPANは低電力Wi-Fiを利用するため通信の安定性の向上が期待されます。(※なおXiaomi 15 UltraとXiaomi Buds 5 Proの組み合わせの場合、イヤホンとスマホ間の通信にはBluetoothも併用されます)なお、XPANはイヤホン単体でのインターネット接続の実現も期待されている技術です。
またBluetoothイヤホンは、しばしば「音質の悪さ」が指摘されています。この点、XPANは将来的には192kHzでの再生が目指されており、ワイヤレスオーディオの高音質化が期待されます。
XPAN対応製品の例

2025年4月10日時点で、XPANはすでに一部のデバイスで実装されています。具体的にはXiaomi 15 UltraおよびXiaomi Buds 5 Proが挙げられます。これらのデバイスは日本でも利用可能で、Wi-Fiを活用したオーディオ伝送の利便性や通信の安定性、音質の良さが評価されています。
とはいえ、Xiaomi 15 Ultraはハイエンドスマホに位置づけられ、XPANが「普及」するにはミドルレンジのスマホおよびイヤホンへの通信規格の広がりも重要でしょう。XPANがミドルレンジのチップセットにも対応することは「Bluetoothに替わる新通信規格」として定着するには重要であり、コストと性能のバランスが市場拡大の鍵になるでしょう。
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