近年、レトロブームが到来しており、ヴィンテージアイテムへの関心が高まっています。その中でも、ブラウン管テレビは、その独特なデザインや音質、画面の質感が、特に若い世代やコレクターから人気を集めています。
たとえば海外では「レトロゲーム機を接続して遊ぶためのテレビ」の域を超えて、ブラウン管テレビが水槽やドッグハウス、ミニチュアハウス、ジオラマアートのケースなどにリメイクされる例がSNSなどで見られます。

国内でもブラウン管テレビの人気は再燃しており、オークション情報サイト「オークファン」が行った調査では、2024年までの5年間で平均落札額は2倍超に。取引数量も1.6倍に上昇しているとのこと。
一方、ブラウン管テレビは「レトロアイテム」ではあるものの、すでにフルハイビジョンテレビや4Kテレビ、プラズマテレビがある現状では、画質などの面から見て「実用的なテレビ」とは言えないでしょう。
ではなぜブラウン管テレビは人気が再燃しているのでしょうか。ブラウン管テレビが持つ4Kテレビやプラズマテレビにはない魅力を見ていきます。
ブラウン管テレビが持つ4Kテレビやプラズマテレビにはない魅力
ブラウン管テレビが人気が再燃している理由は、前述の通り「レトロブーム」が挙げられます。主な人気再燃の要因は以下の通りです。

この中でも4Kテレビやプラズマテレビにはない要素は、ゲーム用途における「画質」でしょう。
ゲーム用途及び画質の評価

ブラウン管テレビの画面は、走査線と呼ばれる横線が特徴的。ブラウン管の走査線はピクセル間の境界をぼかし、低解像度のグラフィックでもなめらかな見た目になります。
一方で現代のデジタルディスプレイはピクセルをシャープに表示するため、ゲームのグラフィックがブロック状に見え、ディザリングやグラデーションが不自然になることがあります。つまりレトロゲームならではの「柔らかな雰囲気のピクセル」を楽しむには、ブラウン管テレビとレトロゲーム機という組み合わせがベストと言えるでしょう。
また、ブラウン管テレビではシャドーマスクという仕組みが色を自然にブレンドし、ピクセルの境界がなめらかになり、再現しにくいディザリング(色のグラデーション)を美しく表現することもできます。シャドーマスクと走査線の組み合わせによって、総じてレトロゲームのピクセルが「柔らかく、綺麗なもの」になります。
総じてブラウン管テレビでは、現代の液晶テレビでは得られない「本来のゲーム体験」が提供されると言えるでしょう。
アート目的での購入も
冒頭でもご紹介した通り、海外ではアート作品やインテリアとしての利用も増えており、これが中古市場での価値を高めています。特に現代アートの世界では古くからブラウン管テレビはメディアアートを構成する機器として使用されており、たとえば国内ではナム・ジュン・パイクさんの《Fuku/Luck,Fuku=Luck,Matrix(1996)》が、キャナルシティ博多に展示されていることでも有名です。
ブラウン管テレビの持つ低解像度ながら美しく、発色がなめらかな感触は今後も「アート」の文脈で注目され、芸術家が一種の「画材」として求めるケースが増えるでしょう。
※サムネイル画像(Image:Belen Sanma / Shutterstock.com)