スマホのロック解除に指紋や顔を使っている―そんな日常が当たり前になりつつあります。一方で「自分は暗証番号のままだけど、大丈夫なのだろうか」「顔のデータを預けるのは怖い」と感じている方も少なくないはずです。
生体認証(指紋認証や顔認証など、体の特徴を使って本人確認する技術)は、いまどれくらい使われていて、どんな不安が寄せられているのか。株式会社NEXERと株式会社ナック電子が共同で実施した最新の調査結果をもとに、利用状況・印象・施設への導入期待・具体的な懸念点を整理します。

スマホの指紋認証・顔認証、実はまだ半数以上が未経験?
毎日のスマホ操作で指紋や顔を使ってロック解除している方は多いはずです。では実際に、どれくらいの人が生体認証を使っているのでしょうか。
株式会社NEXERと株式会社ナック電子が共同で実施した調査(インターネットアンケート、2026年5月22日〜5月28日、全国の男女500名対象)によると、生体認証を定期的に利用している人は合計45.0%でした。内訳は「日常的に利用している」が30.2%、「ときどき利用している」が14.8%です。
つまり、半数以上はまだ生体認証を日常的には使っていないことになります。「まったく利用したことがない」という回答も40.6%に上りました。
では、使っている人はどんな場面で利用しているのでしょうか。利用場面の内訳は次のとおりです。
「スマートフォンのロック解除」─74.7%で最多 「パソコンのログイン」─8.9% 「オフィス・職場の入退室」─4.0% 「キャッシュレス決済・買い物」─3.6%
圧倒的にスマホのロック解除が多く、生体認証との最初の接点はやはりスマホであることがわかります。逆に言えば、スマホで使っていなければ、生体認証に触れる機会自体がほとんどないとも言えそうです。
「便利」が36%で最多――一方で約4割が不安や抵抗を感じている
では世の中全体では、生体認証にどんな印象を持っているのでしょうか。調査によると、鍵・カード・暗証番号と比べた生体認証の印象は次のように分かれました。
「便利だと感じる」36.0%─最も多い回答 「未来的・先進的だと感じる」23.0% 肯定的な印象の合計は59.0%
「抵抗がある」24.6% 「やや不安を感じる」16.4% 不安・抵抗を感じる人の合計は41.0%
約6割が前向きに受け止めている一方で、約4割は何らかの懸念を抱えています。「自分はどちら寄りだろう」と考えながら、それぞれの理由を見てみてください。
便利だと感じる人の声には、「パスワードを何桁も打つより楽」「他人に悪用される可能性が低い」といった、日常の実感に根ざした理由が挙がっています。スマホで毎日使っているからこそ、手軽さを実感しやすいようです。
不安や抵抗を感じる人の声には、次のような具体的な心配が含まれていました。
誤認証への懸念─本当に正しく認識されるのか不安 個人情報の扱いへの不信感─自分の顔や指紋のデータがどう管理されるのか分からない 機種変更時や身体の変化による認証不能リスク─ケガや加齢で認証できなくなったらどうするのか
便利さへの期待と、万が一のときの不安。この両方が同時に存在しているのが、いまの生体認証をめぐるリアルな温度感です。どちらの感覚にも根拠がありますので、自分がどの点を重視するかを整理しておくことが判断の第一歩になります。
マンションや職場でも顔認証? 施設への導入に55%が「安心感が高まる」と回答
スマートフォンで指紋認証や顔認証を使い慣れてくると、「マンションの入口や職場でも使えたら便利なのに」と感じることがあるかもしれません。では実際に、建物や施設への生体認証の導入を、人々はどう受け止めているのでしょうか。
調査では、建物・施設の入退場で生体認証が使われていた場合、鍵やカードと比べて安心感や利便性が高まると思うかを質問しています。結果は次のとおりです。
「とても高まると思う」15.2%+「やや高まると思う」39.8%=合計55.0%が肯定的 「あまり変わらないと思う」26.6% 「むしろ低下すると思う」18.4%
半数を超える人が前向きに評価している一方、残る約45%は慎重または否定的です。個人の端末で使うのと違い、建物や施設のような公共的な場所で使うとなると、より慎重な回答が増える傾向が見られます。自分のスマホなら「便利」で済んでも、不特定多数が行き交う場所では求める信頼性のレベルが違うと感じる人が少なくないようです。
「鍵を持ち歩かなくていい」という期待と、「自分の生体情報を建物側に預けて大丈夫か」という不安。この両面を理解しておくことが、今後マンションや職場で導入の話が出たときの判断材料になります。
導入してほしい施設1位は「マンション・集合住宅」――防犯意識の高まりが背景に
では、生体認証を実際にどんな場所で使いたいと考えている人が多いのでしょうか。調査で「今後、生体認証による入退場管理が広がってほしい施設」を複数選択で聞いた結果、次のようなランキングになりました。
1位:マンション・集合住宅(47.2%) 2位:オフィス・職場(33.8%) 3位:病院・医療施設(30.0%) 4位:学校・教育施設(22.4%) 5位:公共施設(役所、図書館など)(22.2%) 6位:商業施設・宿泊施設(21.0%)
最も多かったマンション・集合住宅には、日常の不便と防犯面の両方から声が寄せられています。回答者からは「鍵を忘れて家に入れない」「マンション入口のドアが開くと誰でも入れて防犯面で心配」といった切実な理由が挙がりました。
2位のオフィス・職場では「入門証の出し入れの手間と紛失のリスク」を気にする声があり、3位の病院・医療施設には「お年寄りは暗証番号を覚えるのが苦手」という指摘がありました。学校については「不審者が入るニュースが多い」という不安が背景にあります。
自宅の玄関、毎日の通勤先、通院する病院―いずれも生活圏のなかで繰り返し出入りする場所です。鍵やカードの紛失リスクをなくしたい気持ちと、部外者の侵入を防ぎたいという防犯意識が、導入への期待を押し上げていることがわかります。
生体認証の不安、どこに気をつければいい? 調査で見えた4つの懸念
「便利そうだけど、本当に大丈夫?」―生体認証に対しては、利便性への期待と現実的な不安が入り交じっている様子が調査から読み取れます。具体的にどんな不安が挙がっているのか、整理しておきましょう。
調査の回答者から寄せられた不安の声には、大きく4つの傾向があります。
誤認証への懸念―「反応しないことがありそう」という声があり、認証がうまく通らない場面を心配する人が少なくありません。 個人情報の扱いへの不信感―「自分の情報は知られたくない」という回答に代表されるように、顔や指紋といった変更できない情報を預けること自体に抵抗を感じる層がいます。 機種変更時の再登録―スマートフォンを買い替えたとき、登録し直す手間やデータの引き継ぎに不安を覚えるという声も挙がっています。 身体の変化による認証不能リスク―「顔の状態によって認証できなかったら嫌」という回答があるように、加齢やケガ、体調の変化で認証が通らなくなる可能性を気にする人もいます。
こうした不安は決して少数派ではありません。調査全体を通じて、技術への期待と現実的な不安が共存している状況がはっきり表れています。生体認証を使うかどうか迷っている場合は、まず自分がどの不安に当てはまるかを把握しておくことが判断の出発点になります。
結局、どうすればいい? 生体認証との付き合い方を整理する
ここまで見てきたように、生体認証に対する評価は「便利」36.0%と「不安・抵抗」41.0%で二分されています。すでに45.0%が定期的に利用しており、スマートフォンが最も身近な入口になっている一方、施設への導入には55.0%が肯定的で、なかでもマンション・集合住宅への期待が最も多い結果でした。
調査のまとめでは、今後、個人情報保護の仕組みが社会的に整備されていくにつれて、マンションやオフィス、医療現場などでの導入がさらに広がっていくと予想されるとしています。
つまり「使わない」という選択肢は徐々に狭まる可能性があります。不安を感じている方こそ、まずは自分がすでに使っている場面―スマートフォンのロック解除など―を意識するところから始めてみてください。そのうえで、自分が気になるポイント(誤認証、個人情報の管理、身体の変化への対応など)を整理しておけば、今後マンションや職場で導入の話が出たときにも、落ち着いて判断できるはずです。



